18/05/30●文藝春秋社の内紛がいちおう決着。松井社長退任へ |
「自由闊達で風通しのよい社風」として知られてきた文藝春秋だが、出版不況のなか、「内紛劇」が起こり、どうなるのか外部の注目を集めてきたが、結局、中部嘉人常務が社長に昇格、松井清人社長が退任することで決着した。当初、会長職に就いて院政を施行とした松井氏だが、内部からの反発、とくに人事案の再検討を求める幹部からの「要望書」、そして常務の木俣正剛氏の退任を懸けた説得に屈したかたちになった。
内部状況をある程度知っている者としては、この決着は文春の将来のためにはよかったのではないか思う。 なぜなら、松井社長は完全なるワンマンで、現場のあらゆることまで口をはさみ、編集部の「やる気」を削いできたからだ。これが続けば、「文春砲」も錆つき、日本の文芸をリードする気風も失われるのではと危惧してきた。
もともと、文春では慣例的に現社長が次期役員人事を決めてきたが、それは社内コンセンサスを重視してのことだった。なぜなら、文春には、講談社や小学館のようにオーナー家や大株主はおらず、株の大半は現役役員と社員が持っているからだ。つまり、社員の声は無視できない。また、歴代社長は「本誌」と呼ばれる「週刊文春」「文藝春秋」の編集長を歴任した編集出身から選ばれるのが慣例だった。それが、文春のカラーを決めてきたからだ。 しかし、松井社長はこれらをことごとく無視してきた。次期社長に経理出身の中部常務を起用して、自らは会長に就任して“院政”を敷こうとしたのである。これでは、内部反発が出ても無理はない。
ともかく、人事はいちおう決着し、時期社長が内定したことで内紛劇はなんとか収まった。しかし、1度もめた火種は残る。 いずれにせよ、いま日本の出版社がやらなければいけないのは、デジタル時代にどのようにして文芸および出版ジャーナリズムを継承していくかだ。内紛をしている場合ではない。 文春の執筆者の1人として、今後の文春の復活を切に願う。 |