G1予想[012]第76回日本ダービー(5月31日) 印刷
5月24日(日)記

またまたアントニオバローズ(角田)から馬連総流し!


 オークスが終わって、ブエナビスタの鼻差の優勝の余韻が残るなかで、これを書いている。本当に危なかったが、予想通りブエナビスタが勝った。最強の牝馬ダイワスカーレットが引退したら、すぐにこんな強い牝馬が現れるのだから、競馬はおもしろい。

 さて、ダービーとなると、思い出すことが山ほどある。なかでも、いちばん印象に残っているのが、ヒカルイマイが勝った1971年のダービーだ。ただし、思い出すのは、このとき一番人気で、なんと17着に負けたダコタのほうである。
 なぜ、ダコタを思い出すのかといえば、その前年から競馬に夢中になり、「来年のダービー馬はダコタだ」と、早くから注目していたこと。それに、受験勉強より競馬研究ばかりしていたため、この年、大学受験に失敗したからだ。

 この年のNHK杯を勝ったダコタには、どうしてもダービーを勝ってほしいと思っていた。ずっと注目してきたダコタに、受験に失敗した自分の暗い気分を吹き飛ばしてほしかったからだろう。
 だから、レース前から胸に熱いものがあった。ただ、ダコタの騎手・嶋田功は、2年前のダービーで1番人気のタカツバキで落馬していたので、いやな予感もしていた。

 スタートしてからのダコタは、馬群のなかを無事に走っていた。向こう正面では「中団につけています」との実況どおり、馬群のほぼ真ん中にいた。そして、3コーナーを過ぎたころには、逃げるハーバーロイヤルから数えて10番手ぐらいのところまで来た。4角10番手以内は、当時、ダービーポジションと言われていたから、これなら直線必ず伸びてくると思った。

 しかし、伸びたのは、28頭立ての27番手から一気に追い込んだヒカルイマイだった。ダコタは、直線まったく伸びず、馬群に沈んでいった。「ダービーを勝つには4角10番手以内」をまったく無視して、ヒカルイマイは、当時23歳の田島良が、最後方からまっしぐらに追い込んできた。

 レースが終わって、しばらく呆然とした。当分、競馬をやめようと思った。前年秋から、受験勉強の合間に、スポーツ紙の競馬記事をスクラップブックに貼ってはメモをつけていた。毎週、『週刊競馬報知』を買って、馬柱欄を切り抜き、これはと思った馬の記録をスクラップしてきた。
 ダコタは、そのなかでも、いちばん書き込みが多い馬だった。

 このダービー後、スポーツ紙も『週刊競馬報知』も競馬新聞も買わなくなった。競馬を始めたのは、叔父がしていたからだが、始めると面白くて、毎週のレースが気になった。競馬を知らなかったら、朝、スポーツ新聞を買うこともなかっただろう。
 ともかく、いまは浪人生の身。競馬をするなどおこがましい。大学に入ってから、バイトをしながらまたやればいいと思って、翌週から競馬をやめた。

 タカツバキ、ダコタと1番人気を裏切った嶋田功がダービーを勝つのは、この2年後、タケホープでだった。もちろん、このときの断然の一番人気は、ハイセイコー。大学生になっていた私は、ハイセイコーの出現で、また競馬に夢中になっていた。

 いずれにせよ、最近より、20歳前後に見た競馬のほうが鮮やかに心に刻まれている。大学生は馬券を買ってはいけないのに、バイト代をもらうと競馬につぎ込んでいた。大学時代は、競馬と麻雀とバイトに明け暮れた。だから、高校時代からつき合ってきた彼女にも、あっけなく振られた。
 それでも、競馬をやめなかった。
 
 あれから、30年以上、まだ競馬はしているが、最近はまったく熱くならない。レース前のドキドキする高揚感がない。しかも、馬券を当てることに、ほとんど意味を見出せなくなった。

 だから、今回のダービーでアンライバルドが2冠馬になろうが、ロジユニヴァースが復活しようが、あるいは、有力馬のアプレザンレーヴ、セイウンワンダーなどが来ようが、ほぼどうでもいい。
 どの馬が勝っても、それはそれなりの結果だ。

 ただ、なにかを買わなければならないので、またしても、アントニオバローズを買おうと思う。競馬に胸が熱くなることがなくなり、馬券も家で買えるようになったいま、馬券を買うのは見学料のようなものだ。
 アントニオバローズを買う理由は、角田晃一が騎乗するという、ただそれだけ。思えば、彼ももう38歳になったのだから、まさに光陰矢の如しと思う。

 ジャングルポケットで角田がダービーを勝ったのは2001年。あの同時多発テロの年だった。この年の有馬記念は、マンハッタンカフェとアメリカンボスというあまりにもでき過ぎた決着。そして、翌年対テロ戦争に突入すると、ケンタッキーダービー馬になったのが、War Emblemだった。

 いまは、世界同時不況、金融危機。ならば、それっぽい名前の馬でも買わないと、今後、記憶にも残らないのではないかと思う。それで探してみたが、残念ながらそんな名前の馬は、今回いない。

 ダービーは、アントニオバローズから馬連で総流し。そして、1番人気のアンライバルドと、雪辱を期すロジユニヴァースの2頭には厚めに買ってみる。これまでの経験からいって、たとえアントニオが連に絡んだとしても、厚めのほうは絶対にハズれるに違いない。