ペーパーバックスの編集方針 印刷

ペーパーバックスについて

 光文社ペーパーバックスを創刊するにあたって、編集部では基盤となる「編集方針」を決めました。それは、ひとことで言うと、
         「多文化主義」(multiculuturalism :マルチカルチュラリズム)
 です。

■多文化主義とはなにか?

 多文化主義とは、まず、この世界には「異なる価値体系」および「文化的慣行」があることを認めることです。そして、「人権」human rights、「法の支配」law control、「ジェンダー平等」gender equality、「多様性」diversity、「寛容」toleranceといった、核心的で妥協できない価値観に対しては、積極的にアプローチして いくことです。
 つまり、われわれは1つの見方だけに捉われずに、この世界にある多様な価値観valuesをお互いに認め合って生きていこうという考え方です。
 編集部では、この多文化主義の推進こそが、グローバル化が進む21世紀におけるメディアの役割だと考えました。
 そこで、次のような標語を掲げることにしました。
「事実は1つでも、その見方は文化の数だけある!」(from one comes different knowledge)

■「カッパ・ブックス」の精神を受け継ぐ

 光文社には、かつて一時代を築いた「カッパ・ブックス」というシリーズがありました。これは、欧米型とはスタイルは違いますが、一種のペーパーバックスと言っていいシリーズでした。
「カッパ・ブックス」は1954年に創刊され、その後、『にあんちゃん』(安本末子)『頭の体操』(多湖輝)『冠婚葬祭入門』(塩月弥生子) 『英語に強くなる本』(岩田一男)『悪魔の飽食』(森村誠一)『NOと言える日本』(石原慎太郎)などのベストセラーを次々に出してきました。
 この「カッパ・ブックス」のカッパは、日本の庶民が生んだ想像上の動物「カッパ」から来ており、その編集方針は「いかなる権威にもヘコたれない。非道の圧迫にも屈しない。なんのへのカッパと、自由自在に行動する」カッパの“精神”を出版活動で実現することでした。
 したがって、光文社ペーパーバックスは、この「カッパ・ブックス」の精神を受け継いでいます。ただし、時代は「戦後民主主義の時代」と大きく変わって「グローバル化の時代」へと移っています。
「カッパ・ブックス」の「誕生のことば」(編集方針)を書いたのは、“出版の神様”と言われた当時の光文社社長・神吉晴夫でした。神吉が書いた「誕生のことば」のなかに、次の一節があります。
《裸一貫のカッパは、いっさいの虚飾をとりさって、真実を求めてやまない。たえず人々の心に出没して、ともに楽しみ、ともに悲しみ、ともに怒る。しかも、つねに生活の夢を描いて、飽くことを知らない。カッパこそは、私たちの心の友である。》 
 光文社ペーパーバックスは、この精神を受け継いでいます。

■どうしたら「自由に」「楽しく」生きられるか?

 1つの見方だけに捉われると、現在のグローバル化した世界では生きていけません。いま、私たちは、「リアル世界」と「ヴァーチャル世界」とい う昔では考えられなかった2つの世界のなかで、経済economyも文化cultureも社会communityもクロスオーバーするなかで暮らしていま す。
 では、こうした世界で、私たちはどうすれば、より「自由に」「楽しく」「権威にとらわれずに」暮らせるでしょうか?
 それは、次の3つのことに強くなることです。
 1、経済・金融
 2、ITとヴァーチャル世界
 3、英語(世界共通語)

 この3つを使いこなすためには、多文化主義をその基盤に持たなければなりません。
 光文社ペーパーバックスは、この多文化主義に基づき、「つねに生活の夢を描く」あなたのために編集されています。そして、メディアの役割とし て、「公共財」common goodsを読者に提供することを願っています。つまり、民主主義の精神である「The art of democracy is ability to recognize the common good.」を限りなく追求しています。
 あなたは、書店で本を買うとき、本になに求めますか? 知識、教養、最新情報と、さまざまな理由があるとしても、確実に言えるのは、本という モノを買うのではないということです。ならば、本を買うと付いてくるジャケットや帯などは余計ではないでしょうか? 光文社ペーパーバックスにはそれがあ りません。単行本と同じかそれ以上のボリュームで、1000円を越えない定価で、この時代に最も適したスタイルを追求しました。
 そのため、光文社ペーパーバックスには次の4つの特徴があります。
1、ジャケットと帯がありません。
 従来の日本の書籍は、いわば過剰包装。その分のコストを廃し、いつでもどこでも読めるというペーパーバックス本来の機能を重視して製作されています。

2、本文の紙は再生紙を使っています。
 これは、失われゆく地球資源を守るためであり、環境問題に少しでも貢献したいと考えているからです。

3、本文はすべてヨコ組です。
 学校の教科書、会社の文書、インターネットのウェブサイトのテキスト、メール、手紙、論文など、いまの日本語はほとんどの場合、ヨコに書くのが普通です。ですから、できるだけ自然な形で、日本語をヨコ組で表記しています。

4、英語(あるいは他の外国語)混じりの「4重表記」。
 日本語だけで現在の世界を捉えていては、グローバル化の時代に取り残されてしまいます。そのため、文中の重要語や日本語概念では捉えきれない 言葉には英語(あるいは他の外国語)をそのまま取り入れ、4重表記としました。これによって、少しでも読者の世界観が広がることを願っているからです。       

■私たちの求める読者とは?

 1、チャレンジ精神が旺盛な人
 2、好奇心いっぱいの人
 3、時代に対応することを心がけている人
 4、異文化、英語に興味を持っている人
 5、権威、常識を疑っている人
 6、「その先の日本」を知りたい人

■「ビジネスシリーズ」について

 2007年1月から、従来のシリーズに加えて「ビジネスシリーズ」を立ち上げました。このシリーズは、20代後半~30代後半のビジネス現場にいる人たちに、より実用的、実践的な知識と情報を提供したいと始めたものです。
 というのは、これからの日本を背追っていくのは、この世代の方々だからです。
 したがって、ビジネスシリーズはペーパーバックスの本体シリーズより「親しみやすく」「わかりやすい」を主眼としています。また、「成功したい」「いい人生を送りたい」という願いに応えられるように編集しています。