17/04/03●米欧の書店売上げ回復も日本は疑問符だらけ? |
先日の『出版ニュース』が英国の書籍売上げが2年続けて前年比を上回るなか、最大の書店チェーン「ウォーターストーンズ」が復活したという記事を掲載していた。と思ったら、今度は『日経新聞』が4月2日付で「米欧「書店は死なず」アマゾン、紙と両にらみ」という記事を掲載した。 この二つの記事が伝えるように、米欧における書店売上げは、2年連続で上向いている。米国の場合、2014年の前年比1.6%減以後、2015年が同3.2%増、2016年が同2.5%増と、2年連続で売上げ増を記録している。 また、欧州も2015年は前年比1.4%増、2016年も同1.0%増となっている。
では、英国の書店チェーン「ウォーターストーンズ」はなぜ復活したのか?『出版ニュース』記事によると、新CEOが選択と集中をやり、既存店舗の改装に投資しつつ、新規開店も促進し、その一方で、不採算店を次々に閉店したこと。また、流通を改善し、翌日発送可能タイトルを増やしたこと。さらに、書籍以外の取扱商品を増しやしたことなどを挙げられている。 では、米国はなぜ復活したのか? 『日経新聞』記事では、独立系で最大の書店パウエルズブックス(米オレゴン州ポートランド市)や創業90年のニューヨークの老舗大書店「ストランド・ブックストア」を取り上げて、以下のように述べている。
《米国と欧州の市場で何が起きているのか。米調査会社のコーデックスグループは若者を中心に電子書籍の利用を減らし、紙の本に戻る動きがあると指摘。電子端末の利用時間をこれ以上は増やしたくない「デジタル疲れ」が背景にあるという。 米出版社の電子書籍は15年の売上高が2年連続で減った。16年も大幅に落ちたようだ。欧州も書籍の売上高に占める電子書籍の比率は5~6%で「低迷している」(欧州出版社連盟=FEP)。 電子書籍は、紙の本に対する価格面の優位性が薄れてきた。大手出版社は電子書籍の価格が下げ止まり始めたほか、一部で電子書籍の価格が紙を上回る例もある。紙と電子の逆転現象は、電子書籍の薄利多売の市場構造を嫌う著作者や出版社の消極的な姿勢で起きた。》
要するに電子が紙を食ってきて、その流れのなかで、たとえばボーダーズのような大型書店が倒産していった。そうして、書店数が減って、競合、競争がなくなり、電子書籍がスローダウンした。それで、生き残った書店の売上げが上がったというわけだ。書店のビジネスモデルが大きく変わったわけではない。 そこで、アマゾンも貪欲にリアル書店経営に乗り出している。ビッグデータを持っているので、アマゾンは強い。アマゾンは今年、リアル書店を9店舗に増やすという。
では、日本はどうだろうか? 書店数は減り続け、書籍・雑誌の売上げは減少を続けている。この減少は底を打つ気配がまったくない。なぜなら、日本の紙の書籍・雑誌の中核をなすのが、コミックとコミック誌だからだ。2016年の紙のコミック全体の販売金額の落ち込みはひどく、3000億円を割り込み、これは32年前の1984年の売上げと同じである。また、コミックスも2000億円を割り、過去最大の落ち込みの7.4%減を記録している。 現在、漫画は電子に移行中で、これが片付くまでは、日本の書店売上げは回復するはずがない。雑誌もそうである。米欧とは環境がまったく違うのだ。 |