メディアの未来[008]グーグル「ブック検索」問題。日本文芸家協会が和解案を受け入れ、あっけない幕切れ! 印刷

アメリカから説明団が来日 、日本側と会合

 

 この連載ブログで何度も書いてきたが、グーグルによるブック検索サービスの和解訴訟問題が、ある程度の着地を見せた。それは、あれだけ騒いだのがウソのようなあっけない幕切れだった。
 2009年5月27日、グーグルの行為を「許せない。きちんとした対応を」と抗議していた日本文芸家協会は、なんと「協力したい」(三田誠広副理事長)と歩み寄る姿勢を示したのだ。

 これは、日本での大騒ぎを憂慮して、原告の全米作家協会のポール・アイケン事務局長らが25日に来日し、日本文芸家協会など日本側の団体や文化庁著作権課などと相次いで会談した結果だった。

 アメリカからの説明団の一行は、27日の記者会見で、「日本で流通している書籍は、ネット上での公開や販売の対象にならない」と、まず説明した。
 ジェフ・カナード全米出版社協会法律顧問は、「日本で新刊として流通している書籍は、アメリカでも入手可能とみなされる」と言い、データベース化はされないと明言した。
「日本で刊行中の書籍については、本文の表示使用の対象にならない」というのだ。

 

絶版の定義が明確になり、抗議する必要がなくなった

 

 つまり、アメリカで流通していなければ絶版と見なされ、データベース化されると心配していた日本の著作権者は、これでホット胸をなで下ろしたということになった。
 これを聞き、日本文芸家協会では、2000人以上の会員が「グーグルのデータベースからの削除」を求めていたが、方針を転換。「削除する必要はなく、表示利用のみを拒むのが適切」と、抗議を取り下げてしまったのである。

 三田誠広副理事長は、会見で「(アメリカ側との話し合いで)絶版の定義は明確になった」と述べ、会員に対しデータの削除をグーグルに申し出るよう呼びかけていたことを撤回する方針を示した。
 そして、こうした考えについて、6月3日の理事会に報告し、了承を得たうえで会員にも文書で通知するという。
 まさに、あっけない幕切れである。

 

日本だけが、まるで「黒船来襲」のような大騒ぎ

 

 ところで、このグーグル問題が起こってから、私は、ネットで各国の動きがどうなっているのか、かなり調べた。それでわかったのは、「なにか、日本だけが異常に騒いでいるな」ということだった。ドイツやフランス、イタリアでも問題にはなっていたが、日本のように大騒ぎにはなっていなかった。それでも、日本と同じく、グーグルの説明団は欧州各国にも出かけている。
 しかし、日本では、まるでグーグルが黒船来襲のような感じで、日本人はネットに対するアレルギーが異常に強いと思った。

 もう1つ。みなさん(著作権者な方が)、自分ではなにもしないで、新聞などが騒ぐから騒いでいるだけのように感じた。というのは、グーグルブック検索というのは、実際にやってみると、かなり使い勝手が悪いからだ。著作権のある本に関しては、検索ワードを含むページだけしか表示されない。また、印刷もできない。この程度なら、著作権が侵害されているとは言い難い。

 

流れは完全にデジタル化。そのとき私たちはどうするのか?


 私に言わせれば、グーグルなどより、著作権意識のない素人のブログのほうがよっぽど怖い。そういうブログのなかには、平気で他人の著作物を何ページも引用したり、版権のある写真を勝手にコピーして載せていたりするものが多いからだ。
 ただ、これを規制するのはイタチごっこだから、いまのところ野放し状態。つまり、いまの著作権法では解決できていないのだ。

 何度も書くが、グーグル問題が突きつけているのは、著作権という狭い範囲の話ではない。それは、世の中の情報は、いずれほぼデジタル化される。そこに向かって進んでいるということだ。グーグルは、それをせっせとやっているに過ぎない。だから、遅かれ早かれ、本や雑誌のようなアナログコンテンツは、すべてデジタルで存在するような時代になる。

 そのときに、私たちのようなこれまでアナログでビジネスをやってきた人間は、どうすべきなのかということだ。