10/08/07●NTTドコモと大日本印刷が提携で電子出版の3大勢力が出そろうが、先行きは不透明 印刷
  NTTドコモと大日本印刷は8月4日、携帯端末向けの電子出版事業での業務提携を正式発表した。今年10月末から11月のサービス開始を予定している。両社は、共同出資会社を設立し、コンテンツ収集から配信、課金までの一貫したサービスを提供する。大日本の書籍デジタル化技術と出版社との関係を活用してコンテンツをそろえるとともに、ドコモの5600万人の顧客基盤を生かして電子書籍業界1位を目指す。そのため、タブレット機も開発し、サムスン、LG、NECの協力も得ているという。
 
 これで、電子書籍事業をめぐって、日本の通信3大キャリアが3つどもえの競争をするという構図ができあがった。整理すると、今回提携した「ドコモ、大日本、大手出版社、書店」連合、「KDDI、凸版、ソニー、朝日新聞」連合、「ソフトバンク、米アップル」ということになる。ただ、これはあくまでの通信キャリアからみた構図だ。いずれにせよ、これで、日本も電子書籍市場が形成されることは間違いなくなったが、はたして、日本勢は、この分野の3強、アマゾン、アップル、グーグルに勝てるだろうか?

 私の見方では、どう見ても無理だ。というのは、日本連合は、どこも出版社・印刷会社・端末メーカーが共存する「水平分業型」だからだ。ただ、どの連合も端末は限定せずに配信するというが、iPadを意識した「垂直統合型」に持って行こうという意図はありそうだ。つまり、従来の出版社、取次、書店という日本独特の構造を維持しながら、それを達成しようとしている。 

 しかし、これは無理な相談だろう。すでにアメリカでは流通の最先端の書店は崩壊し始めている。続いて取次、最終的に、新聞、出版社も崩壊する過程に入ってきている。日本もいずれそうならざるを得ないだろう。しかし、日本の通信キャリアや印刷会社に、書店、取次、出版社を切ってしまうことができるだろうか?
 
 さらに先行きを不透明にしているのは、グーグルの動きだ。グーグルは電子書店の「グーグル・エディション」を、来年から日本でも立ち上げる。これは、もうコンテンツプロバイダー、作家との直接取引だから、どう見てもコンテンツはどんどん集まる。日本は例外という見方もできるが、ネット検索市場を握っているグーグルにかなうプラッとフォームはないのだから、そうはいかないだろう。

 というわけで、結局はどう動いてもグーグル、アップル、アマゾンには勝てないのではないかというのが、いまのところの私の結論だ。結局、日本連合は、国内シェアを奪い合うだけではないのだろうか?