10/10/15●アマゾンが「KIndleSingles」発表!作家を囲い込みに! 印刷

 アマゾンは、10月12日(米国時間)Kindle Store」で販売するコンテンツのラインアップとして、「Kindle Singles」という新しい表現形式を発表した。これは、これまでの紙の雑誌・書籍という観念から脱した文字数で構成される新時代のコンテンツとも言うべきもので、これにより、アマゾンがなにをやりたいのか、よりはっきりしてきた。

「Kindle Singles」は、文字数が1万〜3万語(約30ページから90ページ)程度とされ、雑誌の特集と一般的な書籍の中間に当たるボリューム。アマゾンは、想定している文字数を「New Yorker誌の特集記事の2倍程度、または一般的な書籍の数章程度」としている。英語圏における雑誌記事はだいたいが1万語以下、また、書籍は5万語以上であることが多いが、これは紙出版の影響を色濃く受けた結果 であるといい、実際にアイデアなどを端的にまとめ、効果的に伝えるためには1万〜3万語が適しているという。

 つまり、「Kindle Singles」には、こうしたボリュームのコンテンツを集めることになる。そして、ゆくゆくはこちらを主流にして、作家を囲い込み、既存の紙メディアの必要性をなくしていくというのが、アマゾンの作戦のように思える。

  

 アマゾンでは、個人、出版社を問わず、「KindleSingles」に参加をしてくれるよう、広く呼びかけている。また、歴史学者、作家、科学者、政治家、ビジネスリーダーなどが、世界の読者に向けて作品を配信することを支援すると、宣言している。「Kindle Singles」は、Kindle向けコンテンツの配信サイト「Kindle Store」内に専用コーナーを設け、一般書籍より低価格で販売されるという。ユーザーは通常のKindle向け電子書籍と同様に「Kindle Singles」を購入・管理でき、Kindle/ Kindle 3G/ Kindle DXのほか、Kindleアプリケーションを使ってiPad/iPod touch/ iPhone、Mac、PC、BlackBerry、Androidスマートフォンなどでも読める。

 電子書籍が従来の紙の書籍とは異なるのは当然だが、この「Kindle Singles」により、その合理的なかたちが見えてきたと言ってもいいかもしれない。ただ、こうなると有料ブログなどとどこが違うのかという見方もできる。ウェブ上の他の文字コンテンツとの境界もあいまいになる。ただ、ブログと違って1つのコンテンツごとに売れるわけで、参加作家は増えるだろう。そうすれば、アマゾンは思惑通り多くの作家を囲い込めるかもしれない。そして、既存のプリントメディアはますます衰退していくことになる。

 ただ、「Kindle Singles」が巨大なゴミ・コンテンツ置場になる可能も否めない。電子書籍時代に入って、コンテンツは急激に増えてきたが、それはセルフパブリッシングが進んだからだ。今後、電子書籍は日々増加していくが、そのほとんは紙時代と違ってクオリティの低いゴミ・コンテンツである。