メルマガ[778] このままでは手遅れになる「愛子天皇」。「男系男子」にこだわると皇統は続かない! |
以下、No.778 2025/06/03 「このままでは手遅れになる「愛子天皇」。「男系男子」にこだわると皇統は続かない!」を全文掲載します。
■ 前回、読売新聞が提起した「女性・女系天皇容認」の記事を受けて、「愛子さまを天皇に!」と提言した記事は、大きな反響を呼んだ。「Yahoo!ニュース」に寄稿した同内容の記事には、数多くのコメントが寄せられた。 そこで、今回はその続きとして、なぜ「愛子天皇」は望まれるのか? どうしたら女性天皇への道が開けるのか? を検討してみたい。それには「皇室典範」の改正が必要だが、これを急がないと、手遅れになる可能性がある。 * この記事は、「Yahoo!ニュース」にも寄稿します。 * 写真:2021年12月5日、正装で青年行事に臨まれた愛子さま(代表撮影・ロイター)
[目次] ───────────── ■国会審議は皇位継承問題の本筋を逸脱 ■合意できるところだけを取りまとめて先送り ■保守派の主張は“男尊女卑の国”を守ることに! ■国連勧告に反論しカネを差し止めた政府 ■男系男子天皇への「中継ぎ」は女性蔑視 ■女性天皇、女系天皇を認めようとした小泉政権 ■欧州の王室は性別に関係なく長子優先 ■すでに決まっているので無理ではないか? ■皇室典範第1条の改正で愛子天皇は誕生する
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■国会審議は皇位継承問題の本筋を逸脱
不思議というか、逃げているというか、敬宮愛子内親王を次期天皇にするという議論は、今国会でまったくなされていない。議論されているのは、皇族数の減少への対応策として、(1)女性皇族を結婚後も皇室に残す(2)旧皇族の男系男子を養子に迎える、の2点だけである。
(1)に関しては、ほぼ全政党間で合意ができているが、その場合、配偶者と子どもも皇族とすべきかどうかについて、与野党で考え方に隔たりがある。自民党は皇族としないとし、立憲民主は皇族とすることも検討すべきとしている。 自民が皇族としないとしているのは、それが「女系天皇」につながりかねないからだ。共産党は「女性天皇も女系天皇も認められるべき」という立場である。
(2)に関しても、いちおうの合意ができているが、養子となった男性の皇位継承資格に関して見解がまとまっていない。その後に生まれた男子が継承資格を持つことを適切としても、養子男性自身は資格なしというのが自民、公明で、立憲民主は結論を保留。まずは、養子の対象となる男性がいるのかどうか、そして、その候補者の意思も確認すべきだと主張している。日本維新の会も同様である。
■合意できるところだけを取りまとめて先送り
このように、国会の皇位継承のあり方をめぐる審議は、ただ単に皇族数を増やす。そのためにどうするかという議論に終始し、意見も別れている。そのため、「合意できるところだけをまとめるしかない」という話が伝えられている。 というのは、参議院選挙前、つまり今月中(6月いっぱい)に、衆参両院の正副議長が立法府としての取りまとめ案を提示するとしてきたからだ。
となると、「女性皇族は結婚後も皇族として残ることができる」「旧皇族の男系男子を養子に迎えることができる」ということだけが、決まることになる。そして、その具体的な処遇については先送りされてしまう。
しかし、これは皇位継承問題の本筋ではなく、小手先だけの改正にすぎない。それでも、この案が取りまとめられると、どうなるだろうか? 女性天皇、女系天皇への道はほぼ閉ざされてしまうのは間違いない。具体的に言うと、国民の8割が望む愛子天皇は誕生せず、愛子さまは結婚後に皇籍降下せずに皇族として残ることだけが認められることになる。
■保守派の主張は“男尊女卑の国”を守ることに!
前回記事で、私は保守派が「男系男子による万世一系」にこだわるのはおかしい。男にしか継承されないY染色体を根拠にしても、それを科学的に証明できない。つまり、保守派はフィクションに過ぎない万世一系をフィクションとしてそのまま受け入れ、日本独特の皇室の伝統を守れと主張していると指摘した。
よって、女性天皇はもとより女系天皇も場合によっては認めるべきとし、愛子天皇を実現させることこそ、日本の伝統を守り、皇統をつなぐ最前の道ではないかと訴えた。
それに、そうすれば、女性の地位が著しく低い“男尊女卑の国”とされる日本のイメージは一新され、新しい時代が来ることで経済低迷からも脱せられる可能性があるとも述べた。
■国連勧告に反論しカネを差し止めた政府
ここで、思い起こすのは、昨年10月、女性への差別撤廃を目指す国連の委員会が、日本に対し、皇位を男系の男子のみが継承すると定めている皇室典範を改正するように勧告したことだ。
このことは、日本のイメージにとって大きなマイナスだったが、政府は皇室典範の規定は女性差別には当たらないと反論した。そうして、日本の国連への拠出金を委員会の活動に使わないように要請したのである。
この政府の対応はどうみても異常だ。日本の伝統に照らして反論するのはいいとしても、拠出金の不使用要求は行き過ぎではなかろうか。「カネを出しているのだから口を出すな」という態度は、先進国(?)とはとても言えない。
■男系男子天皇への「中継ぎ」は女性蔑視
日本の歴史には、8人の女性天皇が存在している。そのうち、奈良時代の第44代元正天皇を、先代がやはり女性の元明天皇だったことから、前回記事で私は「過去に女系天皇は存在した」「女系天皇と言えるのではないか」と述べた。しかし、これはやはり無理筋で、保守派から徹底して、“無知”と非難された。
元正天皇の父は天武天皇と持統天皇の子の草壁皇子。草壁皇子は天皇として即位をしていないとはいえ、元正天皇はその血を継いでいるので、立派な「男系」であるからだ。 ただ、元正天皇は史上初めて未婚のまま即位した女性天皇であり、草壁皇子の男系の血を守るために意図的に婚姻を回避させられたことは疑いようがない。
つまり、次の男系男子天皇への「中継ぎ」に過ぎなかったのである。これは古代だから当然だが、いま言えば間違いなく男尊女卑、女性蔑視であり、いまこの時代においても、この伝統を守るべきなのだろうか。
保守派には、「女性差別などしていない」とし、女性天皇を容認する人間もいる。しかし、女系だけは絶対に認めない。となると、もし女性天皇が誕生したとしても、生涯独身を貫くという“暗黙のプレッシャー”を受けることになる。それを乗り越えて結婚して子を授かったとしても、その子は男子女子に関わらず、皇位を継げない。
■女性天皇、女系天皇を認めようとした小泉政権
かつて、小泉純一郎内閣に設置された「皇室に関する有識者会議」は、女性天皇、女系天皇を容認する報告書を出した。 具体的には、「伝統的な男系継承を安定的に維持することは極めて困難で、女性天皇、女系天皇への道を開くことは不可欠」「皇位継承順位は天皇の直系子孫を優先し、男女を区別せず、年齢順にして長子優先とすべき」という内容だった。
また、現在、議論されている旧皇族男子の養子問題も、「旧皇族はすでに60年近く(当時)一般国民として過ごしており、これらの方々を皇族として受け入れることは、国民の理解と支持を得ることが難しい」とした。
この報告書に基づいて国会決議で皇室典範が改正されれば、当時3歳だった愛子さまに、将来の天皇となる道が開かれるはずだった。しかし、2006年9月に秋篠宮家に悠仁親王が誕生すると、すべては立ち消えになった。
有識者報告書を、保守派はいったんは受け入れていた。それが、悠仁親王誕生で一変した。となると、保守派は、日本の伝統を守るのが保守の本道であるなどと、本当に言えるのだろうか? 皇室を敬い、その伝統を守る気概が、本当にあるのだろうか?
■欧州の王室は性別に関係なく長子優先
伝統とは、時代の流れのなかで、常に書き換えられていくものだ。欧州の王室は、そうして継続し、国民の理解、敬意を得てきた。
その結果、欧州の王室の次代の国王は、ほぼ女性となった。これは、男子継承を改めて、性別に関係ない直系長子継承に変えたからだ。そうでないと、現在の男女平等社会では、王室の持続は不可能だ。
たとえば、オランダ王室は、1983年に法改正し、それまでの男子優先を廃止して性別に関係なく長子優先とした。ノルウェー王室、スウェーデン王室、ベルギー王室もそうである。
その結果、オランダでは、国王の弟が王位継承権を放棄し、国王夫妻の長女カタリナ=アマリア王女が、次期国王になることが決まった。カタリナ=アマリア王女は22歳と若く、国民に絶大な人気がある。オランダ王室は、日本の皇室と親交があり、王女は愛子さまと面識がある。
オランダでは国王の長女が王となるのに、日本では天皇の長女が天皇になれない。世界的に見て、これは異常ではないだろうか。
■皇位継承順位は決まっているので無理では?
愛子天皇待望論に釘を差すのが、すでに次期天皇は秋篠宮さま、その次は悠仁さまと決まっている、いまさら、皇位継承順位を変更することなどできるのか?という反論だ。 しかし、結論から言えば、それは可能だろう。なぜなら、皇位を正式に継ぐ皇太子が、現在、存在しないからだ。秋篠宮さまも悠仁さまも、皇位継承順位として1位、2位にあるということで、正式な意味での皇位継承者として決まっているわけではない。 2020年11月に秋篠宮さまの「立皇嗣の礼」が行われたが、これは皇位継承順位の第1位を確認する儀式である。この儀式によって、次期天皇が確定したとは言い切れないのだ。 したがって、早急に皇室典範の改正が行われ、「男系男子」が「直系長子」と改定されれば、敬宮愛子内親王が皇太子となり、正式に皇位を継ぐことが可能になる。
■皇室典範の改正で愛子天皇は誕生する
日本国憲法は、第1条で「天皇は日本国の象徴であり、国民統合の象徴」と定め、第2条で「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とある。
憲法には、男性優先の規定はない。したがって、まず、皇室典範の第1条の「男系男子」を「直系長子」に変え、それに伴って他の条文を改正すれば、愛子天皇は誕生する。ただし、その改正は早ければ早いほどいい。そうでないと問題が生じる。 たとえば、現在の国会審議のように、結論を先送りし続けると、次期天皇に秋篠宮さまが即位する日が訪れる。そして、皇統は傍系に移ることになる。
すると、それ以後に女性天皇を認める改正を行った場合、その次の天皇は秋篠宮家の長子の眞子さまは結婚して皇籍離脱されているので、次女の佳子さまということになる。もちろん、改正しなければ悠仁さまになる。
■華々しい報道により日本の伝統
いずれにせよ、国民が愛子天皇誕生を強く望むいまが、改正すべきときである。このタイミングを逃すと、日本に女性天皇は永遠に誕生せず、皇統はいずれ行き詰まる。もし、後継の悠仁天皇に男子が誕生しなかったら、それが現実化する。
愛子さまが皇太子になられる立太子の礼と、天皇即位式典は、内外に華々しく報道され、日本のイメージは大きく変わるだろう。愛子さまが、長い歴史のなかで9人目の女性天皇になられることで、日本が女神である天照大神を皇祖神とし、古代から女性を尊重していたということが広く世界に知れ渡る。
これこそが、本当に皇室の伝統を守ることではないだろうか? 男系だろうと、女系だろうと、皇統はつながっていく。
──────────────────────────────────────────── 山田順の「週刊:未来地図」 ― 経済は?ビジネスは?今後確実に起こる未来の歩き方。ときどき、取材裏話、スクープ、身辺雑記。 有料メルマガの購読、課金に関するお問い合わせは、 このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にして下さい までお願いいたします。 (その他のアドレスですと、お返事できない事がございます。御了承下さい) 配信中止、メールアドレスの変更はfoomiiのマイページから変更できます。 ログイン時に登録したID(メールアドレス)とパスワードが必要になります。 ──────────────────────────────────────────── |