メティアの未来[011]小学館も63億円の赤字決算! 雑誌淘汰時代が来た 印刷


小学館、講談社とも深刻な赤字決算



 2009年5月28日、小学館は株主総会のあと、決算・役員人事を発表した。
 それによると、第71期(2008年度)の売上高は1275億4100万円で、前年比9.8%減。営業損失が75億7700万円、経常損失が63億7000万円、当基純損失が63億7000万円と、大幅な赤字決算になった。

 赤字が約64億円というのは、売上が1200〜1300億円の会社にとって、相当深刻な事態である。
 とはいえ、深刻な赤字は、講談社も同じだ。
 
 すでに講談社は、2009年2月23日、2008年度(2007年12月—2008年11月)の決算を発表している。それによると、売上高は1350億5800万円で、前年比6.4%減。当期純損失は、なんと76億8600万円で、赤字幅としては過去最大となった。



収益の柱となる「販売」「広告」とも大きな落ち込み



 あらためて書くまでもないが、この出版大手2社が、なぜ、ここまで大幅な赤字を出したかといえば、販売収入、広告収入という出版社の収入の2大柱が、いずれも大きく落ち込んだからだ。
 出版社の場合、一般的に、雑誌部門、書籍部門、広告部門で前年比を出しているが、講談社の場合、その落ち込みは、以下のとおりだ。
 
・ コミックを含めた雑誌部門--------------前年比93.7%
・ 書籍部門----------------------------------前年比92.1%
・ 広告収入----------------------------------前年比89.8%

 つまり、どの部門もみな落ち込んでおり、とくにひどいのが広告。これは、昨年の金融危機以来の大不況で、広告出稿が著しく落ち込んだためだ。これは、小学館もまったく同じだ。



出版というビジネスモデル自体が過去のものに


 しかし、出版社の赤字の深刻な問題は、この広告不況にあるのではなく、雑誌、書籍の販売の落ち込みにある。つまり、雑誌、書籍というプリントメディアがどんどんユーザーを失っていることが、このままでは取り返しのつかない事態を招く可能性が高いのだ。

 もはや、出版(プリントメディア)というビジネスモデル自体が、過去のものになりつつある。それを象徴するのが、漫画の落ち込みである。これは、別の機会に書くが、2005年を境に、漫画は、雑誌、コミック(単行本)とも急速に落ち込むようになった。



『CanCam』は、前年同期比24.3%減の34万6000部



 続いて落ち込みが激しいのが、月刊誌、週刊誌などの雑誌群だ。以前は、部数を伸ばしている雑誌もあったが、ここ2、3年は、落ち込み方に多い少ないはあっても、ほとんどの雑誌で部数が落ちてきている。

 雑誌の実売部数を発表しているABCレポートによると、2008年下半期の雑誌発行部数が前年同期に比べて伸びたのは39誌ある。ただし、伸びたといってもわずかで、ほとんどがピーク時の部数を下回っている。
 その一方で、部数が落ちたのは、なんと106誌もある。

 女性誌で見ると、一時は50万部を超えて1人勝ちだった小学館の『CanCam』は、前年同期比24.3%も落ち込み、34万6000部となった。かつて一時代築いた光文社の『JJ』も24.1%減の約11万部と、もはや完全に低迷し、2009年に入ってからは10万部を切るようになっている。
 女性誌の場合、部数が10万部を割ると、ほとんどが赤字となり、維持が難しくなる。
 昨年の秋に休刊した講談社の『スタイル』は、10万部を大きく割り込んでいた。

幻冬舎の新・女性誌『GINGER』の創刊は時代錯誤!

 
 そんななか、2009年3月に幻冬舎から新・女性誌『GINGER』が創刊されたので、私は正直、驚いた。
 この会社は、時代をまったくわかってないのではと、目を疑った。創刊広告のコピーに「時代が変わる。女性誌が変る。GINGERが変えていく。」とあったが、悪い冗談ではないのかと思った。

 不思議なことに、幻冬舎はここ2、3年で、雑誌を3つも創刊している。私に言わせれば、まったくの時代錯誤としか思えないが、これも1つの戦略なのだろうか? 「24時間仕事バカ!」とうキャッチフレーズの総合男性情報誌『GOETHE』は、事実、まったく売れていない。

 もはや、プリントメディアに時代を変える力など、ありっこないのだ。このことがわからないと、今後、出版社は大やけどをする。いかに、傷つかずに、雑誌を休刊させていくかが、今後のテーマだ。
 あと、1、2年で、日本の雑誌は多くが淘汰されると、私は思っている。


 

『週刊ポスト』は、15.9%減。『週刊現代』は20.6%減



 さらに、雑誌でいえば、今後、月刊総合誌、月刊エンターテイメント誌、週刊誌、写真週刊誌、女性週刊誌などは、どんどん淘汰されていくだろう。
 小学館、講談社にとって、『週刊ポスト』と『週刊現代』は、会社を代表する週刊誌だが、この両誌とも2008年下半期には、大きく部数を落とした。
 『週刊ポスト』は、15.9%減。講談社の『週刊現代』は20.6%減である。

 出版業界のなかにいるので、あまり個別のことに触れられないが、講談社の写真週刊誌『フライデー』も、光文社の『フラッシュ』も、もはや部数減は止められない深刻な状況にある。

 今回は、小学館の赤字決算で、出版界の最近の状況をまとめてみたが、結論は簡単だ。ビジネスモデルを変えるか、思い切った縮小均衡を測る以外、出版社の赤字は解消できないところまできている。
 雑誌や本などつくっていないで、社員の半分をデジタルコンテンツ制作に投入するなど、ともかく思い切った改革が必要だ。いつまでも紙にしがみついていては、メディアとしての価値も失われる。