12/03/30●出版デジタル機構設立で、官民ファンドがなんと150億円を出資 印刷

3月29日、「株式会社出版デジタル機構」(サービス名:パブリッジ)の設立記者会見が行われ、官民ファンドの産業革新機構が最大150億円を出資して最大株主となることがわかった。

  この出版デジタル機構には、角川書店、勁草書房、講談社、光文社、集英社、小学館、新潮社、筑摩書房、版元ドットコム、文藝春秋、平凡社、有斐閣、大日本印刷、凸版印刷など、日本の出版界を支える主だった企業が出資。このほか、中小出版社を含めた合計280社が新会社の取り組みへの賛同を発表している。会社発足は4月2日。

  出版デジタル機構は、電子化や電子書店への配信、収益分配の管理といった業界共通の機能、サービスを出版社などに提供することを目的に、昨年秋に設立。以来議論を重ねてきた。その結果、株式会社として、出版社の電子書籍ビジネスをサポートして収益を上げる株式会社を選択、これまで、出資を募ってきた。

  もちろん、こうした動きの背景には、アマゾンの日本進出が近いことがあった。

 

  この日の会見では、代表取締役に就任した植村八潮氏(東京電機大学出版局局長)が、記者からのほとんどの質問に答えたが、そのポイントは以下のとおり。

 

 ■「出版デジタル機構は、あらゆる端末、あらゆる書店、あらゆる出版社の架け橋となり、すべての著者、読者が参加できる場を作りたい。そのため名称をパブリッジ(pubridge)」とした」(パブリッシュ=出版+ブリッジ=架け橋)

■「日本の電子書籍市場はタイトル数が少なく、そのため市場ができない。読者はタイトルの充実を求めているが、一方では多くの出版社において電子化のコストや人的負担が課題となっている。そこで、新会社がこの作業をサポートする」

■「新会社が電子出版のインフラを整備することで、中小出版社や新規事業者の電子出版ビジネスへの参入を容易にすることができる。そうして、5年後に100万タイトルの電子化を達成する」(このときの市場規模は現在の全出版市場の10%にあたる2000億円と試算)

■「ただし、直接的に一般の読者に向けたBtoCビジネスは行なわない。電子化を行なった後の販売は出版社側にお任せする。販売については出版社はいいコンテンツで競争してほしい。電子出版を行なうコストや人的負担が大きいが、良質なコンテンツを持っている中小出版社や、1人出版社が参入できる環境を つくりたい」

■「設立後の直近の事業としては、経産省が被災地支援として行なうコンテンツ緊急電子化事業を日本出版インフラセンターが受けているが、出版デジタル機構も連携して事業を行なうことになっており、この事業での今年度の目標として6万点が掲げられているのでそれを目指していく」

 

    コンテンツ緊急電子化事業の事業スキーム(JPO資料より作成)ITメディアより転載

  なお、この記者会見に合わせて、凸版印刷系列の電子書店「ブックライブ」が、日本政策投資銀行、三井物産、東芝、NECの4社を引受先とする第三者割当増資を実施し29億円を調達すると発表した。こうしてみると、日本の電子出版のインフラは整ったように見えるが、はたして、これがうまく稼働していくかどうかは、やってみなければわからない。