メディアの未来[018]2009年回顧と電子書籍リーダー普及の可能性 |
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2010年 1月 06日(水曜日) 17:14 |
2010年が明けたので、ここで激動の昨年を回顧して、今後のことを考えてみたい。昨年は、既成メディアの衰退が、日に日に顕著になった年だった。新聞、テレビ、出版、広告代理店……と、軒並み赤字に転落し、まさに、ブロードキャスティングモデルからネットワーキングモデルへの転換期が来たと言えるだろう。これは、パッケージメディアの衰退をもたらし、今後はダウンロードメディアが主流になりことを意味している。 では、どんなことがあったのか? 整理してみるために、業界別5大ニュース(10大ニュースでは多すぎる)でまとめてみた。
■2009年の出版業界5大ニュース (自選) 1、休刊誌(廃刊)相次ぐ、老舗・看板雑誌も続々 2、出版業界、書店の再編が加速、大日本印刷が主導 3、グーグルのブック検索問題で大騒ぎ 4、大手から中小まで出版社の決算は軒並み赤字 5、アマゾンのキンドルが米で人気、世界発売に
■2009年インターネット5大ニュース (12月31日 産経新聞を参照) 1、ツイッター“元年”「だれでもどこでもツイッター」 2、 政権交代を契機に進んだ「政治のネット化」 3、「芸能人ら逮捕で“祭り”相次ぐ」(押尾学や酒井法子事件) 4、「ダウンロード違法化」を盛り込んだ「改正著作権法案可決」 2010年1月から施行 5、「ウェブからリアルへヒット多発」。(スーザン・ボイルなど)
■米新聞業界の2009年5大ニュース ( 業界紙「Editor & Publisher」から) 1、記録的な人員削減(新聞業界全体で2万1000人がレイオフ) 2、無給休暇の強要(経費削減策) 3、破産(トリビューン社などが破綻) 4、デンバーとシアトルが1紙だけの街に 5、デトロイトの新聞宅配週3回に
■2009年ITメディアの5大ニュース (自選) 1、スマートフォン(とくにiPhone)が人気に 2、Twitterが大ブーム 3、クラウド・コンピューティングの台頭 4、グーグル・ブック検索で大騒動 5、マイクロソフトと米ヤフーの提携
■2009年映画業界5大ニュース (2009年12月31日 MovieWalker参照) 1、3D映画元年 2、マイケル・ジャクソン急死『THIS IS IT』の大ヒット 3、『おくりびと』アカデミー賞外国語映画賞受賞&『つみきのいえ』アカデミー賞短編アニメ映画賞受賞の快挙 4、『ROOKIES 卒業』テレビ発映画の強気、85億円 5、ロブ様大ブレイク『トワイライト』シリーズ熱狂
■ そのほか2009年メディア業界(新聞、テレビ、出版、ネットほか)の気になったニュース (ランダムに列記) ・ TBS、テレビ朝日がYouTube参入 ・ 1分ごとに美人が時間を知らせてくれるサイト「美人時計」大ヒット ・ 2ちゃんねる、シンガポールの「PACKET MONSTER INC.」へ譲渡 ・ TBS、電通など軒並み赤字に転落。 ・ 政権交代で、記者クラブ撤廃の流れが ・ 地デジの暗礁化 ・ 毎日新聞が共同通信と提携、中央紙から転落
ざっとこんなところなったが、こうしたことをふまえて、既成メディアは今年はもっと大きく変わっていくだろう。 とくに、出版界は、アメリカでキンドル(Kindle)に代表される書籍リーダーが大幅に伸びているので、急速にデジタル化が進むと思う。このアメリカの動きを追うように、日本の出版界も変わっていかざるをえない。
1月3日の毎日新聞が『米は「電子書籍元年」 割安感、利便性受け』という記事で、そのことを書いている。記事のリードには《先進地の米国では、ネット通販大手、アマゾン・ドット・コムの端末「キンドル」がブームの火付け役となり、ソニーも自社端末「リーダー」で追う。日本でも両社が本格展開を計画しているほか、NECやシャープも参入をうかがっており、日本にもブームが波及するか注目される。》とある。
キンドルにソニーリーダー(Sony Reader)、それにバーンズ・アンド・ノーブル(Barnes& Noble)のヌーク(Nook)とも、昨年末のクリスマス商戦では「ウィッシュリスト(欲しい贈り物)」で1、2位を争う人気商品に浮上した。そして、クリスマスの日には、印刷版よりキンドル版の本がより多く売れた。 クリスマスの日には消費者は一般にあまり買い物に外出せず、オンライン・ショッピングが賑わう傾向がある。しかし、そんなことを差し引いても重要なことは、電子書籍リーダーが、これまで存在しないに等しかったE-BOOK市場を確立してしまったことだ。
電子書籍リーダーの人気は、1冊分10ドル前後と紙の書籍(ハードカバー)の半額以下で購入できること。また、手軽に持ち運べ、大量の書籍をダウンロードして取り込めることにある。さらに、画面では文字を大きくできるため、最近では高齢者にも利用が広がっている。 こうなると、出版社はあわてて読者のE-BOOKへの大挙移行に対処しなければならない。すでに、アメリカではそうした動きが始まった。しかし、日本ではまだまだだ。
以前に私がこの欄で書いたように、日本で電子書籍リーダーが普及するかどうかは、まず、コンテンツが何十万という単位で集まるかどうかにかかっている。そして、毎日記事が書いているように、再販制度という大きな壁もある。
以下、毎日記事から引用する。
《ただ、日本でも電子書籍ビジネスが急拡大するかどうかは未知数だ。日本の場合、書籍の定価が再販制度で決まっているうえ、出版業界では、単行本を文庫本化して価格を引き下げるシステムを長らく採用しており、電子書籍端末で米国のように紙の書籍の半額以下の価格で売るのは難しいと見られるためだ。
さらに、出版業界では、電子書籍の普及が取次業者や書店が介在する既存の書籍流通システムを崩壊させることへの懸念も根強い。再販制度で定価販売される紙の書籍は、出版社約7割、取次業者約1割、書店約2割とおおまかな収益の配分が決まっており、電子端末が普及すると、取次業者や書店の役割が縮小してしまいかねないためだ。》
つまり、日本の場合、かつて失敗した電子書籍リーダーが再登場したとしても、こうした流通システムが存在する限り、コンテンツ提供側の出版社は決定的にはデジタルに踏み切れないのだ。 しかし、イノベーションはどんどん進むので、うかうかしてはいられないだろう。どこかが思い切ってやれば、書籍のデジタル販売は一気に広がるに違いない。ただ、どこがやるかだ。それとも、みんなでまとめてやるかだが、その場合は、既存書店、トーハンや日販などの流通大手は当然、消滅していかざるを得なくなる。
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