[158] 既存出版社の時代は終わるのか? アメリカではセルフパブリッシング(自主出版)が全盛に! |
2013年 4月 26日(金曜日) 02:05 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
電子書籍市場が拡大を続けているアメリカで、画期的なことが起こり始めた。電子書籍が登場して以来言われてきた「出版社が中抜きされる」現象が、最近、どんどん現実化しているのだ。つまり、セルフパブリッシング(電子自費出版あるいは電子自主出版)が、活況を呈し、ランキングの上位を独占するようになっているのである。 電子書籍の専門サイト『Digital Book World』に載った記事「Self-Published Ebooks Are Nos. 1 and 2 Best-Sellers, Average Price Drops to All-Time Low」(by Jeremy Greenfield)によると、4月第3週のランキング第1位と第2位は、自主出版作品が占めた。ともに価格は0.99ドル。 自主出版作品が1位に入ったのは今年に入って 4回目。自主出版作品は、ほとんどが0.99ドルとう激安価格でランクインを狙ってくるため、その影響で大手商業出版社のベストセラー作品も価格を下げざるをえなくなる。こうして、ベストセラー作品の価格は7ドルを割り込み6.93ドルまで下がってしまった。ちなみに、過去の最低は7.21ドルだった。 1位『Damaged』と2位『The Bet』 Ebook Prices See Sharp Drop Driven in part by $0.99 titles capturing the top-two spots on the ebook best-seller list, the average price of a best-selling ebook hit a new low this week of $6.93, down from $7.43 last week and the previous all-time low of $7.21 two weeks ago.
Kindleベストセラーのランクに入ったのを知って価格を0.99ドルに引き下げ
以下が、そのランキング(トップ25位)だが、こうした自主出版のヒット作は、圧倒的に女流ロマンスが占めている。 第1位になった『Damaged』の作者H.M.ウォードは、4月2日に$3.99で発売して以来15万部以上を売ってきたが、Kindleベストセラーのランクに入ったのを知って、価格を0.99ドルに引き下げたと語っている。ウォードの場合、過去の25作品すべてを自主出版で出してきて、最近はエージェントと契約し海外出版権や映画化権の販売に乗り出したという。また、第2位レイチェル・ヴァン・ダイクンの 『The Bet』も10日間で8万5000部を売ったという。 Top 25 Ebook Best-Sellers See all Top 25 Ebook Best-Sellers ...
既存出版社が遅かれ早かれ、突然、無用な存在になる日がやって来る
この記事で紹介されているコンサルタントのマイク・シャツキン氏は、最近「商業出版社時代の終焉」というエッセイ(Idea Logical Company, 3/19)を書いている。そうして、今回のランキングについては、以下のように述べている。 「小出版者や自主出版者の商業的成功はさらに拡大するだろう。いい本を見分けるゲートキーパーとしての既存出版社の役割はこれからも続くが、だんだんに薄れていく。そうして、遅かれ早かれ、突然、無用な存在になる日がやって来るだろう。今年の年末のトップ10の自主出版タイトルの数は、3点か6点か。少なくとも2点以上になることは確かだ」 こうした自主出版作家は、電子デビューでヒットを飛ばし、その後、それに目をつけたエージェントや大手出版社によって、紙デビューも果たす。そして、さらに作品を売り伸ばしていくというパターンができあがりつつある。 したがって、紙市場を支配する既存出版社にとって、いまのところ電子自主出版作家は「宝の山」かもしれない。しかし、いずれ、紙と電子の市場が拮抗、あるいは逆転したとき、既存出版社は不要になってしまう可能性が強い。
日本の電子書籍市場でもセルフパブリッシングが同じように進展中
アメリカと比べたら、まったく異なる状況にある日本の電子書籍市場だが、セルフパブリッシングに関しては、同じように進展しつつある。 昨年、アマゾンの「Kindle Store」の日本でオープンで、「ベスト・オブ・2012」小説・文芸部門1位を獲得したのは、『Gene Mapper』(著:藤井太洋)だった。この本は、著者の藤井氏が執筆から電子書籍制作、表紙デザイン、広告まですべて1人で行ったことで、大きな話題となった。 そして、この4月24日、既存出版社の早川書房から、『Gene Mapper -full build-』(文体・構成を一新して分量を1.8倍以上にした改稿版)が発売された(ただ、価格が735円になったことは、販売には大きなネックと思われる)。
自主出版本がランキング上位を埋め尽くす日が来るかもしれない
現在、「Kindle Store」や「iBookstore」を見ると、紙の既存出版社が出した電子書籍のなかに混ざって、100円を中心価格帯とした自主出版本、既存出版社以外のアプリ制作会社の制作本が大健闘している。既存出版社の新刊電子書籍は漫画、ラノベをのぞいては、価格がほとんど500円を超えるため、あまり売れていない。 こうした状況で日本の電子書籍市場が拡大していくとなると、アメリカ(英語圏)のように自主出版本がランキング上位を埋め尽くす日が来るかもしれない。ラノベや漫画は、その可能性が高いと思われるが、どうだろうか? |