18/06/06●トーハン、日販の苦境が鮮明に。日経が記事化 |
6月5日、トーハンは、近藤敏貴副社長が社長に昇格するトップ人事案を発表した。これにより社長の藤井武彦氏は退任し、近藤氏による改革が進むとされている。 もう誰もが承知のように、取次業界はいま苦境にあえいでいる。それを、トーハンの人事発表に先立ち、6月2日付の日経新聞が伝えている。記事のタイトルは、『出版取次、苦境一段と日販、出版社に物流費転嫁 トーハンは経営陣刷新』。要点は、このままではやがて出版流通は成り立たなくなるというもの。
現在、新刊書籍は年間8万点近くが刊行されているが、その約7割がトーハンと日販経由で全国の約1万2000店の書店に届くシステムになっている。つまり、この2社がなければ書籍流通は成りたたないが、このシステムには大きな欠点がある。それは、このシステムが、本来は雑種流通のためのものであることと、流通コストを書籍定価に反映できないことだ。 つまり、雑誌が大幅に売れなくなり、流通コスト(配送費)が上がったため、システムそのものが崩壊しようとしているというのである。もちろん、書店数の減少も大幅にひびいている。
以下、日経新聞記事より、引用。 《取次会社の苦境を象徴するのは、日販の18年3月期の単独決算だ。本業の営業損失が5億6100万円と、1949年の創業以来初の営業赤字となった。雑誌は5億円の黒字を確保したが、利益水準は5年間で6分の1に縮小。25億円の損失を計上した書籍を支えきれなかった。》 《トーハンは社長の藤井武彦氏が退任し、副社長の近藤敏貴氏が6月下旬に社長に就く近藤氏は営業畑が長く書店の利益率の改善を推し進めるほか、経営課題である物流の効率化に取り組む。出版社との条件見直し交渉にも力を入れる。》 記事の最後のほうに、日販、トーハンの社長のコメントが載っている。 《トーハンの藤井社長は「書籍の定価は最低賃金より伸びていない。出版社は勇気ある決断をしてほしい」、日販の平林社長も「国際的に比較しても日本の書籍の定価は低い」と、業界の会合で出版社に呼び掛けている。》 |