11/04/26●震災の出版界への影響は今後拡大か?3月の新刊書籍点数は前年同期比6.9%減 印刷

出版科学研究所は4月25日、3月の書籍の新刊点数が前年同月比6.9%減の5481点だったと発表した。東日本大震災の影響で、ビジネス・時事関連の書籍が刊行延期になったことなどが響いたという。一方の雑誌は、3~4月発売予定で発売延期も360点に及んだ。

 減少したのは出版取次が出版社から仕入れた新刊点数。震災の翌週1週間の新刊点数が16%減と大きく落ち込んだが、震災2週間後には前年同水準まで回復したという。

  しかし、これは発行点数であり、売上がどの程度落ち込んだかは、まだ推計段階。大手出版関係者によれば、「少なくとも2割は落ち込んだはず」という。一般の消費も2~3割は落ち込んでいるから、今後、どの程度の数字が出てくるか、まだ予測はつかない。

 

 そんななか、集英社『週刊少年ジャンプ』や講談社『週刊少年マガジン』などで、発売を中止または延期する代わりにインターネットで無料公開する動きが出て、これが今後の紙市場にどんな影響を与えるかも注目されている。

  業界団体の日本書籍出版協会(JBPA)は、各社の出版物に被災地で役立つものがあれば無償提供していくように呼びかけたため、こうしたことが行われたわけだが、いったん無料公開してしまえば、その後、紙に読者が戻るかは未知数だ。

 以下が、主な無料公開コンテンツ。

《小学館》 週刊少年サンデー 16号、17号

《集英社》 週刊少年ジャンプ15号、16号 週刊ヤングジャンプ16号、17号、18.19号 ウルトラジャンプ4月号 ジャンプSQ.5.6月合併号の一部

《講談社》 週刊少年マガジン16号、17号 週刊モーニング15号、16号 ヤングマガジン15号、16号 イブニング8号 Kiss6号 BE・LOVE7号

 

  このように既存の出版社が震災対策に追われるなか、電子書籍のほうも震災キャンペーンを実施した。話題になったのが、オライリー・ジャパンが運営する電子書籍販売サイト「O'Reilly Japan Ebook Store」で展開した東日本大震災の被災者支援キャンペーン。このキャンペーンは、電子書籍を通常価格の半額で販売、その売り上げを日本赤十字社への義援金に充てるというものだったが、半額とあって注文が殺到。PDFのダウンロードURLを知らせるメールの到着まで数十時間待ちという事態になった。関係者によると、3日間のキャンペーンで3700万円の売り上げを記録したという。

 

 ところで、震災直後に問題になった紙とインクの供給だが、こちらはいちおう収束する兆しを見せている。まず、用紙の生産だが、業界大手の日本製紙では、石巻工場(宮城県石巻市)をのぞいて、岩沼工場(宮城県岩沼市)、勿来工場(福島県いわき市)が一部設備で操業を再開するようになった。

 次にインクだが、こちらは丸善石油化学の千葉工場は、エチレン製造装置やアルコールケトン製造装置などが稼働を停止していたが、その後、エチレン製造装置が稼働を再開している。ただ、「アルコールケトン製造装置の復旧には最低でも1年間は掛かる」と丸善石油化学は発表している。

 このアルコールケトン製造装置は、印刷に欠かせないオフセットインキやグラビアインキの原料のほか、新聞インキの主原料であるジイソブチレン (DIB)などが製造されるが、これは現在も供給不足という状況だ。