[269]悲報!トランプの「オレさま政治」の悪夢が始まった! |
2017年 1月 11日(水曜日) 02:06 |
やっぱりというか、案の定というか、トランプはとんでもない大統領になりそうだ。日本のメディアは、いまだに歓迎ムードの大甘報道を続けているが、その期待はいずれ裏切られるだろう。トランプは彼を支持したアメリカ国民にとっても、日本人にとっても「最悪」のアメリカ大統領だ。 なぜ、そう思うのか? 以下、記録のために列記しておきたい。
■「オレさま主義」のナルシスト
トランプには政治的な定見、主義というものがない。あるとしたら、それは自分がいちばん正しいという「オレさま主義」だ。彼がツイッターで呟くことは、自己中心話のオンパレード。しかも、ツイッターは担当の秘書にこう書けと指示してやっている。だから、夜中でも早朝でも平気で発信するという、迷惑極まりないことをやっている。 トランプの当選が決まった後の2016年11月11日、MSNBCの「モーニングショー」で、マイケル・ムーアが言ったことは本当だ。ムーアは「トランプは任期4年をまっとうできない」と言い、その理由をこう説明した。 「これからそういうことが起きる。(私たちは)トランプの任期4年まるまる苦しむ必要がなくなる。奴は、ドナルド・J・トランプのイデオロギー以外なんのイデオロギーも持っていないからだ。あんなナルシストは、自分の天下になればますます自分に酔うだろう。奴は必ず、たぶん無意識に法を犯す。なにが自分にとって最善かということしか考えていないからだ」 司会のミカ・ブルゼジンスキーが「トランプに災難が降りかかるよう願っているか」とたずねると、「奴こそが災難だ」とムーアは答えた。
■「なんでもディール」のバカ
トランプは「自分は賢い。だからアドバイザーはいらない。自分のアドバイザーは自分自身だ」と公言してはばからない。しかも、彼が好きな言葉は「ディール」(取引)である。トランプにとって、いい取引ができるかどうかが人生のすべてなのである。 彼の自伝的な本のタイトルは、なんと『The Art of Deal』である。彼はこれでずっと生きてきた。大統領になったのだから変わるかと思ったが、今日までまったく変わっていない。 トランプは、「政治なんてビジネスのように運営できる」と思っている。そうでなければ、孫正義やジャック・マーと笑顔で会談し、トヨタを脅かしてみたりしない。 ともかく、雇用さえつくれば「メイク・アメリカ・グレート・アゲン」ができると信じ込んでいる単純バカだ。メキシコでクルマをつくらず、アメリカでつくれば、クルマの値段は跳ね上がる。そうすると、彼を支持した白人ブルーカラーはクルマすら買えなくなる。そんなこともわからないということは、彼は勉強嫌いで、学習しないということだろう。
■支持者に対する裏切り
トランプは、選挙戦中、ロシアによってリークされたヒラリー陣営のメールで、彼女がゴールドマンサックスで高額な講演料をもらっていたことを激しく批判した。 「ヒラリーはウォール街の手先だ」「ワシントンのエスタブリシュメントたちは金に汚い」などと言いまくった。その結果、「ヒラリーはジョージ・ソロスら国際ユダヤ資本の回し者だ」という見方が一般的になり、これがヒラリーにとって大きなダメージとなった。 しかし、ヒラリーに対して言ったことは、そのままブーメランとなって、いまトランプに対して当てはまる。なぜなら、トランプ政権の閣僚には、金持ちエスタブリシュメントがずらりと並んだからだ。 結局、彼は彼を支持した白人の下流の人々の暮らしなど、どうでもいいのだ。 『アプレンティス』を見て溜飲を下げていた人々は、トランプがアメリカのCEOになれば、ワシントンのエスタブリッシュメントに「お前はクビだ」と言い渡してくれると思い込んでしまった。彼らは騙されたのだ。
■金持ちとウォール街の味方
トランプ政権には、ウォール街出身者がずらりと並んだ。 財務長官スティーブン・ムニューチンは、元ゴールドマンサックスのピカピカの金融マンで、なんと、ドット・フランク法の骨抜きを狙っている 国家経済会議(NEC)委員長のゲーリー・コーンも、元ゴールドマンサックスのCEOで、ピカピカのウォール街リッチだ。さらに、ゴールドマンサックスで言うなら、首席戦略官兼上級顧問のオルタナ右翼の筆頭スティーブン・バノンも、元ゴールドマンサックスの社員である。 トランプは、経済政策のアドバイス組織「戦略的政策フォーラム」を新設した。この議長を務めるのは、プライベートエクイティ投資会社ブラックストーン・グループのCEOスティーブ・シュワルツマン。彼もまた、ウォール街の大物だ。さらに、このフォーラムのメンバーには、JPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ダイモン、GEの元社長のジャック・ウェルチなどの大富豪がズラリと並ぶ。 トランプ政権は、まさに、お金持ちクラブであり、こうなるとトランプは完全なる「ウォール街の味方」と言うしかない。これでは、アメリカの1対99の格差はさらに広がるだろう。
■白人至上主義とイスラム嫌い
やはり、トランプは自分と同じような「白人至上主義者」で「イスラム嫌い」人間が大好きだった。そういう人物を好んで、外交・国防政策の中枢に選んだ。 その典型が、国防長官になるジェームス・マティス海兵隊大将だ。彼は元中央軍司令官で、あだ名は“狂犬マティス”“戦う修道士”。このようなあだ名がつくのは、ある意味で名将の証しだが、マティスがイスラム嫌いの戦争好きなのは間違いない。 マティスは、かつてこう発言した。「あなたがアフガンに行くと、ベールを被らないからと5年間も女性たちを殴りつけてきた連中がいる。あなたは、かような連中が男らしさのかけらもないということを知る。こういう連中を撃つことは非常に楽しい。実際、戦いというやつは楽しい。こういう連中を撃つことは楽しい。正直、私は喧嘩好きである」 国土安全保障長官になる元海兵隊大将のジョン・ケリーも、モスリムが嫌いだ。彼は息子をアフガンのタリバン掃討作戦で亡くしている。グアンタナモ基地の閉鎖に反対し、トランプの不法移民対策強化に賛成してきた。 さらに、イスラム嫌いの強硬派と言えば、国家安全保障担当の大統領補佐官になったマイケル・フリン元国防情報局長官(元陸軍中将)だろう。彼のイスラム嫌いは、筋金入りだ。フリンは、イスラム教を「宗教を隠れ蓑にした政治的イデオロギー」だと断定し、「ナチズム、ファシズム、共産主義と同じだ」と敵視している。彼に言わせるとイスラム教は世界にとっての「癌」ということになる。 トランプは、ISに関しては、「ロシアと協力して叩き潰す」と言い、イランに関しては、経済制裁の解除は間違いだったとして、「ミサイル開発や人権問題に関する新たな制裁を科す」と言ってきた。おそらく、これは実行されるだろう。つまり、トランプ政権は明らかに反イスラム、そして親イスラエルだから、もしかしたらアメリカが新十字軍となって、イスラムと戦う可能性は十分ある。 そうなれば、日本はアメリカ側について参戦させられるだろう。
■「親ロシア」という白人連帯
トランプが「反中国」で、対中強硬路線を取りそうなことは日本にとっては歓迎できる。しかし、プーチン好きで「親ロシア」なのはいただけない。ソ連崩壊後、トランプは何度もロシアに足を運び、モスクワにトランプ・インターナショナル・ホテルを建てようとしてきた。しかし、今日まで実現していない。だから彼は、ロシアに対して甘いのだ。 トランプはなんとかロシアと「ディール」しようと、国務長官にレックス・ティラーソンを起用した。ティラーソンは、エクソン・モービルのCEOだが、プーチンがもっとも親しいアメリカ人である。しかも、ロシアから「友好勲章」を授与されている。ティラーソンは、ロシアの国営石油会社ロスネフチとべったりで、これまでクリミア併合による対ソ経済制裁の解除を主張してきている。 おそらくトランプは、ロシア人を同じ白人であること、同じキリスト教徒であることで共感を持っている。だから、トランプはロシアと組んで、ともかくイスラムを叩きたいのかもしれない。 しかし、このような考え方をされると、日本にとっては最悪だ。トランプもプーチンも白人至上主義だから、中国や韓国、そして日本などのイエローを、イスラムと同じように見下しているのは間違いないからだ。
■親日派なんてどこにいる?
トランプ政権に何人か「親日派」がいるとして、日本のメディアは歓迎している。しかし、これはとんでもない思い違いだ。 インディアナ州知事だったマイク・ペンス副大統領は、インディアナ州が日系企業誘致に熱心だったことで、「親日」とされるが、別に日本だけが好きなのではない。彼はリジジャスライトの法律家だけに、日系企業がアメリカでトラブルを起こせば、徹底して叩きに走るだろう。 日本のメディアが「親日派」としてもっとも歓迎しているのが、商務長官になるウィルバー・ロス。投資ファンドの大物で、総資産は29億ドルという大金持ちだ。 2000年に幸福銀行(当時)を買収したので「親日派」とされるが、投資家がどこかの国を贔屓にするなどということはありえない。 彼は、元ロスチャイルド社に24年勤めた金ピカのユダヤ資本家であり、これまで破綻したアメリカの製造業を買い叩いて儲けてきた。いわば、白人ブルーカラーの敵であり、広く言えば日本の製造業の敵でもある。 また、彼は日本なんかよりロシアのほうが好きだ。彼は、ロシアの3番手の石油ガス会社テューメン・オイル(TNK)の会長ヴィクトル・ヴェクセリベルクのビジネスパートナだからだ。 キャロライン・ケネディ大使に代わって駐日大使になるウィリアム・ハガティは、コンサル会社から転じて投資金融会社を創立して成功した人物。ボストン・コンサルティング勤務時代の1980年代に東京に3年間駐在していたことから、親日派とされる。 しかし、外資の東京駐在員が親日であることは、私の経験上あまりない。イルカと京都が大好きだったケネディ大使のほうがよっぽどマシだ。
■一般人(99%)には「悪夢」
というわけで、トランプは「オレさまはすごい」を見せつけるためにバブルを起こす。実際、もう起こっている。だから、1%の人々にとっては大歓迎である。大減税と巨額の公共投資をやるのだから、NYダウは上がりドル高になるのは当然だ。日本もこの恩恵を受けて、日経平均は上がり、円安は進んだ。今後、円は確実に1ドル140〜150円になるだろう。 しかし、こうしたことは、一般ピープル=99%の人々にとってほとんど関係のない話である。というか、むしろ「悪夢」だ。格差はあって当然だが、露骨な金持ち優遇政治は、アメリカにふさわしくない。民主政治はやはり大多数の幸福を追求すべきだ。 歴代アメリカ大統領というのは、これまで曲がりなりにも「尊敬できる人物」が就いてきた。また、共和国アメリカの民主政体のトップとして、国民に対しての責任感があった。さらに、アメリカは世界覇権国だから、世界のリーダーたる自覚も持っていた。 しかし、トランプにそんな面があるだろうか? 「自由」「平等」「人権」など、アメリカが持つ基本的な理念など、トランプの頭の中にはひとかけらもないのではないか? この先、世界は「オレさま主義」のとんでもないナルシストによって振り回されるのは間違いなくなった。 |
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