[050]今年は「国民読書年」。しかし、いまさら紙の本を読ませる時代錯誤 |
2010年2月15日 今年2010年は「国民読書年」。そのせいか、書店や読書に関するニュースや記事がメディアに多く登場している。たとえば、読売新聞は社説(1月31日付)で、「国民読書年 本の魅力を再発見しよう」と書いた。 しかし、世間を見ると、まるで盛り上がっていない。 というのは、運動する側も伝える側も、読書を従来の「紙の本」でするものという固定観念から脱していないからだろう。「国民読書年」は、2008年6月に衆参両院で採択され、政官民が一体で読書の価値の見直しや意識の啓発を目指すことを誓ったもので、そのこと自体には問題はない。というか、とてもいいことだ。 しかし、それをキャンペーンするところ、方向が間違っていないだろうか。
たとえば、「袋田の滝」で有名な茨城県大子町は、2007年6月に「読書のまち」を宣言した。町は山に囲まれ、人口はわずか2万2000人。「読書を通じて心の豊かさを育てたい」と、保育所や幼稚園では読み聞かせ運動を、小中学校では朝の読書に取り組みはじめた。 またたとえば、和歌山県の山間の村、170人が暮らす日高川町の旧美山村にある「山の本屋さん」は、一人の主婦がいわばボランティア的に「子どもたちに本に親しんでもらうため」にやっている。この話題は、地域を活性化していきたい村役場にとっても大歓迎でテレビ(毎日放送)でも取り上げられた。 以上2例だけ書いたが、こういうことが、「国民読書年」にふさわしい話題として紹介されると、私はがっかりする。 話題としては、たしかに取り上げやすいと思う。しかし、これが本当に「国民読書年」にふさわしい話題だろうか?
田舎の町で、子どもの頃から紙の本を読み聞かせるなど、時代錯誤もはなはだしいのではないだろうか。読書をするなら、この時代、ケイタイやPCですべきだし、ましてネットが発達したいまは、できる限り早く子どもたちをネットに親しませるほうが先だ。 紙の本を読ませるより、ネットリテラシーを身に着けさせたほうが、子どもたちの将来にずっと役に立つ。
「国民読書年」といえば、「読書週間」や「本屋大賞」などというイベントも思い出される。しかし、これらも紙の本を中心に、書店をベースに行っている以上、やはり時代錯誤だろう。 とくに、書店員が選ぶ「本屋大賞」はどこかズレている。この賞は、書店員の投票で決まることになっているが、いまの書店員はほとんどがバイト店員で本など読んでいない。ましてカリスマ店員などほとんどいないのに、どうやって選んでいるのだろうと思ってしまう。少しでも本を売るために、キャンペーンとしてこんな賞をやっていると思うと、現実的でないだけに、本当に物悲しくなってくる。
以前、連載「メディアの未来」のなかで、図書館、とくにいまの日本の市町村にある、中小規模の図書館はいらないと書いた。それらはハコモノ行政の遺産で、いまや無用の長物と化し、利用者などいないからだ。それなのに、全国の市町村は税金で図書館を維持し、おまけに図書購入の予算まで計上している。即刻、やめるべきだろう。 なにしろ、いまや世界の名だたる図書館はネットで公開され、グーグルを使えば、何十万冊の貴重な古典、書籍にアクセスできる。パブリックドメインならネットでも、書籍リーダーでもただで読める。こんな時代だから、子どもたちには一刻も早く、そうしたアクセス方法と使い方を教えるべきだ。
本ばかりではなく、新聞週間というのも滑稽だ。新聞社は、NIE(Newspaper in Education =「エヌ・アイ・イー」)といって、「子どもに新聞を読ませる習慣を身につけさせる」運動を展開している。小学校で、新聞を読む時間をつくるよう積極的に支援している。しかし、いま紙の新聞なんか読んでいたら、子どもたちの将来は暗くなるだけだ。「日本の新聞は読むに値しない。子どもには有害だ」というのは、また別の話として、デジタル時代になったいま、新聞は少しも「新しく聞く」ものを提供してしくれない。新聞ニュースは古すぎる。ならば、子供たちには、デジタルでの生き方を早く教えるほうが先だ。 昔、ランプに代わって電球が点いて村や町が一気に明るくなったとき、人々は時代は変わったと感じたはずだ。それと同じで、いまは高速回線が全国くまなくはりめぐらされている。そんな時代に、紙文化にまだ固執していいのだろうか?日本は、いったいどうしてしまったのだろう? |
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