10/06/04●電子書籍の印税70%で自費出版が今後さらに活発化! 印刷

   アップルの「iPad」の登場で、アマゾンも今月から、販売価格2.99~9.99ドルの電子書籍に関して、著者に支払う金額を売り上げの35%から70%に引き上げた。そのため、今後さらに自費出版、著者自身による出版活動が活発化しそうだ。

   キンドルの場合、電子書籍販売サイト「Kindle Store」で自費出版本を9.99ドルで売った場合、1冊売れるごとに著者は6.99ドルを受け取ることになる。これに対して、ほかの大手出版社で電子書籍を自費出版した場合、受け取れる金額は1.75ドル程度。これでは、ほとんどの著者(無名、有名を問わず)が、自身で電子書籍の出版を選択するようになりそうだ。すべて自身の手で行わなくとも、いまでは電子出版をサポートしてくれるサービス会社もある。

   現在、自費出版したければ、プラットフォーム側が用意した出版サービスを利用すれば、ほぼ誰でも電子書籍を出せる。アップルは先週、電子書籍の売り上げの70%を著者 に提供するアイパッドの自費出版プログラムを発表した。バーンズ・アンド・ノーブルも先月、電子書籍の自費出版サービス「PubIt!」を発表している。

  自費出版される電子書籍を、現在最も多く取り扱っているのが、アマゾンの「デジタル・テキスト・プラットフォーム」で、これを利用した無名作家がベストセラーを出すまでになっている。『WSJ』紙によると、ウィスコンシン州ハートランド在住の作家、カレン・マクエスチョンさん(49)は、自身の小説を大手出版社に10年にわたって売り込んだがうまくいかず、昨年7月、アマゾンでの自費出版に踏み切った。すると、これまでに3万6000部売れ、映画化の話も持ちかけられた。さらに、この8月、アマゾンはマクエスチョンさんの処女作「A Scattered Life」のペーパーバック版を発売するという。

  こうなると、アマゾンは新人作家の発掘から紙の書籍の出版まで行うことになり、既存の出版社にとっては、予想通り大きな脅威である。また、アマゾンは、スティーブン・キングやスティーブン・コヴィーといった著名な作家と電子書籍の独占契約も締結しているので、もはや完全に出版社と言ってもいい。

アメリカの出版社協会によると、書籍売り上げは、昨年(2009年)1.8%減の239億ドルだったが、電子書籍は3倍増の3億1300万ドル。これは、日本の約500億円と比べたらたいしたこがないと思えがちだが、日本はほとんどが配信の漫画。アメリカは、れっきとした電子書籍である。この違いは大きい。

アメリカでは、電子書籍の売り上げは今後さらに伸び、2012年までに書籍市場全体の20~25%に達すると予測するアナリストもいる。日本はアメリカの後を行くかたちだが、いまのところ予測は不可能だ。