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[354]2020年の年の瀬に思う「鎌倉での日々」と「淡々と流れゆく日々」
2020年 12月 29日(火曜日) 23:52

いよいよ今年も終わろうとしている。しかし、今年はコロナ禍のため、年の瀬のあわただしさを感じない。季節は確実に進み、寒さは日毎に増しているというのに、ほぼ毎日家にいるため、冬の実感がない。

 窓から外を見下ろせば、木々は冬枯れているというのに、室内はエアコンが利いて暖かい。結局、原稿を書く以外は、本を読むかテレビを見るかネットサーフィンをするかで、毎日が淡々と過ぎていく。

 

 コロナ禍になってから、歴史本を徹底して読んできた。古代から幕末まで、もう一度、あやふやな知識を整理するため、手当たり次第に手を出しては読み散らかした。

 やはり、心惹かれるのは、卑弥呼の邪馬台国からヤマト王権の成立、倭の五王、聖徳太子と大化の改新、白村江の戦いを経て天智天武朝による日本国の成立までの物語だ。

「私たちはどこから来たのか?」「私たちは何者なのか?」「私たちはどこへ行こうとしているのか?」

 今日まで、この3つの答えを探す旅をずっとしてきて、いまだに明確な答えは見出せない。日本、日本人とはいったい何なのだろうか?

 

  鎌倉育ちだから、鎌倉時代にも限りなく興味がある。小学校、中学校を通して、教師に連れられ、市内の史跡巡りしたことをなつかしく思い出す。鎌倉五山を巡り、七口の切り通しを登った。夏は、いつも家のそばの腰越海岸で泳いだ。

 あまりに鎌倉がなつかしくなり、歴史書をいったん閉じて、吉田秋生の『海街Diary』を読み返した。漫画というより、これは珠玉の短編小説の連作で、鎌倉が舞台だけに、読みながらときどき目を閉じて、子供の頃に焼きついた光景を思い浮かべる。

 

 それにしても、吉田秋生という女性漫画家は素晴らしい。どんな青春を鎌倉で送ったのだろうか?こんなに心のうちに抒情、哀愁を持った作家は2人といない。鎌倉とそこで暮らす人々(かつて私もそうだった)への愛情に溢れている。私の父は作家だったので、西岸良平の『鎌倉物語』も好きだが、『海街Diary』のほうが心にしみる。

 

 何気ない日常が、じつはどんなに尊いか。淡々と流れゆく日々のなかに、どんな心象風景が隠されているのか。これは、そういう人生を送った人間でなければわからない。

 高校生のとき、父に愛人が2人いるのを知り、その一人に幼子がいて、ある日、突然、母がその子を鎌倉の家に連れ帰った。愛人がもう一人の愛人に子供がいるのを知って、自殺未遂したからだった。

 庭を駆けずり回る何も知らない子。この腹違いの弟といっしょに、私もかけずり回った。庭には紫陽花が咲いていた。この弟は、10年ほど前、春スキーに行って転落死した。

 

 母はその後、自律神経失調で倒れ、梅雨の間、しばらく寝込んだ。そのころ、付き合っていた同じ高校の1学年下の彼女には、すべてを話した。腰越海岸を歩き、江ノ島の向こうに沈む夕日を見た。その年の江ノ島の花火は、彼女を連れて、打ち上げ場所のそばの桟橋まで見に行った。花火大会が始まると、まさに真上に花火の大輪が咲いた。

 ところが、その後、破片が空からバラバラ落ちてきた。私は、あわてて彼女の手を引いて逃げた。周りの人たちもみな逃げた。

 これまでの人生で見た、いちばん哀しい花火だった。

 

 『海街Diary』を読み返しながら、百人一首の解説本も並行して読み返した。映画『海街Diary』では、末の妹・浅野すず役を広瀬すずが演じた。その広瀬すずは、映画『ちはやふる』では主人公の綾瀬千早役を演じた。だから、百人一首を読み返したというわけではなく、なぜか自然と手に取っていた。

 中学時代、百人一首を必死に暗記した。そうして、「競技かるた」で勝ち、同級生の女の子から「すごい」と言われたときは、天にも上る気持ちになった。

 初めて百人一首を読んで、歌の内容を知ったとき、ほとんどが男と女の恋の歌なのに、本当に驚いた。とくに「長からむ心も知らず黒髪の 乱れて今朝はものをこそ思へ」(待賢門院堀河)の歌の意味、その場面を知ったときは、男と女が何をするのかを想像して、心が高ぶった。

 

  百人一首の女性歌人のなかでは、やはり和泉式部が飛び抜けている。こんなに、女性が情熱的で、素直にありのままの恋心を表明できる、日本にそういう時代があったことに驚く。

 

「あらざらむ この世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな」

「世の中に 恋てふ色はなけれども 深く身にしむ 物ぞありける」

「黒髪の 乱れも知らずうちふせば まづかきやりし 人ぞ恋しき」

「涙川 おなじ身よりはながるれど 恋をば消たぬものにぞありける」

 

 じつは、私は詩人になることを夢見ていた。中学時代は、詩を書き、短歌、俳句をつくり、毎月、旺文社の『中1、中2時代』と学研の『中1、中2コース』に投稿していた。そうして、毎月のように入選した。そのときの雑誌はしばらくとっていたが、いまはない。どこかにあるはずだが、探してみなければわからない。

 俳句で覚えているのは、次の2首。選者は石田波郷で、どちらも特選だった。

 

「初蝶や山路すれすれ登りゆく」

「ひっそりと春は暮れ行く火事の跡」

 

 後者の俳句は、実際の光景を詠んだものだ。

 私は、鶴岡八幡宮の脇にある横浜国大付属の生徒だった。付属小、付属中と9年間、江ノ電に乗って通った。1965年1月、小学6年生のとき、火事で校舎が焼けた。小学校、中学校の木造校舎と並んで、古い木造の大学(当時、学芸学部)の校舎と寮があったが、そこが火元だった。大学は全焼したが、小中学校は無事だった。あの頃、よく学生寮に遊びに行き、大学生の部屋の中に入らせてもらったが、どこも汚くてゴミ部屋のようだった。

 火事の後、1年ほどして新校舎が建つことになったが、それまでは焼け残っていた古い木造の校舎で授業があった。

 その校舎の階段脇の黒板に、私は、国語の教師の許可をえて、有名詩人の詩を白墨で書いた。

 

 そのなかで、私の心にいちばんしみたのが、『萱草に寄す』(立原道造)の、「はじめてのものに」と「のちのおもいに」だった。私は、この詩を暗記した。


「はじめてのものに」

 ささやかな地異は そのかたみに
 灰を降らした この村に ひとしきり
 灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
 樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた

 その夜 月は明かつたが 私はひとと
 窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
 部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
 よくひびく笑ひ声が溢れてゐた

 ――
人の心を知ることは……人の心とは……
 私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
 把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた

 いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
 火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
 その夜習つたエリーザベトの物語を織つた

 

「のちのおもひに」

 夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
 水引草に風が立ち
 草ひばりのうたひやまない
 しづまりかへつた午さがりの林道を

 うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
 ――
そして私は
 見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
 だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

 夢は そのさきには もうゆかない
 なにもかも 忘れ果てようとおもひ
 忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

 夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
 そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
 星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう

 

 もう一編、忘れられない詩がある。大木実の「夜汽車」だ。最後の「何でもないあの人達なのに――」の一文がなにを意味しているのかは、大人になってしみじみとわかった。「人生は旅」というが、そのとおりだ。

 

 「夜汽車」      
 

 いつの旅であったろう
 となりあわせた女のひとが
 窓に向かって泣いていたのは
 その背なで安らかそうに幼児が眠っていたのは

 また いつの旅であったろう
 むかいあわせた老人が
 手紙をしめして行く先をたずね
 哀しい身のうえを語ったのは

 灯火(ともしび)も暗く すちいむも通わぬ
 田舎の小さな町から町へ行く終列車

 ああ あのひと達
 一時間ほどいっしょに過ごしただけなのに
 おそらく生涯 二度と会わないであろう
 何でもないあのひと達なのに――
       

 

 大人になって、「人生の旅」を重ねるにつれ、李白の詩が好きになった。中国に行き、悠久の大河・長江の流れを初めて見て、「峨眉山月歌」「黄鶴楼送孟浩然之広陵」の世界がわかった。酒を飲むようになって、気にいったのが「客中作」。南京には何度か行ったので、「金陵酒肆留別」も、その光景が浮かぶ。南京は、唐代に金陵(ジンリン)と呼ばれていた。

 

「峨眉山月歌」

 峨眉山月半輪秋  峨眉山月半輪の秋
 影入平羌江水流  影は平羌の江水に入りて流る
 夜發清溪向三峽  夜清溪を發して三峽に向ふ
 思君不見下渝州  君を思へども見えず渝州に下る 

 

「黄鶴楼送孟浩然之広陵」

 故人西辭黄鶴樓  故人西のかた黄鶴樓を辭し
 煙花三月下揚州  煙花三月 揚州に下る
 孤帆遠影碧空盡  孤帆の遠影 碧空に盡き
 惟見長江天際流  惟だ見る 長江の天際に流るるを

 

「客中作」

 蘭陵美酒鬱金香  蘭陵の美酒 鬱金香
 玉碗盛來琥珀光  玉碗に盛り来たる 琥珀の光
 但使主人能醉客  但だ主人をして能く客を醉はしむれば
 不知何處是他鄕  知らず 何れの處か是れ他鄕

 

「金陵酒肆留別」 

 白門柳花滿店香  白門の柳花 満店香し
 呉姫酒喚客嘗   呉姫 酒を圧して客を嘗めしむ
 金陵子弟來相送  金陵の子弟 来たりて相送り
 欲行不行各盡觴  行かんと欲して行かず 各觴を盡くす
 請君問取東流水  請う 君 問取せよ 東流の水に
 意與之誰短長   別意と之と誰か短長と

 

 結局、詩人にはなれなかったが、編集者、ジャーナリスト・作家と書く仕事を続け、いまもものを書いている。2020年は終わるが、はたして来年はどんな年になるのか? 歴史の流れから見れば、どうってことないない1年となり、淡々と日々が流れていってほしい。

 

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