[224]ピケティを礼賛するメディアの愚。なぜ格差が開いてはいけないのか? 資産に課税? 冗談ではない。 |
2015年 2月 09日(月曜日) 12:44 |
分厚い経済書“ピケティ本”『21世紀の資本』が売れている。1冊6000円近くもする本をいったい誰が買っているのだろうか? 著者本人が来日した影響も大きいのだろうが、それにしてもこんなことは前代未聞だ。そして、さらに驚くのが、どのメディアも来日した彼の意見をありがたく聞いて回ったことだ。 「格差が開くことは問題だ」「資本に課税して格差を縮めるべきだ」−−−こうした主張に、各メディアのインタビュアーはみな同調している。いったいどうしてしまったのだろうか?
■今日の99%は明日の99%ではない
資本主義が機能すれば、格差が開くのは当然だ。1%と99%になっても、貧困がなくなり、底辺でも人間らしい生活ができる限り、なにか問題があるのだろうか? 資本主義が発達する以前の中世社会のように、階級が固定され、誰もがその階層から抜け出せないとしたら、そこにある格差は問題である。 しかし、格差がいくら開こうと、誰もが才能と努力いかんでは上まで登れる、失敗すれば上から下まで落ちてしまう。そういう社会ならば、格差など問題ではない。 格差が開いても、今日の1%は明日の1%ではない。99%に転落するかもしれない。また、今日の99%は明日の99%ではない。成功して1%になっているかもしれない。 いま言われているのは「結果の平等」であって、「機会の平等」ではない。単に1%に富が集中しすぎている。それが気にいらないから、お金持ちを引きずり降ろし、そのお金を下々に配れという。つまり、嫉妬をベースにした「格差否定・平等論」にすぎない。
■問題は日本が格差のない同質社会であること
ピケティ氏は、グローバル企業のCEO、つまりスーパーマネージャーたちが巨額の報酬を得るのはおかしいと考えているようだ。ここ何年かで、報酬経営者の報酬だけが圧倒的に上がってしまい、そのことが格差が開く一因になっていると指摘する。 「日本はもっと公正で累進的な税制、社会政策を取れる」「インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」などとインタビューで答えている。 冗談ではない。日本企業には高額報酬スーパーマネージャーはいないし、日本社会は1%対99%になってもいない。 むしろ日本の問題は、おそろしいほどの同質社会で、貧富の差がなさすぎることだ。その結果、99%のなかで、能力、努力を超えた細かな格差ができあがっている。たとえば、女性の給料は男性に比べたら著しく低いし、官民で同じ仕事した場合の給料格差もひどい。先日、産経新聞で、東京都の社員清掃部員が給料を50万円以上、民間の2倍以上をもらっているという報道があった。
■資産課税でできるのは「管理社会」
ピケティ氏のような考え方は、庶民の味方、国民の側に立つことをタテマエとするメディア、および官僚、政治家は大好きである。マスコミはそれで読者や視聴者の味方を装えるし、官僚や政治家は権力を強化できるからだ。ピケティ氏を持ち上げる評論家たちも、明らかに庶民受けを狙っている。 資産に累進課税をかけるとしたら、金持ちのダメージが大きいので庶民は喜ぶ。さらに、それを徴収して分配するのは官僚たちだから、官僚にとっては願ってもないことだ。 しかし、その結果、大きな政府が出来上がり、最終的には管理社会になる。私たちの自由はなくなる。 税金を取ってみんなに配る。これは一見すると“公正”、正しいことにように見えるが、じつは、国家にたかる層を多くし、国家を運営する人間たちの力を強めるだけである。 それでなくても、日本は消費税をはじめとして、相続税、所得税と、あらゆる税が上がる「重税国家」の道を歩んでいる。
■格差を縮めたら新しいものは生まれない
ここで、身近な例として、マンガ家の社会というものを考えてみたい。現在、マンガ家の社会は、格差がどんどん開き、2極化社会になっている。 つまり、現在のマンガ家には、ものすごく売れる作家と売れない作家がいて、売れる作家の年収は億を超える。一握りのトップは数十億にもなる。 ある出版界の人間が集計したところ、現在、マンガ家は約5300人いるが、このうちのたった70人が億以上の年収を得ていた。そして、それ以下のマンガ家は、ならすと年収は300万円だった。このなかには、1000万円以上の作家もいれば、100万円以下の作家もいる。 では、こうしたマンガ家の社会で、上位1%は稼ぎ過ぎだから、10億円稼いだら5億円は貧しいマンガ家たちに配れと言ったらどうなるだろうか? 賛成多数でこれが実現したら、おそらくマンガの質は落ちるだろう。上位マンガ家は意欲を失い、下位マンガ家も暮らしが保障されたことで創作意欲、アイデアを失うだろう。この世の中は、格差によっていろいろなものが生み出される。なければ、なにも生まれない。 また、底辺が広ければ広いほど頂上は高くなる。
■「分厚い中間層」など必要ない
というわけで、日本の格差は以前より開いているとはいえ、まだまだ小さすぎる。私は、おそらく日本でただ一人、「もっと格差が開くべきだ」と言っている。 それにこのグローバル経済では、資産課税を強化すれば、たちまち資本は流出する。金持ちはさっさと他国に移住してしまい、国内は平等にはなるが、1%がいない下流層だけの社会になってしまうだろう。 ものすごい金持ちもいなければ、貧乏な人もいない。分配の公平によって、みんながみんな同じ暮らしをする。そんな社会が面白いわけがない。「分厚い中間層をつくる」などとバカなことを言っている政党があるが、そんな社会は同質社会で未来につながる変化も起らない。 もちろん、ピケティ氏は鋭い指摘もしているが、そうではない部分を持ち上げて利用するメディアや評論家、政治家、官僚たちは、許せない。 この世の中は、真面目に働き、努力し、そして能力とアイデアで成功した人が報われる、そういう社会であるべきだ。そのために、格差は絶対に必要だ。この日本では、もっと格差は開くべきだ。 |
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