最後の女性差別国家[001]低賃金労働者 印刷

■日本女性ほど「使いやすい低賃金労働者」はいない  


「男女雇用均等法」は当初、努力義務に過ぎなかった


 日本女性の平均賃金(average wage)は、世界的に見ると、いまも驚くほど低い。
 しかし、このことを指摘して、この状態をなんとか改善すべきというような意見は、どこからも聞こえてこない。経済界はもとより、マスコミも、また、働く女性たち自身からも、そんな声は上がってこない。

 私はこの状況を、前々から、なぜなのだろうか?と、ずっと思ってきた。
 
 日本で男女雇用機会均等法ができたのは、もう20年以上前のことだ。これは、1979年に国際連合で採択され、日本が1985年に批准した「女性差別撤廃条約」の条件を国内で整備するためのつくられた法律だった。


 
 したがって、当時の日本政府は、「勤労婦人福祉法」(昭和47年法律113号)の改正法として、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」(昭和60年法律45号)という法律つくって公布した。これが、いわゆる「男女雇用機会均等法」(略して「均等法」)である。

 ところが、この法律は、「採用・昇進等での男女の機会均等は事業主の努力義務」としたので、職場における男女の平等は有名無実に過ぎなかった。

改正は続いているが、差別もまた続いている


 1997年になり、均等法は、やっと改正され、1999年に改正法が施行された。
 雇用上の募集・採用、配置・昇進・教育訓練、福利厚生(ただし厚生労働省令で定める福利厚生措置に限る)、定年・退職・解雇採用、昇進、教育訓練、退職など、あらゆる雇用管理に関して男女の差別的取り扱いの禁止が、はじめて定められたのである。
 さらに、当時問題化していた「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)も、雇用主が配慮することが決まった。

 そして、2006年、均等法はさらに改正され、2007年に施行された。この改正のポイントは、間接差別の禁止や、妊娠を理由とした職種、配置転換などの禁止だった。
 つまり、⑴募集、採用で仕事と関係ない身長や体重⑵総合職の募集で全国転勤⑶昇進時の転勤—を要件にすることが、はっきりと禁止されたのである。

 しかし、では、20年前と比べて、日本の職場での女性の地位は向上しただろうか? また、賃金は男と同じようなレベルになっただろうか?

 その答えはノーである。一部の大企業、先進企業を除いて、男女間の労働格差は、じつはいまも昔と変わりない。

女性の非正社員化に拍車がかかっただけ

 たとえば、昔は隠然と行われていた「妊娠、出産を理由とした解雇」などは、なくなった。しかし、その代わりに、職場には正社員女性がいなくなり、派遣やパートなど非正社員女性が増えて、賃金でいえば、男女間の格差はいっこうに平等にはなっていない。

 均等法が改正されて以降の女性労働の特徴は、非正社員化に拍車がかかったことだ。

 労働力調査によると、女性労働者の約50%が、パートタイム労働者や有期契約労働者、派遣労働者など契約形態が正社員とは異なる非正社員として働いている。
 そして、パートのなかには、フルタイマーと同じ仕事をさせられている女性は多い。銀行などはとくにそうだ。女性労働白書によれば、1999年からは、全就職女性の5割以上が、パートタイマーとして就職している。

 バブル崩壊以来、激しいグローバル化の波にさらされ、日本企業は、従来の雇用を維持できなくなくなった。冷戦終結後、中国やインド、東欧などの安い労働力が市場に開放されると、先進国の高賃金労働者は企業の重荷になった。

 そこで、日本でも派遣労働法などができ、正社員から非正社員化が進んだ。この波をモロに被ったのが、女性たちだ。OL貴族などという言葉があったが、それは、自宅通勤の優良企業正社員OLだけの話で、多くの女性は、パート、派遣として働いてきた。

 つまり、日本の「失われた10年」を、底辺から支えたのは、低賃金で働く日本の女性たちだった。