[164]「紙と電子」の両方を持つアマゾンが米書籍市場で一人勝ち。では、日本は? |
2013年 5月 15日(水曜日) 15:11 |
アメリカの『Publishers Weekly,』(05/11/2013)の記事は注目だ。なんと、アメリカでは書籍のオンライン販売(紙+電子)が全書籍販売の44%に達したというのである。これは、2012年のアメリカの出版の年次レポートからのデータで、この記事ではその概要が明らかにされている。
Online Retailers, E-books Gained in 2012:Bowker report puts e-commerce sales at 44% of book market, この44%という数字は、書籍のチャネル別の売上。つまり、アマゾンに代表されるオンライン書店の売上が前年の39%からさらに5ポイント伸びて44%になったのである。それに対して、大型書店チェーンは26%から7ポイント落として19%。独立系書店は6%となっている。 ここからわかるのは、リアル書店の衰退がますます加速しているということだ。
では、注目の電子書籍はどうなのだろうか? 電子書籍は、全書籍への支出構成比で11%(前年の7%から4ポイント上昇)。購入点数では22%(前年の14%から8ポイント上昇)している。つまり、アメリカにおける電子書籍は全書籍(紙+電子)に占める割合で2割強まで普及してきたのである。 ちなみに、フォーマット別支出ではペーパーバックが43% で1位である。 それでは、電子書籍の端末別の売上はどうなっているのだろうか? もちろん1位はアマゾン「Kindle」で40%(前年の42%から2ポイント下落)。しかし、「Kindle Fire」を加えた「Kindleファミリー」では5割を越えている。身売りが伝えられるB&Nの「Nook」は15%。 電子書籍端末かタブレット端末で電子書籍を購入した消費者は、1位「Kindleファミリー」で55%、2位「Nook」で14%、3位「iPad」を含むタブレット端末で13%となっている。
以上、いずれのデータからも、アマゾンの圧倒的な強さがわかる。なぜこれほどまでにアマゾンが強いかと考えると、それは、紙も電子も両方そろっていて、しかもそのサービスが簡単・便利だからだろう。これは、電子書籍だけのアップルと比べて見れば、よくわかる。 つまり、いまのところ、ユーザーは紙も買うし電子も買う(もちろん個々のユーザーはどちらか片方しか買わない)。それを、これまでの既存出版界(とくに日本の)は二者択一で考え、たとえば「電子化が進めば紙は売れなくなる」と恐れてきた。ところが、アメリカを見ると、少なくとも現状ではアマゾンのビジネスモデルのおかげでそうはなっていない。 となると、書籍市場においては、いまのところ、紙とデジタルを同時に提供することが正解ということになる。
ただし、これはあくまでアメリカの話である。リアル書店が少ないアメリカでは、紙もオンライン購入になるのは当然だし、同時に電子があれば、そのほうが便利だというユーザーはそちらを買う。これは好ましいことだ。 ただ、問題になるのは、電子書籍が紙より価格を安くしないと売れないこと。また、既存出版社ではなくとも、誰でも出版できる(セルフパブリッシング)ことだ。ということは、今後、電子に全面移行していくことは、既存出版社にとっては、会社を縮小することにしかつながらない。この点だけは、日米、どちらも同じだ。 「紙+デジタル」のプラットフォームで有利に立ったアマゾンだが、この矛盾を解決してはくれない。となると、既存出版社は「紙+電子」をいまのまま続けて縮小を受け入れるか、あるいは電子だけに特化してなんとか大きなシェアを取って生き残るしかない。もちろんどちらも選択せず、別のカテゴリービジネスに進出する方法もあるが……。 |
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