12/07/04●2011年度の電子書籍市場は前年比マイナス3.2%で629億円。“ケータイコミック”市場の落ち込みが原因 印刷

インプレスR&Dシンクタンク部門「インターネットメディア総合研究所」は、7月3日、電子書籍の市場規模に関する調査報告書をまとめた。この調査は同社が主要な電子書籍関連事業者へのヒアリング調査やアンケート、ユーザーへのアンケートなどを基に分析したもので、詳細は『電子書籍ビジネ ス調査報告書2012』として発行される予定だ。

 この報告書では、2011年度の電子書籍市場規模を629億円と推計。2010年度が650億円だったため、 3.2%のマイナス成長となった。これは、電子書籍市場では初めてのことで、日本ではアメリカのように電子書籍市場が成長しないことを端的に表している。

 何度も書いているが、日本の電子書籍市場は特殊で、市場のほとんどをBL、TL中心の“ケータイコミック”が占めている。事実、全体の約76%を占める480億円市場となっている。このケータイコミックが、前年度比で16%マイナスとなったことが、今回のマイナス成長の最大の原因だ。

 

  一方、スマートフォンやタブレット向けの電子書籍市場は2010年度の24億円から363%増となる112億円へと急拡大を遂げている。しかし、ケー タイコミックは、ガラケー(フィーチャーフォン)からスマホへの転換がうまく行っているわけではないので、全体としての電子書籍市場の落ち込みを補完できなかった。

  そんななか、楽天の「Kobo」の発売、アマゾンの「Kindle」の日本発売で、一般書の電子書籍市場の拡大が期待されるようになった。しかし、これも端末の普及次第。現在、フィーチャーフォンからスマホへの転換が進んでいるが、若いユーザーはスマホ1台ですべて済ませる傾向にあり、「いくら価格が下がったとはいえ、はたして電子書籍専用端末を買うだろうか?」と、疑問視する声も強い。

  それでも、この報告書は、2012年度の市場規模を713億円と予想、ケータイ向け電子書籍市場とスマートフォンやタブレット向けの電子書籍市場が逆転するのは2013年と予測している。さらにこれらのデータを基に、2016年の市場規模も推計しているが、なんと、その規模は2011年度比で3.1倍の2000億円。

  本当に、あと3年でこんなことになるだろうか?

 電子書籍は、紙の書籍がデジタル化しただけのものではない。文字中心のコンテンツとはいえ、その読み方、サービスなどは、紙とはまったく違う。つまり、電子書籍独自の進化が始まらなければ、日本のように紙が圧倒的に強い市場では、市場の拡大はじょじょにしか起こらないのではと思う。ちなみに電子雑誌市場についても言及があり、2011年度は前年度比267%増の22億円。2016年度には350億円程度になると、こちらも楽観的な予想になっている。