2017年1月28日●「トランプ新大統領と日本の安全保障」というテーマでセミナー |
「孫子経営塾」(NPO法人、代表:前原清隆)のセミナーで講演した。テーマは、「トランプ新大統領と日本の安全保障」。 *なお、講演後、事務局がまとめてくれた講演のダイジェストがあるので、以下、掲載しておきたい。 「トランプ新大統領と日本の安全保障」 文責 塾 長 講 師: 山田 順氏 ジャーナリスト 月 日:平成29年1月28日 場 所:於偕行社 テーマ:「トランプ新大統領と日本の安全保障」
Ⅰ.講演内容 1.講演要旨 2.講演内容 (1)なぜ、トランプは大統領になれたのか? (2)アメリカという国はどういう国か? (3)アメリカ(世界覇権国)の使命 (4)トランプはオレさまビジネスマン (5)支離滅裂な経済政策、大減税、保護主義、バブル (6))トランプ政権は稀に見る「軍事政権」 (7)トランプにとっての日米同盟とはなにか? (8)危険すぎるポリシーなき対中強硬戦略 (9))日本は今後どうすべきか? 3.主要な質問 Ⅱ.コメント及び講演から学ぶ孫子的理解 ・・・・・ 塾 長 Ⅰ.講演内容 1.講演要旨 1月20日、トランプ新大統領が就任し、「Make America Great Again」(アメリカの偉大なる復活)が始まりました。これまでの報道を見ればわかるように、トランプ政権はこれまでのアメリカのどの政権とも大きく異なっています。とすれば、日本は今後どのように「トランプのアメリカ」と付き合っていけばいいのか? とくに、日米同盟、安全保障という観点から、トランプのアメリカを考察する。 2.講演内容 (就任演説) アメリカ第一主義(アメリカ・ファースト):「今日から新たなビジョンがこの地を統治する。アメリカ第一主義だ」 (1)なぜ、トランプは大統領になれたのか? ア.キーワード 「poor white」(プアホワイト:貧しい白人層)・「ホワイト・トラッシュ」 (white trash:クズ白人)・映画『8 Mile』・デトロイト・映画『フロ-ズン・リバ-』・白人最後の大統領・NY人種構成|2043年 ・事実を言うか分からない ・娘は最初の婦人の子。かしこい ・アメリカ第一主義 イ.ワシントンのエスタブリッシュメント(貴族)が支配してきた腐敗した 政治を変える ・少数の人達が政府の恩恵にあずかり、国民がその負担を担って来た ・政治家たちは豊かになったが、仕事はなくなり、工場は閉鎖 ・国の主流派は自分達は守ったが、この国の市民は守らなかった ウ.アメリカは他国の為に尽くしてきた⇒これを変える ・アメリカの産業を犠牲にして外国の産業を豊かにした ・この国の軍隊は他国の国境の為に消耗してきた ・この国の国境を回復させ、夢を復活させる エ.3つの特徴 ・選挙戦中に言ってきたことと全く変わらない ・自由・民主主義・法の支配・人権・平等といったアメリカ建国の精神に 全く触れない ・権力をワシントンから国民に返すと宣言した ⇒トランプ革命? オ.なぜ大統領になれたのか? ・NYの雰囲気「絶対トランプは大統領にならない」 ・過激発言が白人の貧困・中流下層を動かした「オフショア、グロ-バル 化」⇒事実誤認:アメリカ企業が自ら国外に出た ⇒資本主義の必然 ・得票率の実態:トランプ(46.1%) クリントン(48.4%) カ.ラストベルト Rust Belt さびついた工業地帯 ・ブルカラーの白人が下流に転落した ・「8Mile」エミネム自伝映画。デトロイトの現状。 ・「フローズン・リバー」白人貧困層による麻薬密売 ・金持ちもトランプに投票した模様。背景は不明 キ.NYの現状 ・地下鉄:白人10%、アジア10% ・人口:白人30%以下、ヒスパニック30%以上、黒人30%、 アジア増加中 ク.トランプは白人最後の大統領 ・2010年:白人64.7%、ヒスパニック16%、黒人13.6%、 アジア53% ・2043年:白人48.5% ヒスパニック・黒人の方が出生率高い。 ⇒白人が大統領になれなくなる ケ.オバマ演説 ・リベラルなアメリカはない。 ・ブラックアメリカ、ホワイトアメリカもない ・ただ、UnitedAmericaのみがある
(2)アメリカという国はどういう国か? ア.キーワード WASP(ワスプ)|星条旗|「忠誠の誓約」The Pledge of Allegiance)|アメリカ=共和国republic|デモクラシー=民主制(民主主義は誤訳)|「自由と正義」(Liberty and Justice)|基本的人権「生命、自由、および幸福の追求」(Life, Liberty, and the pursuit of Happiness)|「財産権」(property rights)|丘の上の町(City upon a Hill)|ケネディ演説|レーガン演説・・・City upon a hill
イ.人口:3億人。内白人2億人。英国系は6000万人。 ・白人の内東欧・ラテン系が1.4億人 ・トランプ:ドイツ系。祖先は南ドイツからの移民。シアトルで売春 宿、レストランなどを経営 ・白人の国ではなくなった。 ウ.星条旗に忠誠を誓う。共和国に忠誠を! I pledge allegiance to the flag of the USA and to the Republic which is stand on Nation under God, indivisible with liberty and justice for it. すべての人に、自由と正義が存在する(liberty and Justice) ・Republic:国家元首が世襲ではなく選挙で決める。日本は該当せず ・Democracy:大衆が作る政治。貴族が作る~アリストテラシー ⇒共産主義との対立ではない ・history.:日本の歴史とは...過去の物語・祖先の物語 ・アメリカの歴史は祖先の物語が描かれていない。ルーツがばらばらの為書けない。 ・基本的人権:生命、自由、幸福追求(財産権)の3つの権利を、国家が 没収できない。
(3)アメリカ(世界覇権国)の使命 ア.キーワード 明白な運命(マニフェスト・デスティニー:manifest destiny)|アメリカ例外主義(American exceptionalism)|「善と悪」の戦争|独立後の241年のうち223年が戦争 City upon a Hill。丘の上の町。 これがアメリカの根本理念。 イ.we shall be as a City uon the hill,the eyes of all people are upon us. 我々は、すべての人々の目が注がれる丘の上の町とならなければ ならない ・JFK.1961.1就任前の演説でレーガン。退任演説で上記を述べた。 波にも風にもゆるがない。神に祝福され・・・すべての人に門を開く。 ⇒トランプが門を閉ざすといった ウ.丘の上の町を、地の果てまで行きわたらせることが使命。 ・東海岸から西海岸へ着々と開拓を進めた。そして→太平洋まで ・インディアン、メキシカンを駆逐することは触れない ・American Exception.アメリカはほかの国と違う特別な国だから、 アメリカがやることはすべて正しい ⇒ We are Number one! エ.1776独立~2017の241年中223年は戦争をしている。 ・例:WWⅡ後では、1976,1977,1978,1997,2000年のみ戦争せず。 ・アメリカの戦争:good and evil。善と悪。 ・キリスト教価値観。天使と悪魔。道徳的すぎる。柔軟性なし。 ⇒だから原爆が使用できる
(4)トランプはオレさまビジネスマン ア.キーワード Deal「ディール」|政治=ビジネス|マイケル・ムーア「トランプは任期4年を全うできない」|お前はクビだ!(You're fired)|映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』|パームビーチ・セレブ|『大統領に敬礼を』(Hail To The Chief)|レーガンの再来 イ.twitter。 ・1日4回。攻撃・脅迫・自慢の3パターンのみ ・標的:民主党、中国、北朝鮮、フォード、トヨタ、 ・The art of the deal。自伝。取引上手と考えている。 ・政治・軍事も取引と考えている。 ウ.Deal(取り引き)が好きなナルシスト? エ.トランプは任期4年を全うできる? ・マイケル・ムーア氏:無理 ・トランプのイデオロギー以外何イデオロギーも持っていない。無意識に法を犯す。自分にとって最善しか考えない。 ・トランプの番組 You're fired。 アメリカ国民は冗談半分に投票した? オ.トランプの別荘 ・125億 ・hail to the chiefが好き カ.レーガンの再来? ・レーガンが好きらしい
(5)支離滅裂な経済政策、大減税、保護主義、バブル ア.キーワード バラマキと大減税|財政赤字が拡大|ウォール街の味方|保護主義(protectionism)|トランプラリー|「グラス・スティーガル法」(Glass-Steagall Act)「ドッド・フランク法」(Dodd–Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:金融規制法)|ラッキーな男 イ.トランプ ・ バブル ・ばらまきと大減税 ・成長率を最終4% ・10年間で1兆ドルのインフラ投資 ・大減税:法人税35%→15% 個人所得税の引き下げ 相続税の廃止 ・財源不明 ウ.財政赤字 ・「知ったことではない」 カネはFRBが刷ればいい ・財政の崖問題に直面 エ.ウォール街の味方の政策 ・グラス・スティーガル法の復活を見直すか。銀行証券分離法 ・ドッド・フランク法を全廃または骨抜き オ.保護主義 ・TPP離脱 ・TTIP離脱 ・NAFTA見直し ・過去に保護主義は1回のみ。(1930年、フーバー。スムート・ホーリー法) ⇒ブロック化を呼ぶ? カ.トランプバブル、トランプラリー ・NYダウ2万ドル キ.ロシア ・GDPは韓国以下 ・軍事力・核力のみ ク.トランプはラッキー男 ・GDP2%、失業率4.7%~完全雇用。良い状態で就任した ・職を作っても、働き手がいない ケ.アメリカの経済発展(覇権)は続く ・アメリカは人口増加中、 ・イノベーションとグローバル企業の発展、 ・ネットワークによる情報支配
(6)トランプ政権は稀に見る「軍事政権」 ア.キーワード 政治任用制political appointee|大統領補佐官Assistant to the president|国家安全保障会議National Security Council (NSC) |「3G」政権:大富豪(Gazillionaire)ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)将軍(General)|「力が平和をつくる」(Peace Through Strength)|全軍増強|350隻海軍の建造|フィラデルフィア海軍工廠の復活 イ.軍産複合体。 ・稀に見る軍事政権・google,facebook ウ.アメリカ政府組織 ・大統領補佐官 ・15省の長官。議員はなれない エ.3G政権 ・大富豪(Gazillionaire) ・ゴールドマンサックス(Goldman Sachs) ・将軍(Genera)l オ.政権の陣容 ・副大統領:マイク・ペンス。弁護士。穏健。日本寄り ・首席補佐官:ラインス・プリーパス。ぱしり。共和党との調整役 ・国家安全保障補佐官:マイケル・フリン。(元陸軍中将)「イスラム教を 「癌」と呼ぶ。親ロシア ・首席戦略官・上級顧問:スティーブン・バノン。極右。白人至上主義、反 ユダヤ、反LGBT、女性蔑視。元海軍大尉 ・国務長官:レックス・ティラーソン。親ロシア? 日米安保支持? ・国防長官:ジェームズ・マティス。狂犬。パットンの再来。タカ派。実戦で は露中に勝つと公言(元海兵隊大将) ・国土安全保障長官:ジョン・フランシス・ケリー。国境の壁に賛成。息子 をタリバン掃討作戦で亡くす(元陸軍大将) ・司法長官:ジェフ・セッションズ。力が平和を作る。People through Strength。反イスラム (元上院議員) ・CIA長官:マイク・ポンペオ。拷問を擁護。タカ派 ・内務長官:ライアン・ジンキ。(海軍特殊部隊出身)(元上院議員) ・大統領報道官:・ジョン・マイケル・スパイサー。ウエストポイント出身・ 海軍広報担当。強硬派 ・海軍長官:ランディ・フォーブス(元下院議員) 「中国を制裁せよ」「尖閣で日本を支持せよ」・全軍を増強する!」 軍艦270⇒350等々 ・陸軍長官:フィリップ・ビルデン。サイバーセキュリティ専門。息子は海 軍・高頻度取引企業バーチュ・ファイナンシャルの創業者・(陸軍士官 学校出身)。・Make Navy Great Again! ・空軍長官:ベザー・ウイルソン(女性)(空軍士官学校出身)
(7)トランプにとっての日米同盟 ア.キーワード ・希望の同盟an alliance of hope ・オバマの「世界の警察官はやらな い」だけ継承・南シナ海「航行の自由作戦」・トランプの無知(日本国憲 法)(日米安保は片務条約ではない)(サンフランシスコ条約を知らな い)(国連敵国条項を知らない) 尖閣が日米安保条約の対象 イ.オバマの世界の警察官をやらない=アメリカ例外主義を捨てる ・クリミア併合 ・シリア内線 ・イスラム国拡張 ・南シナ海 ・自由の航行作戦。超弱気。12カイリに入っていない ウ.トランプの無知 ・日本国憲法を知らない。日本の非核 アメリカの教科書では日本国憲法はマッカーサーの口述筆記と習う ・日米安保は片務条約ではない 戦争になれば、日本はアメリカの指揮下に入る。 ・サンフランシスコ平和条約を知らない 日本語の正文がない・主権も制限されている・日本は独立していない 新聞は「主権は完全回復」と報道⇒誤解 ・国連敵国条項を知らない 戦争をするには安保理の許可が必要。例外は:連合国の敵国(日独) が侵略を企てた場合、国連決議に拘束されず戦争可能
(8)危険すぎるポリシーなき対中強硬戦略 ア.キーワード 中国挑発「一つの中国」原則・パンダ・ハガーとドラゴン・スレイヤー・ピーター・ナヴァロ・相殺戦略|「接近阻止・領域拒否」(anti-access/area-denial:A2AD)・南シナ海トライアングル・無人潜水機(underwater drone )・ 空母「遼寧」VS空母「カール・ビンソン」・中国「キャベツ戦略・尖閣日中戦争・5日で敗れる日本(2016.1 フォーリンポリシー:日本への警告) イ.危険すぎる対中国政策。中国を挑発 ・1つの中国を否定・台湾を認める発言・関税45%・台湾に武器売る (・親中派:パンダ・ハガー ・対中強硬派:ドラゴンスレイヤーの対立) ・対中強硬派 国防長官・下院議員・元国連大使(ボルドン)・国連通商会議代表(ピー ター・ナバロア・最大の強硬派?)・通商代表部代表(ロバート・ライトハ イザー)・国家安全保障会議アジア部長(マシュー・ポッティンジャー) 等・・・(東アジアで軍備拡大?)(在沖縄米軍を台湾に移せ!) (米国の対中貿易赤字は過去最悪。拡大中・対日本は一定額 ウ.アメリカの貿易 ・旗印は自由貿易、本音は保護貿易 ・関税以外の障壁が140ある。保護主義が多い(が、公言しない) ・マシューポッティンジャー(国家安全保障会議アジア部長)。冷静。元ジ ャーナリスト。中国での逮捕歴あり...書きすぎ エ.相殺戦略 ・リバランス ⇒アジア増強 ・南シナ海 中国の戦略:接近阻止、領域拒否A2AD ・ハイナン島:空母・潜水艦 基地・核第2撃を可能にする。 ・尖閣諸島 尖閣はどっちが有利? 中国本土に近い(330km)・沖縄から遠い(410km) ※キャベツ戦略。①漁船⇒②民兵化した漁船⇒③海艦船⇒④軍艦 尖閣日中戦争・5日で敗れる日本 (2016.1 フォーリンポリシー誌:日本への警告)(ランド研報告では ない) ※トランプの最初の外交試練は尖閣?
(9)日本は今後どうすべきか? ア.キーワード 日本はメキシコ、中国と同じ・「保護主義」を捨てさせる・親日派?アメリカ太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍大将・日米防衛戦略比較・中国に先に手を出させる・「覇権安定論」(Hegemonic Stability Theory)・米中逆転はなし イ.日本を同盟国と思っていない。競争相手 ・時代錯誤すぎる ・資本主義を知らない ・事実誤認が多い ・2国間交渉では必ずやられる ・親日派を利用する ・安保の適用外を発言させない ・ハリス太平洋軍司令官(母親は日本人・横須賀生まれ)に頼る 「中国からの攻撃があれば、我々は必ず防衛する ・中国に先に手を出させる戦略 ア.【結論】 トランプ・アメリカと仲良くしてはいけない。のらりくらり。臥薪嘗胆。 4年後を見据えてやっていく。 イ.覇権安定論 ・世界に1国、強大な国があると安定する。ローマ帝国 ・世界の覇権交代の歴史 ・覇権国家に挑戦した国は覇権国家になっていない。3~4番手が取る 覇権国 挑戦国 3~4番手 16C ポルトガル スペイン オランダ 17C オランダ フランス イギリス 18C イギリス フランス イギリス 19C イギリス ドイツ アメリカ 20C アメリカ ソ連・中国 日 本 ウ.2国間交渉 ・覇権なき大国・多極化、不安定化 ・トランプの頭の中は変えられない・聞く耳を持たない ・選挙中と同じことを言っている ・時代錯誤、 エ.結論:臥薪嘗胆
3.主要な質問 (1)軍事政権に付いて (2)アメリカの対中認識 (3)トランプの弱点 (4)ロシアのサイバー攻撃の影響 (5)アメリカは民主主義国家か?
Ⅱ.コメント及び講演から学ぶ孫子的理解 ・・・・・・・・塾 長 1.トランプ新大統領就任1週間における講演に感銘 (1)就任直後の浅い日数では、不透明な部分が多々ある時期に「思い切った」視点からの講演内容に感銘を受けた。又、今後の日米関係や我が国の安全保障考える上での貴重な示唆を得た。 (2)アメリカの政治の仕組みから考えること。 ア.絶大なる大統領の権限 (ア)行政権は米大統領に帰属する旨米国憲法に明記されており、政権のメンバーは議員を兼ねることは出来ない。又15省の大臣が反対しても、大統領の賛成で決定する。我が国の場合と大きく異なる。日本は首相(総理大臣)は内閣と言うチームともいえる行政機関であり、議院内閣制である。 (イ)軍の最高司令官である。 (ウ)議会に対する「法案拒否権」を有する。 (エ)議会の承認が要らない行政及び軍に対する「大統領令等(大統領令・大統領覚書・大統領布告)」を有する。 イ.大統領権限の限界 (ア)厳格な三権分立制を採っており、①大統領の締結する条約や各省長官の任命に関して上院の承認を得なければならない。②大統領の「法案拒否権」に対し、上下両院で2/3以上の賛成でこれを覆すことが出来る。③最高裁による大統領弾劾裁判で大統領を罷免できる。最高裁の判事は長期任命され、通常大統領よりも長期間その地位にある。 (イ)共和党の党員として党内の安定的支持は不可欠である。 (ウ)マスメディアや国民の前には信頼性の維持が不可欠である。 ウ.予想される不安定要因 (ア)得票率(46.1%:48.4%)や暴言等から安定的な支持率維持の可否 (イ)安定した立法と公約実現の可否 (ウ) 無意識に法を犯し弾劾裁判による罷免 (エ)家族人事
3.孫子的学び (1)難得糊塗(馬鹿に成れ)と言う詭道なのか?(孫子第1「始計篇」) 中国の鄧小平は最高指導者であった1980年代には「難得糊塗」(nande hutu)と言う言葉を多用した。「馬鹿に成れ」という事のようであるが、トランプ大統領は本当に所謂バカなのか鄧小平流の「馬鹿に成れ」のバカなのか。又、鄧小平は24文字の対外戦略の中に ”韜光養晦“ も含めていた。兵や戦略用語で「力を隠せ」が本来の意味で、その間に力を養う事を意味し、”難得糊塗“ と共に孫子でいう詭道である。 4つの近代化で勃興した経済力を軍事力に注入し、習近平は”韜光養晦“をかなぐり捨てて、アジアにおける覇を唱えるが如く、今や米国との対決すら狙って「偉大なる中華民族の復興」に向けた国創りに挑んでいる。僅か約30年間における劇的な変化である。 トランプ大統領は選挙戦の時からオバマ・クリントン外交の失敗点を挙げる(2016.4.27外交スピーチ)と共に自らの外交政策の概要(同左)を述べている。国内政策についても著書「Crippled America」で移民政策を含む政策を提言している。(「トランプ革命で復活するアメリカ」・藤井厳喜著・勉誠出版より) 詭道は相手の不意を衝き、虚を導く為の手段でもある。 (2)覇王の兵?(孫子第11「九地篇」) 「覇王の軍は国々との同盟に努めることもせず、天下の権をわが身に積み上げようとしなくても自分勝手に振舞っても威勢は敵国を覆っていく。だから敵の城も落せるし、敵国も破ることが出来る」と2500年前に孫子は述べている。未だに軍事力も経済力もアメリカを凌駕する国はない。だが、ここ30年程で中国を劇的に勃興させ、相対的な力が低下した。だがトランプ革命は覇の分化・分割に見せて、実は絶対的覇権の回復を狙っているのではないのか? (3)覇権回復の為の「以正合以奇勝」マハン海軍戦略(孫子第5勢篇) 政権の陣容を観れば「元軍人又は軍学校出身者」が多く見受けられる。マハン流の海軍戦略の強化なのかも知れない。中国は「中国のマハン」とも呼ばれ、中国海軍を沿岸防衛から外洋海軍に脱皮させる上で決定的な役割を演じた人物である『劉華清』によって「中国流のマハン戦略」を1980年代からとり続けている。つまり、通商支配のための海軍力の建設にある。 マハンの通商ドクトリンからすれば、中国が制海権の能力を狙うのは、通商を拡大するためである。経済成長に必要な資源を確保する為に中国は海運業への依存を益々高めている。従ってマハンのいう「広大な共有地」である外洋への進出が至上命令と成る。マハンの説くシー・パワー論は、戦時の艦隊決戦だけでなく、平時に於いて世界の貿易システムを守るという、より広い任務を強調している。 トランプ大統領の目指すのは、第1はISの壊滅にあり、此れにはロシアと共同作戦をとる。第2の対中戦略は①通商の破壊でありこれで経済力を削ぎ、併せてこれ以上海軍力を強化させないことにあるのでは無かろうか。我が国は同盟国としてよりも、むしろ貿易競争相手位にしか思っていないかも知れない。貿易と軍事力強化の抱き合わせで付き合わされるかも知れない。例えば「貿易摩擦を梃に軍事装備品の購入を迫るなど」である。正に、圧倒的な軍事力の優勢を更に強化して「正々堂々と威勢を示すと共に抑止と対処の両者で目的を達成する。つまり、 孫子の言う「正を以て合い、奇を以て勝つ」政戦略ではないだろうか。国民の一人としては引き続き慎重にウォッチングを続けることが不可欠であるが、国全体としては、アメリカの変化を梃に「寄り切られるだけでなく忍耐し“ウッチャル”臥薪嘗胆力」を整える好機と捉えて欲しい。 おわり。
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