[051] 史上最悪の予算の成立とトヨタバッシングで、日本はメルトダウンに向かう |
2010年3月3日
とくに、日本の場合、もう本当にダメなのではと、本気で思うようになってきた。このまま民主党のノーテンキ政策が続くなら、財政破綻から国家のメルトダウンがやってくるのではないだろうか?
半分を借金でまかなう史上最悪の国家予算の成立
3月2日、民主党政権になって初の国家予算、一般会計ベースとしては過去最高の92兆2992億円が成立した。民主党政府は、「景気の確実な回復とデフレからの脱却をめざす」と喧伝しているが、ここまで総額を膨らませたうえ、国債依存度が予算のほぼ半分の44兆円というのだから、景気回復などできるはずがない。 戦後初めて当初予算段階から国債発行額が税収見通しを上回るような予算を、なぜ、平然と組むことができるのだろうか?これから使うお金のうち、半分を借金でまかなうなどというのは、一般家庭の家計では完全な財政破綻である。 公債依存度は、なんと、48.0%に達し、プライマリーバランスも23.7兆円の赤字だ。 マニュフェストにしばられ、「子ども手当」は6月から実施されるようだが、来年も出せるかどうかとなると、誰もイエスとは言えないだろう。なにしろ、今年度は、税収が2009年度当初比で8兆7070億円減の37兆3960億円に落ち込むのだ。当然、来年は、さらに悪化する。 民主党は以前、公務員の20%削減を提唱していたことがある。どの会社も、売上が落ち込み、収益が赤字となれば、当然、人員リストラまで踏み込まなければ生き残れない。だから、国もそれをやるのが当然なのに、政権を取ったら知らんふりである。そればかりか、財源なき福祉バラマキに走っている。
なぜ、民主党政権はトヨタを擁護しないのだろうか?
こんなバカげた予算を組んでいるさなか、トヨタのリコール問題が起こった。アメリカからの批判の集中砲火に、ついにトヨタは屈し、豊田章男社長は米議会で謝罪する羽目になった。さらに、中国まで行き、同じように謝罪した。 トヨタといえば、いまや日本のアイコンである。そのトヨタが米中両国で謝らなければいけないということは、日本人全体が世界に向けて謝っているのと同じだ。とすれば、民主党政権は、もっと事態を重視し、できればトヨタを擁護すべきではないのか。 私が本当に驚いたのは、前原国交相が、 アメリカの尻馬に乗って「顧客目線が欠けている」(2月5日)と発言したことだ。正確な調査もしてないのに、なぜ、こんな発言をしてしまうのか?これでは、日本政府もトヨタを擁護しないと表明したようなもので、以降、さらに批判はエスカレートした。この人は、国益意識も国際感覚も欠けているとしか言いようがない。 あまつさえ、この人は、渡米前の豊田章男社長に対して、「来週訪米する際にしっかり説明責任を果たしてきてほしい」と述べている。
アメリカでも、「トヨタの突然加速する問題の比率は他メーカーと同程度」という調査があるにもかかわらず、そんな声は無視されている。 トヨタのリコール問題は、もはやただの安全性の問題ではない。ポイントは、破綻したGMの株主はいまやアメリカ政府だということだ。アメリカの自動車産業は、現在、国営企業なのである。トヨタの窮地につけ込み、GMでは買い替えセールを実施している。これを見ていて、アメリカは本当に落ちぶれたと思うのは私だけではないと思う。
日本はいま、増税などしたら、財政は持つかもしれないが、経済は壊滅する。ということは、国民生活も破綻するということだ。国債はかたちを変えた税金(将来、税金で償還する)だから、いまこの時点で、日本は重税国家なのであり、国債発行額を消費税に換算すれば、すでに20%は軽くオーバーしているだろう。 経済がわからない菅財務相は仕方ないとしても、亀井静香金融相は救いがたい。この人は、3月2日の会見で、2011年度予算での財源確保に関連して、なんと「無利子非課税の国債発行なども前向きに検討するべきだ」と述べたからだ。 さらに、財政法で原則禁止されている日銀による国債引き受けについても、現下の財政難では十分に検討する余地があるとあらためて強調した。 そんなことをすれば、どうなるか、この人は本当にわかっているのだろうか? ただ、亀井金融相は、昔から同じことを言い、郵政民営化も大反対だったから、この点では、ほかの民主党閣僚がころころと言うことを変えるのに比べて、ぶれていない。しかし、そのぶれのなさの方向が間違っているだけに恐ろしい。亀井金融相は、さらに「(国債は)日本では民間が消化できる余力はまだあるが、日銀も協力してやれば長期金利を押し上げることはない」と指摘。そのうえで「日銀と政府が経済対策で車の両輪のように機能していくよう検討すべきだ」と述べた。 国債を中央銀行が直接引き受けるということは、国にお金を刷って渡すということだ。お金を刷りまくれば、当然、インフレになり、経済は壊滅の危機に瀕する。
日立がイギリスで受注した高速新幹線「CTRL」も、先ごろ先送りになることがわかった。イギリスは新幹線代も払えそうもないのだ。 2月25日、あのジム・ロジャーズが「ポンドは数週間以内に崩壊する」として、世界の金融界は大騒ぎになった。この発言はすぐに取り消されたが、投資家はいっせいに英国債を売りに出している。 先週までバンクーバー五輪があったから、トヨタや国家予算などの問題はあまり注目されないですんだ。しかし、今後を考えると、より重大なのは、こちらのほうだ。参議院選挙をにらんで、小沢一郎が幹事長を辞任するかどうか?普天間移転問題が5月に決着できるかどうか?そんなことばかり、マスメディアは注目していくだろうが、それよりも重要なことが、いま世界規模で起こっている。米ドルの凋落と、アメリカの世界覇権の衰退だ。
バーナンキFRB議長が米議会証言で政府と議会に警告
そのため、ダウも上昇し、市場は「まだ持つ」というムードになった。 しかし、すでにアメリカの財政は破綻状態にあり、これ以上ドルを刷り続けて景気を支えれば、いずれドルは崩壊しかねない。問題は、ドルの凋落から来るアメリカの覇権喪失がいつになるかということだけだ。それが、いますぐなのか?それとも、数年、あるいは10年ほど先なのかということだけだ。 バーナンキFRB議長は、それがわかっている。だから、アメリカ人として、政府の債務拡大が長期金利の上昇を通じて米経済を圧迫する可能性があると、議会証言で政府に警告した。
これが、まともなエコノミストの見解である。野放図に紙幣を刷ればどうなるか、彼はわかっている。だから、議会と政府に赤字を減らす努力をしてくれと釘を刺したのだ。 しかし、日本の政治家も官僚も、これとは逆のことをやろうとしている。亀井金融相は、「もっと金を刷れ」と言い、財務省は増税で財政危機を乗り越えようというのだ。 そして、民主党政権は、まったくわけがわからないまま、史上最高の赤字予算を成立させてしまった。 いま、私たちは、ここ数世紀続いた英米による世界支配体制の崩壊を目の当たりにしている。それに、日本も付き合う気なら、それも仕方ないかもしれない。しかし、そんな認識もなしにズルズルと自滅していくのは、1人の日本人として納得がいかない。 このままでは、日本が先に財政メルトダウンに陥る可能性が大きい。 |
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