[117] AIJ年金消失の不思議、エルピーダメモリー倒産の真相、南京虐殺はなかった発言……耳を疑うニュースばかり |
2012年 3月 02日(金曜日) 03:25 |
ここのところ、耳を疑うようなニュースが続いている。 一つは、AIJという投資顧問会社が運用していたとされる年金資金が消失してしまったという事件だ。単に複利預金だけでも年率2%ぐらいは確保できるのに、ほとんどを失うというのは、いったいどんな運用をしていたのか? まったく、怪奇としか言いようがない。 ←朝日新聞より転載 そもそも、年金側が、運用の期待リターンを5.5%に設定しているということ自体がおかしい。いまでは優良ヘッジファンドすら、5%期待できればいいほうだろう。それに、年金運用にハイリスク・ハイリターン型のヘッジファンドを選ぶほうが間違っている。報道どおり、AIJが本当にヘッジファンドで運用をしていたなら、オフショアなら、リターンは低くともロウリスクで確実なファンドはいっぱいあったはずだ。
サラリーマン運用担当者が丸投げした?
5.5%なんて目標を設定されたら、サラリーマン運用担当者は頭を抱えてしまう。この時代、金融商品をどう組み合わせても無理だろう。そこに、「10%は確実。もっと高く運用できます」という会社が現れたので、中身なんか調べずに丸投げしてしまったに違いない。それにしても、AIJはいったいどんなヘッジファンドで運用していたのだろう? まったく理解できない。 ヘッジファンドは、市場とは連動しないで、絶対リターンを追求するのが使命である。だから、リーマンショックのような事態が起こり、世界経済・金融市場が低迷しても、株なら売り持ちを持つなどして運用すればパフォーマンスをプラスにすることは可能だ。 しかし、株を売り持ちにすることは、景気が回復して株が反転上昇すれば、リターンはマイナスになる。常に市場の動きを100%予想できないと、AIJが言うような毎年10%以上のリターンなどありえない。 仮に予想が全部的中して毎10%リターンを達成すれば、預け資産は5年で1.61倍、10年で2.60倍になる。
全投資顧問会社を監査したら、第二、第三のAIJが出る
金融庁は、この事件をきっかけに、規制強化に乗り出すのは間違いない。厚生年金基金などが運用を投資顧問会社に委託する場合、資産そのものは信託銀行が預かる。そのうえで、投資顧問会社の指示通り売買するケースが多いという。 ところが、多くの顧問会社が外部監査を受けていない。また、金融庁に提出する事業報告書に、運用利回りなどの記載もないという。 こうしたことがすべて義務づけられ、全投資顧問会社を監査したら、第二、第三のAIJが出る可能性は高い。
倒産しても提携先を探すエルピーダメモリー
エルピーダメモリーの突然の倒産にも驚いた。倒産状態なのはわかっていたが、このタイミングで投げ出すとは思わなかった。しかも、まだ提携先を探している。しかし、台湾の南亜科技も米マイクロンも相手にしないないだろう。メディアも国も、いまだに日本の半導体産業を守らなければいけないと思っている。信じがたいことだ。 1+1=2ではない。しかも1ではなく-1だから、-1+-1=-2となって、弱者連合できて、さらに業績が悪化することになる。なぜ、それがわからないのだろうか?
↑湯之上隆氏「現代ビジネス」記事より
技術過剰のうえ世界一高いDRAMをつくり続けた
エルピーダメモリーがいかに迷走してきたかは、『日本半導体敗戦』の著者・湯之上隆氏がもっともよく知っている。『日本半導体敗戦』は、私が光文社時代最後に編集した本だ。あの本をきっかけに、いまも交流を続けている。 彼は2004年に、坂本社長の許可のもと、2度に渡るエルピーダの技術者へのインタビューを行い、エルピーダが世界一の過剰技術で世界一の過剰品質のDRAMをつくっていることを明らかにした。そこで、このビジネスモデルを変えるべきと提言したが、この報告は社内では無視された。 また、2008年には、「DRAM1ドル時代が来る」というレポートを出したが、坂本社長は「DRAM1ドル時代?あり得ない」と回答したという。
日本企業の誤解:技術とはいいものをつくることではない
つまり、エルピーダが潰れたのは、坂本社長が会見で述べ、マスコミもそうだと書いたような「歴史的な円高、東日本大震災、タイの洪水」が原因ではない。エルピーダは、DRAMを安くつくる技術でサムスンに負けたのだ。これは技術の敗北である。技術とはいいものをつくるということでない。売れるものを安くつくるということだ。 2000年に設立されて以来、エルピーダの純利益が黒字になったのは4回しかない。そのうち、まともに利益を上げたのは2007年のたった1回だ。累積では約1500億円の赤字。これで潰れないほうがおかしい。 技術の敗戦は、エルピーダだけではない。テレビ事業で大赤字を計上したソニー、シャープ、パナソニック、どこも安くつくる技術で負け、さらにネットテレビ時代が来るという将来投資でも読みを誤った。あと2、3年で、日本製テレビ自体が国際市場から消える可能性がある。「技術とはいいものをつくること」と思っている企業は、いずれエルピーダと同じ運命をたどるだろう。
日本の電器産業が消滅過程に入ったのに株価上昇
現在、日立、東芝、ソニーが、中小パネルで事業統合し「ジャパンデイスプレイ」を設立しようとしている。また、ルネサスが、富士通、パナソニックと事業統合しようという報道もあるが、すべて負け組連合で、将来展望はない。こうしたことに、資金を投入するのはドブにお金を捨てるのと同じだ。投資家なら絶対しない。 それなのに、いま日本の株価は上がっている。日本だけでなく、世界で株価が上がりだした。これは、世界中が金融緩和した影響で、実体経済の裏付けのない株価上昇だ。つまりバブルに突き進んでいる。現在、世界全体のGDPが約63兆ドルとされ、金融緩和で溢れたマネーはその約3.5倍の210兆ドルはあるという。このマネーが世界の株式市場に流れ込んでいる。
政治家は心の中で思っていることを言ってはいけない
三番目の驚きというか、なんでそんなことにこだわるのか?というのが、河村たかし名古屋市長の「いわゆる南京事件というものはなかったのではないか」発言だ。歴史家や学者がこういう発言をするのはいい。しかし、政治家はそう思っていても発言してはいけない。そんなことは心の中にしまっておけばいいのだ。 しかも、名古屋市は南京市と姉妹都市で、向こうから親善にやってきた人間のメンツを潰した。中国はメンツ社会だ。 河村さんというのは、正直すぎる。発言を撤回しなかったので、とうとう、南京市で予定されていた日本政府主催の日中交流行事が延期になった。この行事は、上海の日本総領事館と南京市の政府系国際交流団体が主催して、今月9日から11日まで開かれる予定だった「南京ジャパンウィーク」で、2007年に始まり、毎年行われてきた。
南京大虐殺記念館で出会った小学生たち
これまで私は何度か南京に行った。中国の都会のなかでも、南京は独特な雰囲気のある街で、古都であり、文化も伝統もある。昔は金陵(Jinling)と呼ばれ、李白もここで「金陵の酒肆にて留別す」という有名な詩を詠んでいる。 私が何度か南京に行ったのは、娘がジョンズホプキンズSAIS大学院の留学生として南京大学にいたためで、そこに来ている世界の留学生や中国人学生たちとよく街に飲みに出かけたりしたので、この街に対してはとくに愛着がある。 ←南京大虐殺記念館 だから、河村市長の発言は残念だ。南京大虐殺記念館にも足を運んだが、入口にある平和の鐘に手を合わせ、ガラス張りの向こうに展示された発掘人骨も、レプリカと知りつつ、やはり手を合わせた。 ここは、いまや観光スポットなのだから、そういうことを観光客として自然に行った。あえて、日本人としての思いを口にしたり、行動に出したりしても無意味だ。ただ、近郊の小学生が、先生に連れられて見学に来ていて、その先生が「日本人は、街の人をここで皆殺しにしました」と説明しているのを聞くのはつらかった。
宗教、愛国心、そういうものに縛られるのはよくない
そこにお寺さんがあるから仏像に手を合わせ、教会があるから神に祈りを捧げる。これまで、私はそういうことを繰り返してきた。別にこの行動になにか深い理由があるわけではない。ただ、なにかを信じる、信じないという二者択一的な態度は、科学的なこと以外は、愚かなことだと、私は思ってきた。 とくに宗教、そして国家主義のような愛国心。そういうものにこだわればこだわるほど、自由は奪われ、行動は狭くなり、豊かな人生は送れない。そう思うと、すべてを受け入れて、宗教なら全宗教を信じるか、尊重してしまったほうがいい。文化も同じだ。 仏教もキリスト教も素晴らしい。日本の歴史も中国の歴史も豊かな人間の営みと伝統に満ちている。どちらも素晴らしい。それでいいではないだろうか。悲しみや憎しみは、心の中にしまっておく。そうすべきだ。
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