10/06/17●出版大手に復調の兆し。講談社、集英社、前年実績を上回るも…… 印刷
   深刻化する出版不況のなか、大手出版社に復調の兆しが見えてきた。まず、6月14日、帝国ホテルで行なわれた集英社販売賞の表彰式で、東田英樹常務が5月末までの書籍/雑誌/コミックス・コンテンツ販売3部の合計売上げが前年比100%を超えたと発表した。実売率も2.3ポイントアップ。特にコミック販売は『ONE PIECE』58巻が初版310万部と好調で、全体を押し上げた。

 続いては、講談社。6月15日、書店未来研究会の総会で野間省伸副社長が、「上半期の書籍、雑誌、コミックの3部門がそれぞれで増収となり、売上高が3%増で黒字になった」と発表した。講談社は、「親鸞」「死ねばいいのに」などのデジタル配信事業(電子書籍ビジネス)に積極的に参入して注目されるが、これについても野間副社長は、「紙の売上げが伸びるだろうという仮説のもとで行った実験」とし、「実際、紙の本の売れ行きが好調でウイン・ウインの結果になった」と語った。

 講談社、集英社が前年比をクリアすることは久しぶりに明るい話題だが、その裏には大幅なコストカットがある。また、依然として雑誌広告の低下は続いているので、大手以外は苦しい。中小は、いくらコストカットしても広告収入、販売収入の低下に追いつかない状況で、今後は、大手による出版界の寡占化が進むと思われる。