10/05/28●日本連合の誕生か?ソニー、凸版、KDDI、朝日新聞が電子書籍会社を設立 印刷

 アップルの「iPad」の国内発売が5月28日午前8時、アップル直営店やソフトバンクショップ、家電量販店の一部で始まり、どこも徹夜組を含めて長蛇の列ができた。その模様は、ブログのほうを見てもらうとして、iPadが日本と同時発売されるのは、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、カナダ、オーストラリアの8カ国。どうやら各国とも、日本と同じようなブームとなっていて、「iPadはiPhoneを上回るだろう」とい声がしきりだ。

 そんなか、今回除外された中国では、案の定、海賊版(とはいちがいに言えないが)が大量に出回っている。中国ではすでに、3月頃から、「iPed」、「 iTad」、「 APad」などが登場。どれも、日本円にして1万円~2万円ほどで売られている。インテルCPUを搭載してはいるが、タッチスクリーン方式、サイズなどiPadとそっくりで見分けがつかない。また、中国のネット販売最大手「淘宝(タオバオ)」のサイトでも販売されているので、このほうがお手頃である。

 

 それはともかく、iPadの発売に合わせるように、日本の既成メディアやIT業界の動きが活発化してきた。

 まず、出版界だが、コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは、「ヴォーグ・ニッポン」や「GQジャパン」などの iPad版を投入。講談社は、発売の28日に合わせ、作家・京極夏彦の新刊本の配信に踏み切った。

  アップルストアの行列

  さらに特筆すべきは、5月27日に、ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社の4社が、電子書籍配信事業に関する事業企画会社を設立すると発表したことだ。この企画会社は、すぐに、書籍・コミック・雑誌・新聞などを対象としたデジタルコンテンツ向けの共通配信プラットフォームを構築・運営する事業会社へ移行し、年内にはサービス開始する。また、ソニーは欧米で発売済みの電子書籍リーダー端末「Sony Reader」を日本語化し、2010年末をめどに日本国内で発売するという。

 企画会社が構築するのは、コンテンツ配信のためのプラットフォームで、企業に依存しない「オープンなプラットフォーム」となる予定。そのため関係するさまざまな企業の参加を呼びかけており、参加企業は広く募る考えという。また、電子書籍の配信先の制限は設けないというから、iPad、携帯電話、スマートフォンなど、複数の配信先に提供できるようになる。つまり、複数のフォーマット、さまざまなメーカーのハード、多様な電子書籍ストアを使えるようにし、「いつでもどこでも、読みたい電子出版物を手軽に楽しめる機会を提供したい」(野口上級副社長)としている。

 

 KindleやiPadの普及で、日本でも独自端末とプラットフォームをつくるべきという見方が強まっていたが、これはその最初の動きとなる。もちろん、アップルやアマゾンの1社独占プラットフォームに対抗するための動きである。

 日本電子書籍出版社協会代表理事を務める講談社の野間省伸副社長は「今回、配信事業に関する企画会社が設立されることをきっかけに、わたしども出版社の進める電子書籍がより早く、読者の皆さまのお手元に届く形が作られれば幸い」と設立趣旨に賛同するコメントを出し、小学館、集英社、文芸春秋なども設立趣旨に賛同した。

 

 もうひとつ、日本電子書籍出版社協会が加盟社の電子書籍約1万点を、iPadで配信することを決定したのも、特筆すべきニュースだ。その対象は、電書協が直営する電子書店「電子文庫パブリ」でパソコンや携帯電話向けに売っている電子書籍。いずれも加盟社の既刊書で、2万点のうち当面は半数ほどを投入する。最多価格帯は500~600円で、iPadでも同額で販売する模様だ。

 いずれにしても、「電子書籍元年」の流れは思いのほか加速し始めた。まだまだこの先、いろいろな動きが出てくるのは間違いない。