[126] 日本人はなぜ、社会主義政策が大好きなのか? IMFは「軽減税率否定」なのに、民自公は「低所得者に現金」で合意の唖然 |
2012年 6月 13日(水曜日) 17:28 |
6月12日、IMFの日本経済に対する年次見解が出た。 この日、都内のホテルで記者会見したリプトン筆頭副専務理事は、「消費税率を少なくとも15%に引き上げることが望ましい」と述べた。さらに、消費税増税に伴う低所得者の負担軽減策として、食料品などを対象に軽減税率を採用すれば「税収を効率的に増やすことは難しい」と指摘し、否定的な考えを示した。 ところが、同じ日に、民主、自民、公明3党は消費増税関連法案をめぐるの修正協議で、消費税率を8%に引き上げる際、低所得者に臨時に現金を出す「簡素な給付措置」で合意してしまった。 つまり、IMFは現金を配ることを否定しているにもかかわらず、民主、自民、公明3党は現金を配ることで合意。まったく正反対のことが、同じ日にニュースとして伝えられたわけだ。 IMFリプトン筆頭副専務理事
消費税の逆進性の解消のためには仕方ないのか?
消費税増税に関しては、、実質的な税の負担が、高額所得者よりも低額所得者のほうが重くなるという逆進性がある。そのため、低額所得者の税負担を緩和するために、日常生活物資(主に食品)などを非課税にしたり、税率を低くしたりする措置が取られることになる。事実、欧州諸国は、軒並みそうした措置を導入している。 だから、今回の増税から、そうした措置を取るのは、「やるべきこと」とされている。実際、6月13日の衆議院予算委員会でも、この問題は討議され、安住財務相は、やる方向で答弁をしていた。 しかし、本当にやるべきなのだろうか? やれば、IMFが言うように増税効果はほぼなくなるだろう。なにしろ、たった3%の増税である。この3%の影響を軽減するために、現金バラマキをすれば、見込んだ税収など消えてなくなる可能性は強い。(注:IMFの提言といっても、財務省と協議してからの声明発表。財務省の息がかかっていると見ていい。つまり、現金バラマキは財務省としてもしたくはないはずだ)
生活保護の不正受給が後を絶たないのは現金支給だから
つい先日、生活保護の支給が大問題になった。年収が5000万円あるというお笑芸人の河本準一の母親の受給が問題化し、同じくお笑い芸人の梶原雄太が自分名義のマンションの部屋に母親を住まわせたうえで生活保護を受け取っていたことが発覚し、「不正受給」だと大騒ぎになった。大騒ぎになったのは、実際に、生活保護を不正受給している人間が多いからだろう。不正受給のスキームまであり、その具体的な方法まで、ネットでは公開されている。 このように不正受給が後を絶たないのは、じつは、現金支給だからである。アメリカのように、フードスタンプにし、食料しか買えなくすれば、ここまで不正受給は起こらない。生活困窮世帯の保護が目的なら、現金ではなく、食糧、住居、衣料、医療などに絞ってやるべきで、現金では使途が勝手に決められる。だから、不正受給してパチンコ、飲み屋に行く人間も多い。 なぜ、日本の政治家は現金をバラまこうとするのか? 子供手当にしてもそうだし、今回の軽減のための給付措置(現金給付)もそうである。現金とは言っても、もともとは税金だ。国民のお金であり、要するに政治家が間に入って、国民のお金の分配方法をいじくっているだけの話だ。しかも、日本の財政は破綻寸前でそんなお金などどこにもないはずなのに、なぜ、こうなってしまうのだろうか?
社会主義大好き、公共事業大好き、競争大嫌い
日本の政治家、官僚は、社会主義政策が大好きだ。これは、日本社会と同じで、ともかく「やってはダメ」ルールをつくりたがる。次に、何かしらの「いいこと」を決めようとする。前者は規制強化で、後者は社会福祉である。どちらも、人間の自由な活動を奪う。 日本はこれをやり過ぎて、ここまで経済が停滞してきた。社会主義の最大の特長である公共投資が繰り返され、無駄なハコモノが山のように建った。また、公共料金の独占性は、東電に見るように今日まで維持されてきた。さらに、ゆうちょも結局は民営化が逆戻りしてしまった。そんななか、、雇用政策では世界一厳しい規制を続けてきた。日本の官僚は本当にケインズが大好き、社会主義が大好きというしかない。 さらに、金融市場に目を転じると、金融ビッグバンとは裏腹に国内金融は開放されず、逆に規制が強まった。これでは、経済成長などできるわけがない。失われた20年が30年になってしまったのも、みなこの社会主義政策のせいだ。 ともかく、日本の政治家と官僚たちは、競争するのが大嫌い。まして、海外となんて競争したくないのだ。
日本経済がダメなのが「デフレのせい」 というのは逃げ口上
こうして日本経済は停滞してきたわけだが、最近は、すべて「デフレだから」で話は終わってしまう。誰も、日本という社会主義システムそのものがおかしいとは言わなくなった。日本経済が不調なのは「デフレのせい」と言っていれば、責任が逃れられると思っている。また、「円高のせい」「日銀のせい」もあるし、いまでは「欧州のせい」も加わった。 そんななか、増税も最悪の選択だが、バラマキはもっとひどい。これでは、人はますます働かなくなる。経済は絶対に成長しない。 年金や生活保護など既得権を守ろうとする人々ばかりが増え、日本は社会全体としてますます貧しくなっていくだろう。旧ソ連や東欧諸国の末期と、いまの日本は、本当によく似ている。 現在の日本は、ひと言で言えば斜陽国家である。いつまで持つのかと、投資家から見られている点では、欧州諸国と同じだ。最近は、中国やインドまで経済が崩れてきたので、日本の衰退が目立たなくなっただけだ。
日銀は本当に悪いのか? 新自由主義が日本をダメにしたのか?
しかし、国内ではいまだに、停滞の原因をデフレのせいにし、それからの脱却ばかりが議論されている。そのためには、大胆な金融緩和(つまりお金を刷ること)が必要とされ、なかなかそれをやろうとしない日銀が批判されるようになった。、また、いまだに新自由主義のせいで日本がダメになったいう人々がいる。本当に不思議だ。 日銀の白川方明総裁は、この4月、ワシントンでの講演で、「中央銀行の膨大な通貨供給の帰結は、歴史の教えにしたがえば制御不能なインフレになる」と述べた。このことが、批判されている。 しかし、そのとおりではないだろうか? 政治家や官僚が社会主義者(本人にはそう思っていない)ばかりでは、この国は改革されない。 最近の私は「日本人はなぜ社会主義が大好きなのか?」ということを、真剣に考えている。
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