12/07/26●またも税金の無駄、申請数が低迷で「緊デジ」が条件を緩和 印刷

日本出版インフラセンター(JPO)は、経済産業省の「コンテンツ緊急電子化事業」(略称:緊デジ)について、補助金対象の条件を緩和すると発表した。申請受付を開始して1カ月経過したが、出版社からの申請数が予想よりも低かったからだという。「緊デジ」は、経済産業省が東北支援を掲げて実施している政府事業で、書籍のデジタル化に対して補助金を出し、電子書籍産業をサポートしようというもの。事業総額で約20億円の予算が計上され、約6万点の電子書籍をつくり出す計画だった。

  まず、これまでの「上限を年間発行点数の2倍まで」という申請上限が廃止され、図書寄贈の義務も「可能な範囲での寄贈」に改められた。さらに、これまで見送ってきた「EPUB3」を採用することも決定。専門出版社団体からの要請にも対応していくことにしたうえ、出版社は制作会社も指定できることになった。

 

  まさに、大幅な緩和である。ところが、「それでも6万点達成など無理だろう」(業界関係者)という声は強い。というのは、日本には、約3700社の出版社があるとされるが、そのうち年間1点以上出しているところは約10分の1の400社ほど。さらに年間1000点以上出しているのは、大手の講談社、集英社など4社に絞られるからだ。7月14日現在で230社が申請と経産省は発表しているが、この会社数で6万点をクリアするとすると、1社平均で260点が必要になる。だから、もともと「年間発行点数の2倍まで」に無理があったわけだが、今回の緩和で申請数が激増するとは思えない。

  「緊デジ」のスキームは、東北支援で電子書籍事業を支援するという計画自体に無理があった。なぜ、6万点デジタル化が東北支援になるのか、明確な理由はない。つまり、予算のための予算だったわけで、最初から税金の無駄遣いだった。しかし、国が決めただけに、計画がとん挫、予算未消化ということになれば、政策立案者の責任が問われる。それで、今回の大幅緩和になったと言えるだろう。もし、電子書籍ビジネスが儲かるなら、補助金などもらわなくとも書籍のデジタル化は進んでいる。補助金をもらってもやりがいのないのが書籍のデジタル化というのが、現時点の電子書籍ビジネスの現実だ。