メディアの未来[016]内外タイムスが自己破産を申請。倒産までの二転、三転の教訓 印刷
2009年 12月 02日(水曜日) 20:24

 

夕刊紙「リアルタイムス」発行の内外タイムスが、11月30日、自己破産を東京地裁に申請した。帝国データバンクによると、負債総額は約26億7700万円。

内外タイムスの経営不振は、これまでずっと囁かれてきており、2009年6月には、媒体名を「リアルスポーツ」に変更して起死回生を図ったが、息の根を止めたのは、不況による風俗広告の激減とネットシフトだったようだ。

 じつは、内外タイムスは1993年に、経営難から和議を申請し、2000年にいったん弁済を終了している。しかし、その後も不安定な経営が続いていた。

そんななかで、今年の6月には媒体名を「リアルスポーツ」に変更した。そして、8月31日発行分をもって、創刊以来長く親しまれた「内外タイムス」を終刊させ、翌日の9月1日発行分から「リアルスポーツ」として“新創刊”した。しかし、もはや読者のネットシフトは進んでいて、新しい読者をまったく獲得できなかった。

 

内外タイムスは戦後、大手紙のダミー夕刊紙 として出発した

 

 もともと内外タイムスは、読売新聞系のダミー夕刊紙として、戦後のGHQの紙統制を逃れるために創刊された。この経緯についてはここでは触れないが、今回の倒産で、ダミー夕刊紙はすべて姿を消してしまった。ちなみに、大手紙のダミー夕刊紙として出発した新聞は、「新大阪」(毎日新聞系)、「名古屋タイムス」(中日新聞系)、「フクニチ新聞」(西日本新聞系)がある。

内外タイムスは、昔(1980年代)は、プロレス記事を扱っている数少ない日刊紙だった。

東京では、「東京スポーツ」と双璧をなす夕刊紙として親しまれてきたが、夕刊紙の定番メニューといえば、競馬・競輪などのギャンブル、野球などのスポーツ、芸能ゴシップ、そしてフーゾク情報だろう。

私の知り合いにも、内外で記事を書いていたライターや記者がいる。「フーゾク新聞」とバカにされても、彼らが必死に記事を書いていたよき時代がなつかしい。

 

フーゾク広告なくしては成り立たなかった夕刊紙の経営

 

内外と言えば、「3行広告」というくらいフーゾク広告が入っていた。しかし、ここ数年で、これらの広告はほぼネットやケータイに移った。これを目当てに夕刊紙を買っているのは、いまでは50代以上の男性だけだろう。

そんなこともあり、内外タイムスは2009年4月から紙面を一新し、フーゾク情報記事をなくして、政治、経済、芸能スポーツ、ギャンブルのエンターテイメント中心に編集方針を変えた。これは、新オーナーとなった不動産会社「アムスインターナショナル」の意向だった。

しかし、これで、フーゾク広告はほぼ入らなくなり、フーゾク(エロ)とギャンブル目当てに内外タイムスを買っていた読者は急減してしまった。

ここから、内外タイムスは2二転三転しだす。たった1カ月でフーゾク記事を復活させ、6月からは紙名を変更するという大リニューアル作戦に打って出たのだ。しかし、いったん離れた読者は戻るべくもなく、若い読者の紙離れは加速度的に進んでいて、紙面がそれに追いつけない状況になっていた。

今回の内外の倒産で、今後は、ほかの夕刊紙がいつ終局を迎えるかに、業界の焦点は移った。

 

紙は消えてもウェブは残った。その意味するところは?

 

ところで、内外タイムスには公式ウェブサイトがあったが、このサイトは自己破産申告後すぐに、「リアルライブ」と名前を変え、運営を続けている。サイトの運営を担当していたウェブ制作会社「フェイツ」が今後を引き継ぎ、内外タイムス社から完全に分離して単独でサイトを運営していくという。過去の記事もすべてフェイツが引き継ぎ、一部従業員や記者も引き継ぐことになった。

これをもってしても、もう新聞・出版のプリントメディアの時代は去ったと言うしかないと思う。

  

    けっこうアクセスがある「リアルライブ」。エンタメ系の情報は紙よりウェブに移っている