17/05/19●『週刊新潮』が『週刊文春』を糾弾大特集という「勘違い」の哀しさ |
なんとNHKニュースまでが、次のように報じた。 「出版取り次ぎ大手のトーハンが、「週刊新潮」の中吊り広告を、ライバル誌の「週刊文春」を発行する文藝春秋の社員に事前に見せていたことがわかりました」 NHKばかりではない、新聞はすべて報じた。ワイドショーも報じた。しかし、これがなんでニュースなのかよくわからない。「文春砲」が話題になり、『週刊新潮』が大体的に報じたから、どのメディアも大ニュースだと思ってしまったのだろうか?
発端は、5月18日発売の『週刊新潮』(5月25日号)。その見出しは「『文春砲』汚れた銃弾」。新聞広告や車内吊りなどびっくりするくらいの大きな見出しで、グラビアも含めて10ページ以上も割いた大特集だ。しかし、中身はなんともせこい。文春の人間が新潮の中吊り広告をコピーしている写真を、さもすごいことのように報じているのだ。そして、新潮の記事を元にして文春が記事を書いたことを克明の解き明かし、その行為を糾弾している。
で、私の率直の感想を言えば、新潮は血迷ったとしか言いようがない。たしかに文春の行為はアンフェアだ。しかし、私の経験から言えば、抜きつ抜かれつしているメディアの現場では、テレビ、新聞、雑誌まで、みなライバルがどのような報道、記事をやっているか、情報網を張りめぐらしている。つまり、メディアの「スパイ活動」は日常茶飯事である。 私の週刊誌現役時代を振り返っても、他誌の記事を事前に入手するのは当たり前だった。中吊り広告なんかでは遅い。たとえば、入稿原稿がゲラになる段階で、印刷所に手をまわして手に入れていた。新聞も同じだろう。常に最新版を入手して相手がなにを書いているか見ているのだ。
残念だが、『週刊新潮』は管理が甘いと言うしかない。こんな記事を出すよりも、『週刊文春』にここまでやられ放題になっていることを反省するのが先だ。 このような特集記事をやって、なにが面白いのだろうか? 本当によくわからない。 やるべきことはこれではない。新潮はなにか勘違いしているとしか言いようがない、本当に、哀しい出来事だ。 私が週刊誌をやっていたころは、ライバルをもっと尊重していた。やられたら、次のスクープでやり返す、それがメディアの流儀だ。 (ただ、もしかしたら、今回のことが“出来レース”(談合のうえに行われた)の可能性もあります。もしそうならば、ここに書いたことはすべて的外れです)
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