[021]なぜGWがあるのか? なぜみないっせいに休まねばならないのか? 印刷

2009年5月13日

成田空港は大混雑で、白マスク集団でいっぱい


 GW中から書こうと思い、時間がとれずに書けなかったことを書く。それは、なぜ、GWがあり、国民全員がほぼいっせいに休まなければならないのか?ということだ。
 もっと言うと、なぜ、私たちは週日に働き、土日と決められた休日に休まなければならないのか? ということだ。
 このことが、私は昔から疑問であり、大いに不満だった。

 今年のGWは高速代が休日1000円という「経済対策」(?)が実施されたので、高速道路は大渋滞となった。また、スワイン・フル(豚インフルエンザ)の世界的な蔓延にもかかわらず、円高の追い風で海外旅行客が増えたので、成田空港はいつも以上に混雑した。
 5月1日に娘がシンガポールの友人のところに出かけたので、家内と成田まで出かけたが、空港は白マスク集団でいっぱい。なにか異様な雰囲気だった。


みんなが同じように休むことでかえってストレスが溜まる


 いまの時代は、インターネットによるネットワーク社会が進展したおかげで、ネットワークに接続できる環境がある限り、いつでもどこでも仕事ができる。また、日本が休日でもアメリカ、ヨーロッパ、中国は休日でないこともある。もちろん、昼夜も違う。地球は24時間動いているわけで、グローバル化したいまの世界では、1つの国の国民がある特定の日に丸ごと休むことは、経済効率からいっても、本当に非効率だ。

 私たちは、子供の頃からカレンダーどおりに生きてきたので、ふつうの暮らしをしている限り、こうしたことに気づかない。今年のGWはとくに長かったから、単純に「たくさん休める」と喜ぶ。
 そこで、いざ行楽に出かけてみると、どこもかしこも人でいっぱい。しかも、普段の日よりも料金が高く、サービスも悪い。海外旅行にしても、オフシーズンなら安い航空券は倍か、それ以上に跳ね上がる。ホテル代も高い。結局、休日が休日にならないばかりか、普段以上にストレスを抱え込むことになる。

 これなら、休みなどないほうがいい。というより、誰もが休む日ではなく、自分の意志でもっと自由に休めたらどんなにいいだろうと思う。
 ところが、日本社会ではこれができない。なにしろ、上司が残業していると部下が帰れないという暗黙の掟がまだある国だから、「今日はデートなのでお先に失礼します」と言ったら白い目で見られる。
 まして、「明日の仕事を片付けてしまったので、明日は休みます」なんて言えないだろう。
 
 この結果、観光産業、レジャー産業には、「かきいれ時」というもができる。日本では、年末年始、GW、お盆休みという3大「かきいれ時」が存在する。
 とくに年末・年始の人気温泉地は、かなり前から予約しないと取れない。年老いた母を連れて行こうと何回かトライしたが、いつも失敗した。また、年末年始ばかりか、夏のお盆休みの海外旅行チケットも、とくにハワイなどは半年前からでも取れず、おまけにバカ高い。


ハワイでよく見かけた子連れパパの哀しい休日


 私は幸いメディアの仕事をしてきたので、いつもズラしてハワイに行っていた。家内と娘は6月からハワイに行き、娘は現地の学校のサマーセッションに通っていたので、それが終わる頃に休暇を取って、毎年のように家族がいるハワイに行った。それは、たいてい7月の終わりか8月の初めだった。
 娘がハイスクールを卒業するまでだったから、もう10年近く前になるが、ホノルル空港もカラカウア通りもすいていた。

 ところが、8月も2週目になると、日本人観光客がどっと増える。子連れハワイが人気になったせいか、目立つのは小さな子供を連れた若いカップル。そういうカップルといろいろな所で出会った。よく見かけたのは、バス停。たいてい、お父さんが泣く子供をあやし、そのそばでお母さんは地図を広げて悩んでいた。もちろん、逆パターンもあった。

 それで、家内と話しかけ、何番のバスに乗り、どこで降りればいいのかを教えてあげると、みんな喜んでくれた。
「お子さん、何歳? 大変ですね」なんて話しかけ、「どちらから?」などと会話が始まると、どのお父さんもこぼすのが、飛行機もハワイも大混雑していること。せっかく休みを取り、普段より高いお金を払って来たのに、本当に疲れるだけだということだった。
 それで、「ほかの日に休暇が取れないんですか?」と聞くと、たいてい「いや、やっぱり無理ですよ」という答えが返ってきた。
 子供をおんぶし、汗だくになりながら、混んでいるバスに乗り込む姿を見ていると、本当に日本のサラリーマンは哀れだと思った。


先進国でも生産性が低い原因は休日の取り方にある


 厚生労働省の「平成20年就労条件総合調査」によると、2008年の年間休日数の企業平均は106.3日。最近は増加傾向となっているが、その8割以上が土日であり、残りは国民の休日だから、サラリーマンが自由に取れる休日はわずかしかない。

 一般的に、フランス人を筆頭にしてEU諸国の人々は、連続4週間程度の長期休暇を取っている。アメリカ人にしても、夏は平気で3週間ほど休む。もちろん、職場によって違うが、ローテーションを決めれば、日本でも長期期休暇の取得は難しいことではないと思う。

 基本的に、日本で休日とされるのは、次の3種類だ。

1. 日曜日及び土曜日
2. 国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日
3. 12月29日から翌年の1月3日までの日

 これは、法律で定められているが、別に、全員が全員、同じ日に休まなければならないという決まりはない。
 労働基準法では、使用者は労働者に対して、少なくとも週に1回の休日を与えなければならない(法定休日)としているが、法定休日を超えた日数の休日を与えることになんの問題もない。そればかりか、祝日法で定められた休日や一般的な休日(土・日曜日、お盆、年末年始など)と必ずしも一致する必要もない。

 それなのに、なぜ、もっと自由に効率よく休むという考え方が、日本ではないのだろうか? 人と同じときに働き、同じように休む。これでは、ストレスも溜まるし、生産性も上がらない。日本の生産性が先進国でも最低の部類に属するのも、こうしたことが原因ではないだろうか?


お金をかけなくても発想を変えるだけで経済対策はできる


 もし、みんながお互いに話し合い、仕事上の支障のないように休みを取り合えば、日本はもっと豊かな国になるはずだ。「3大かきいれ時」以外のときも、行楽地は賑わうし、なにより値段もやすく、ゆったりと休暇を楽しめる。それこそ、サラリーマンはリフレッシュできるし、観光産業、レジャー産業も、1年の稼ぎをその期間に集中してあげる必要もない。

 たとえば、これも昔(いまもだろう)だが、年末年始の人気スキー場は満員電車並みの混雑だった。「私をスキーに連れって」と行ってみても、自由に滑べれない。リフトは、何十分も待たされた。
 ところが、もっとも雪が降りスキーが楽しめる1月後半から2月のウイークデーになると、どこもガラガラ。リフトを動かすだけで、赤字になるという状態だった。
 つまり、このガラガラで売り上げが上がらないツケは、みんな土日や年末年始の客に回されるというわけだ。

 もし、みんながみんな同じ日に休むことをしなければ、こんなことは起こらないし、これを是正するだけで、経済も上向くだろう。大不況で、週末と「3大かきいれ時」以外、客足がさっぱりになった観光地も多い。こうしたところにも、客足が戻るだろう。
 これは、何十兆円も使う経済対策よりずっと効果がある。

 同じ発想で、なぜ、私は地下鉄を24時間運転にしないのだろうかと、いつも思ってきた。東京はもはや24時間都市なのだから、深夜も働いている人間はたくさんいる。コンビニが24時間営業しているのに、交通だけ深夜はストップしてしまうというのは、経済効率が本当に悪い。
 その結果、カラオケタクシーのようなバカげた公費の無駄遣いも起こる。
 このように、発想を変えシステムを変えるだけで、莫大な税金を投入するよりも効果的な経済対策はいくらでもある。

 経済の基本は、暮らしをより便利に快適にすることだ。それは、お金だけでできるものではない。


明治の文明開花で欧米式のカレンダーを導入


 ここで歴史を調べてみると、江戸時代までの日本人は、暦にしたがって、盆や正月、祭礼の日などだけに仕事を休んでいただけだという。そもそも、休日という概念自体が存在しななかったという。
 それはそうだろう。日本はキリスト教文化ではないのだから、日曜日という休日自体がない。

 ところが、明治になって文明開花となり、1876年(明治9年)に、欧米と同じ仕組み(カレンダー)を導入し、土曜日の午後と日曜日の終日を休日とするようになった。土日が完全な休日となる週休2日制になったのは、1980年代からで、振替休日制度もこの頃から始まった。そして、祝日が土日に連動するハッピーマンデー制度ができたのは、ついこの前、2000年のことだ。

 いまや世界中が週7日制で土日の休みが当たり前になったが、昔に戻れば、日本人はもっと自由に暮らしていたのではないだろうか?
 これだけ、ライフスタイルが多様化した時代に、労働スタイルだけが画一的なのは、納得できない。知恵を絞ればいくらでも改善できるのに、単なる慣習に縛られ、誰もが同じように働き、休む人生のどこが面白いのだろう。


中国にもゴールデンウィーク(「黄金周」)がある


 ちなみに、GWにパックツアーで海外に行くと、現地のガイドが「ゴールデンウィークがあるのは日本だけ。みんさん、ようこそいらっしゃいました」などと挨拶する。それで、昔、「それは間違っている。中国にもゴールデンウィークはありますよ」と言ったら、ものすごくイヤな顔をされたことがあった。

 中国のGWは、メイデー(5月1日)から始まる1週間。日本と同じく「黄金周」(「周」は「週」の簡体字)と書く。春節(旧正月)の1週間休みも国慶節(10月1日)の1週間休みも、こう呼ぶことがある。
 「黄金周」が年に3回あるなんて、日本よりいいと思っていたら、政府の意向で2008年度以降は3連休に短縮されてしまった。

 いずれにせよ、日本は休みが少ないうえ、それが取りにくい。世界不況で、いくら生産しても在庫が積み上がる時代だからこそ、休日の取り方を考え直してみたらどうかと思う。