[144]要注意! 資産フライト激増中の罠か?ハンドキャリーの現金が狙われている! |
2012年 12月 14日(金曜日) 22:49 |
シンガポールの金融関係者から知人を介して、ハンドキャリーで現金を機内に持ち込んだところ、知らないうちになくなっていたというメールが届いた。最近、こうしたケースが増えているというので、注意してほしいという。 このメールが挙げている例は、こうだ。 盗難に遭ったのは日本人ビジネスマン。シンガポールから香港へのシンガポール航空に乗ったが、乗る前、ホテル室内で機内持ち込み用のキャリーケースの奥に現金をしまった。そうして、空港で機内に持ち込み、頭上のコンパートメントにキャリーケースを入れた。香港に着いて、ホテルに入り、キャリーケースを開けたところ、現金だけがそっくりなくなっていた。思い当たるのは、お腹をこわしていたため、機内で何度かトイレに行ったことだけだというのだ。 このビジネスマンは、もちろんキャリーケースに鍵をかけていた。この鍵は、よくある3桁の数字が合うとオープンするというもの。ビジネスマによると、鍵のかけ忘れはなく、鍵も壊れてはおらず、外部に不審な点はなかったという。
トイレから戻ると、周囲の座席の中国人がにやにや
これと同じようなケースは、これまで何回か報告されているという。 たとえば、ある日本人駐在員は、パソコンケースの奥に入れた書類の束のなかに、現金を入れていた。そうして、それを頭上のコンパートメントに入れておいたが、やはりなくなっていたという。 考えられるのは、トイレに立ったときを見計らって、何者かがケースを開け、なかを物色して現金を抜き取るというケースだ。パソコンケース内の現金がなくなった件では、その日本人駐在員は、たった1回だけトイレに立ったという。 そのとき、戻って来ると、不審な中国人男性たちが数名ばらばらに座っていて、そのうちの一人がこちらを見てにやにやしていたとか。「おそらく彼らはグループで、バカな日本人がまたいたと、笑っていたのではないかと思います」と言う。
現金ハンドキャリー日本人は、プロとってはただのカモ
金融関係者が推測するに、どうやら日本人ビジネスマンを狙った窃盗のシンジケート団があるのは間違いないらしい。彼らは、日本人がまとまった現金をハンドキャリーで機内に持ち込むのを知っていて、それを狙っているという。こうした窃盗団はプロだから、いくら鍵をかけても一瞬にして解錠できてしまうので、機内でも現金は身につけておかなければ危ないという。 旅行者が使うお小遣いとしての現金なら、被害は少ない。しかし、私が拙著『資産フライト』(文春新書)で書いたように、数百万円単位で現金をハンドキャリーする人間は多い。とくに、オフショアの香港やシンガポールに向かう飛行機には、そうした日本人が乗っているケースが多い。 おそらく、窃盗団にはそうした日本人が勘でわかるのだろう。彼らにとって、そうした日本人は、ただのカモだ。
チェックインカウンターですでにターゲットになっている
この金融関係者からのメールは、こう結ばれていた。 「資本フライトが一般化し、現金をハンドキャリーするケースが増えていますが、できるだけ無用のトラブルを避けるため電子送金をされることをお勧めします。 多額の現金をどうしても持ち込む場合は、現金の申告後は家族連れや友人、同僚など同行を頼み、けっして一人にならず、荷物を必ず見張るようにしてください。飛行機のチェックインカウンターで、すでにターゲットとして見られ、尾行などがはじまっている可能性があります。どうか、くれぐれも注意を怠らぬよういにしてください。 現金にかかわらず、携行品は細心注意をお願いできればと存じます」
100万円を超える現金の持ち出しは申告の義務がある
ここであらためて書いておきたいが、日本から100万円超の現金を持ち出す場合は、申請の義務がある。もし、申請しなければ、それは違法行為になる。 たとえば、成田空港の税関には、次のような内容が書かれた文書が壁に貼ってある。 1、外国製品の持出し 使用中の外国製品を海外へ持っていく場合は、「外国製品の持出し届」に該当する物品の品名、数量、特徴などを記入し、現品と一緒に税関カウンターで確認を受ける。この確認がないと、帰国時に外国で購入されたものと区別ができず、課税される場合がある。 2、支払い手段の持出し 携帯する現金、小切手、約束手形、有価証券の合計額が100万円を超える場合、あるいは金の地金(純度90%以上)の重量が1kgを超える場合は、税関へ「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を提出する義務がある。 3、輸出規制品 銃砲や超高性能パソコンなどは輸出が規制されている。このような品物を持ち出す場合は、事前に経済産業省での手続きが必要。 上記の1~3に触れると、場合によっては刑罰が待っている。日本の外為法では、100万円を超える現金類の無届け持込み・持出しが発覚した場合、「 6月以下の懲役または 20万円以下の罰金」という罰則が定められている。 それでも、申告制でその前の出国審査の手荷物検査がスル―だから、多額の現金を持ち出すケースが多い。それは、100万円超を銀行送金すると銀行はその送金を税務署に報告する義務があり、この点を多くの人間が嫌うからだ。
日本人の無知やお人よしにつけ込んだトラブルが続出
私が『資産フライト』を出してから1年あまり、たしかに資産フライトは以前にも増して多くなっているようだ。宝島新書からは『資産フライトの罠』という本も出て、香港などでのトラブルの例が詳細に書かれている。 税務署からの突然の電話、予期せぬ銀行口座凍結、ファンド解約で高額手数料を請求されたケースなど、トラブルは後を絶たない。香港やシンガポールには、日本人を狙った悪徳業者も多い。 そうしたこともあって、これまで日本人に人気だったフレンズプロビデントは、今年の7月から金融商品を日本人に売ることを止めてしまった。また、香港のHSBC銀行は、日本からの郵送での口座開設を停止し、さらに窓口でも英語が話せない日本人の口座開設を場合によっては断るようになった。 香港やシンガポールで派生するトラブルの多くは、日本人の無知やお人よしにつけ込んだものがほとんどである。だから、しっかりした知識と細心の注意をすれば、防げる。
21世紀は、自分の居場所を地球全部から自分で選べる時代
私は、資産フライトを推奨しているわけではない。ただ、現在の日本の状況を考えると仕方ないと思っている。なぜなら、日本という国は、成功者、富裕層を大事にしない国だからだ。それが、最近は増税に次ぐ増税で、一般層まで大事にしなくなっている。これでは、資産が流出して当たり前だ。 ただ、この国がいくらひどい「泥棒国家」だとしても、国民である以上、最大の義務である納税だけはきちんとするべきだ。納税から逃れるためにだけ、資産フライトをするのは間違っている。 このグローバル化が進んだ世界では、人はあらゆる知恵を駆使して生きないと、サバイバルできない。もはや国家は借金まみれで、オールドグリップと化した官僚と政治家に耳取られ、個人など守ってくれない。 だから、個人は自己責任で資産フライトをし、海外移住し、国籍変更までする。21世紀は自分の居場所を地球全部から自分で選べる時代だ。それがわかった人間から、国境を超えて生きている。資産フライトは日本だけの話ではない。 |
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