[280]NYタイムズがデジタルメディアへ完全移行。リストラ発表の中身に朝日新聞もビックリか!? |
2017年 6月 07日(水曜日) 20:35 |
トランプの弾劾がいよいよ現実化するなか、宿敵「NYT」紙のリストラ(=レイオフ、早期退職)が、本格着手されている。先月末に米メディアがいち早く伝えると、日本でも即座に朝日新聞が記事(5月31日)にした。 こうした報道を見ると、今回のリストラの主な対象はデスクや編集者(日本で言うと整理部員)なのだが、逆に記者は最大100人増やすというから、正直、驚いた。 また、パブリック・エディター(オンブズパーソン)職を廃止するというのにも驚いた。 おそらく、記事にした朝日はもっと驚いたに違いない。というのは、パブリック・エディターと言えば、朝日がNYTにならって昨年導入したばかりだからだ。それを本家本元のNYTがいち早く廃止するというのだ。
パブリック・エディターは、2003年に発覚したジェイソン・ブレア記者などの若手記者による記事の盗用・捏造スキャンダルの反省から導入された。要するに、記事の真偽チェックはもとより、内容がコモングッド(公共益)にかなうものかどうかまで審査する社内監視係である。 それをNYTは、もう要らないというのである。 その理由を、朝日記事によると、発行人のアーサー・サルツバーガー・ジュニアは「社内の監視役として中心的な役割を果たしてきたが、今やソーシャメディアやネット上の読者がより用心深く強力な監視役になった」からだと言っている。
ただし、もっと詳しく米報道をチェックすると、サルツバーガー・ジュニアは従業員宛のメモの中で“the responsibility of the public editor − to serve as the reader’s representative – has outgrown that one office.”(読者代表としてのパブリック・エディターの責務はわが社においてまっとうされた)と、その役割が終了したとし、さらに次のように述べている。 “When our audience has questions or concerns, whether about current events or our coverage decisions, we must answer them ourselves,” (われわれの視聴者が、進行中のイベントやわれわれの取材上の決断に疑問や懸念をもったら、われわれ自らが答えていかなければならない)
つまり、今後は全員がパブリック・エディターや編集者の役割を持つということであり、もっと具体的に言うと、記事に関しては記者と一部の裏方(backfieldersと呼ばれている)で構成されるチームが責任を持つということだ。 もう編集者はいらない。記事は書いた記者とそれをサポートする裏方が責任を持つ。このシステムは、新聞などの紙メディアのシステムではない。つまり、NYTはもう紙を完全に捨て、完全にデジタルに主力を移すということになったのだ。
社主の言葉を裏付けるように、NYTの編集幹部は従業員に宛てた手紙で、1本の記事に何人もの編集者が関わっている現状を「紙媒体時代の名残で、動きが鈍く、コストもかさむ」と指摘している。だから、今回のリストラで編集者などを減らし、記事制作のプロセスをスリム化するというのだ。そして、その分、現場の記者を増やすというのである。 NYTがこんなことができるのは、じつは、デジタル版の読者が、トランプ登場によって、大幅に増えたからだ。今年3月までの1年間で、有料購読者はなんと65%も増え、191万人に達したという。これは紙の不振による広告収入の落ち込みを補填するどころか、十分に採算が取れ、デジタルメディアとしてやっていけるレベルと言える。
というわけで、NYTのパブリック・エディター(オンブズパーソン)のリズ・スペイド(Liz Spayd)は、2016年5月に第6代目として任命されたが、わずか1年、この6月2日付けで退任した。そして、NYTは5月31日付けで読者センターを新設し、その責任者にハンナ・イングバー(Hanna Ingber)が就いた。今後は、デジタルメディアらしく、読者とのコミュニティづくりをいっそう強化していくということらしい。 トランプは、アメリカにさまざまな「チェンジ」をもたらしたが、まさか紙媒体を生まれ変わらせるとは想像すらできなかった。トランプは、伝統的メディアやメインストリームメディア(MSM)を、まとめて「フェイクニュース」と言ってきた。 ところが、そうした伝統メディアやMSMが今後、どんどんデジタル化、SNS化していくとどうなるのだろうか? 日本の伝統メディア、MSMは、たとえば「読売新聞」がそうしているように、政府の広報紙になることで生き残ろうとしている。なにか、とてつもなく間違っていないかと言いたくなる。 |
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