18/04/30●「放送法4条撤廃」論議は進むのか?安倍vs.既存メディアの視聴者無視の攻防 |
政府の「規制改革推進会議」(議長・太田弘子政策研究大学院大学教授)で、放送と通信の垣根をなくす規制緩和の議論が行われている。この焦点は「放送法4条の撤廃」で、安倍政権が3月にこの案件を持ち出してから、新聞、テレビ局との攻防が続いている。
放送法4条は、放送番組の「政治的公平」(political correctness)定めたもので、放送事業者は、次の4点に基づいて番組をつくることを義務付けている。 (1)公安及び善良な風俗を害しないこと、
では、これをなくすとどうなるか? 放送と通信の垣根がなくなるのだから、現在、ネットで横行しているようなフェイクニュースがテレビにもあふれるようになるという。要するに「偏向放送」が堂々とまかり通るというのだ。 そこで、既存メディアは大反対している。安倍シンパである、あの読売新聞でさえ、社説で大反対の論陣(「放送への信頼を失墜させる改革に乗り出す意味があるのか」3月25日)をはり、渡辺会長が首相に直接諭したという。
しかし、本当にそうだろうか? たしかに偏向放送は増えるが、公正報道がより追求されるようになることも起こるだろう。なにより、電波が解放され、新規参入業者も増え、ネットによるSNS時代にふさわしい双方向メディアももっと発達するだろう。いずれにせよ、視聴者の選択肢が増える。そして、公正であるかどうかは視聴者の選択に委ねられることになる。
結局、既存メディアが放送法4条の撤廃に反対しているのは、自分たちの既得権が失われるからである。そのため、この規制緩和の発信地が、安倍首相周辺であるにもかかわらず、読売新聞ですら反対したのだ。TBSはじめテレビ各局も反対声明を出している。
安倍首相は、朝日の慰安婦報道、そして昨年の森友・加計報道などで、メディア批判を強め、日本のメディアが偏向しているとの認識を強めた。そのため、経産省を中心に放送法改正の草案をつくらせた。つまり、「放送と通信の垣根をなくす」などと言ってはいるが、自己利益追求なのだ。そして、これに反対する既存メディアも自分たちの権益を守りたいだけ。結局、視聴者のことなど考えていない。
アメリカでは放送局に対し、賛否両論ある問題で双方を公平に扱うように求めた「fairness doctrine」(公平原則)」が、もう30年以上前の1987年に撤廃されている。その結果、メディアはより自由に活動できるようになり、CNNが誕生。現在では、FOXが愛国保守メディアとして大活躍している。
現在のところ、4条撤廃については政府側の分が悪い。規制改革推進会議は、4月16日の会議で放送制度見直しの論点をまとめた資料を準備した。しかし、そこには4条に関する記述はなかった。 規制改革推進会議は、放送以外の分野を含め、6月に改革案をまとめ、首相に提出することになっている。それまで安倍政権が持つかどうかわからないが、同じように今後の日本の放送がどうなるのかもわからない。ただ、もう世界は、フェイクニュース以後の局面に入っている。 |