12/04/12●司法省が電子書籍の定価販売を「独禁法違反」で提訴、大手3社が勧告を受け入れ 印刷
  アメリカ司法省(DOJ)は4月11日、出版大手5社を「独禁法違反」で、ニューヨーク州南部地区連邦地裁に提訴したと発表した。アップルの電子書籍ストア「iBookstore」でのエージェンシーモデルによる書籍販売価格を、正式に独禁法違反として

 対象となる出版社は、Hachette、HarperCollins、Macmillan、Penguin、Simon & Schusterの5社。ただし、Hachette、HarperCollins、Simon & Schusterの3社は司法省の勧告を受入れ、2010年以来のアップルとの間のエージェンシー価格制に基づく契約を解消すると発表した。

 司法省は、アップルとこれらの出版社を含む多数の企業が2009年夏から談合し、電子書籍ストアでの健全な競争を排除しようとした結果、消費者向けの書籍の価格が上昇したと主張した。司法省のシャリス・ポーゼン司法次官補代行は、調査によってE-Bookの価格を一夜にして引上げた談合容疑が裏づけられたと述べ、エリック・ホー ルダー長官も「この価格談合により、消費者は人気タイトルの一部に対して数百万ドルを過大に負担させられることになった」と述べた。

  独禁法に抵触するのは、以下の点だ。

・iBookstoreで販売する書籍の価格を出版社が決める(エージェンシーモデル)

・iBookstoreで販売する書籍について30%のコミッションを支払う

・iBookstore以外の電子書籍ストアでの販売価格をiBookstoreより低くしない

・電子書籍の価格設定に関する話し合いのなかで、米Amazon.comの電子書籍販売方式を含む競合の機密情報を共有した。

 なお、和解勧告を受け入れた3社は、以下の条項を含むことになった。

・AmazonやBarnes & Nobleなどの小売業者による電子書籍の値下げを可能にする

・Appleを最恵国待遇する反競争的な契約を解除する

・2年間は小売店による値引きを制限しない

・5年間は競合出版社と機密情報を共有しない

・強力な独禁法順守プログラムを作成する

 『Wall Street Journal』紙によると、この発表を受けてアマゾンは「Kindle向け電子書籍でより低い価格を設定できるようになることを楽しみにしている」という、事実上の勝利宣言を発表している。また、裁判で決着をつける意思を明らかにした米国マクミランのサージェントCEOは、談合への参加を否定し、違法行為がない以上和解は困難であると表明した。

  今回の提訴により、アマゾンは司法省の支援を受けたかたちで一方的に価格を引き下げることもできるようになり、おそらくそうするだろう。これで電子書籍販売のエージェンシーモデルは事実上崩壊する可能性が強くなった。