[170] 世界人口予測(国連発表)で見えてきた「今後の世界」について考える |
2013年 6月 20日(木曜日) 03:15 |
6月13日、国連(UN)は最新の世界人口予測報告書(United Nations report)を発表した。それによると、現在の世界人口は72億人。向こう12年の間にさらに10億人の増加が見込まれ、2050年には96億人、2100年 には109億人に達するという。 人口増加は、主に発展途上国を中心にして進み、その大半がアフリカとアジアで起こると予測している。現在40億人の人口を擁するアジアは、将来にわたって最大人口を維持するが、2050年の50億人強をピークに減少に転じる。
UW research: World population could be nearly 11 billion by 2100
人口予測は統計予測のなかでも、確実性がかなり高い。また、人口ボーナス、人口オーナスという概念で知られるように、人口は経済のかなりの部分を左右する。人口が増えれば、経済は成長し、減れば縮小する。つまり、人口予測はそのまま経済成長の予測と考えることもできるので、このことを踏まえて、将来、私たちはどんな世界で生きていくのかを、以下、考えてみたい。
■中国は2030年から急速な人口減に見舞われる
それでは、気になる国別の人口予測を見てみよう。 国別では現在、中国の13億人とインドの11億人が突出しているが、今後の推移を見ると両国は大きく異なる。中国が2030年の14億5000万人をピークに急激に減少に転じるのに対して、インドは2060年ごろまで人口の増加が続くからだ。インドが中国を抜いて世界一の人口大国になるのは2028年とされ、この時点で、インドの人口は14億5000万人に到達する。 ということは、中国経済は2030年ごろにはピークアウトし、インド経済は中国失速後も成長を続けるということになる。 それでは、世界のどんな国が、今後も人口増加を続けていくのだろうか? 中国、インド以外では、インドネシア、イラン、ブラジル、南アフリカ、ナイジェリア、エチオピアなどが挙げられている。 現在、発展途上国とされる国では、女性ひとりに対する子供の人数の平均は急速に減少しているが、逆に向こう数十年にわたってナイジェリア、ニジェール、コンゴ民主共和国、エチオピア、ウガンダ、アフガニスタン、東ティモールなどの国々では、女性ひとりに対する子供の人数が5人を超えるなど高い出生率が予測されている。
The world’s population grew to seven billion in 2011. UN Photo/Eskinder Debebe (国連のサイトより)
■アメリカの人口は順調に増えるので経済衰退はない
では、先進国はどうだろうか? こちらは、軒並み減少か横ばいである。すでに日本は人口減少に入っており、欧州諸国も横ばいか減少に転じている。日本の場合は、このままで行くと2100年には8500万人を切ってしまうという予測になっている。 ところが、先進国のなかで唯一の例外がある。アメリカだ。アメリカの現在3億1000万人の人口は、今後も増え続けるとされ、2100年には4億6000万人に達するというのだ。 となると、人口増の国の経済は成長を続けるという法則から見て、アメリカ経済は今後も順調に成長を続けていくことになる。ついこの間まで、アメリカ衰退論、アメリカ経済崩壊論がさかんに言われたが、この国連の人口予測から見ると、そうした事態は起こらないことになる。 また、「今後は米中2極時代になる」「米中はやがて逆転する」とも言われた。しかし、これも、中国人口が2030年をもってピークアウトするならば、そんな世界はやってこないことになる。 やってくるのは、20世紀を支配したアメリカが、21世紀も支配し続ける時代が続くということだ。人口数と増加を見れば、インドを含むアジアやアフリカの発展が考えられるが、1人あたりの経済規模が小さいことを考えれば、やはりアメリカが絶対有利だ。 では、日本はどうだろうか? すでに人口から見れば衰退期に入った経済は、今後も縮小を続けるとしか言いようがない。よほど大きな幸運に恵まれるか、圧倒的なイノベーションが起こらない限り、日本経済は衰退し続けるだろう。
■ゴールドマンサックス「BRICs]レポートは外れる? ここで思い出すのが、2001年に発表され、世界中でもてはやれたゴールドマンサックスの「BRICs」レポートだ。以前のこのブログでも紹介したように、そこには、中国のGDPは2017年には日本を、2039年にはアメリカをも上回り、世界最大の経済大国になると書かれていた。さらに、2050年の GDP は2位のアメリカを大きく上回り、アメリカの約2倍の44兆4530億ドルに達すると予測されていた。 しかし、日中逆転は、予測より7年も早く実現したが、米中逆転は起こるかどうか疑わしい。国連の報告書を見れば、そんなことは起こらないと考えたほうがいいだろう。私は、以前から、「米中逆転」はもとより、「米中2極化」「米国崩壊」などありえないと、一貫して主張してきた。著書にも、メルマガにも、そのことは詳しく書いてきた。 すでに中国経済は衰退期入りしたとの見方も出ている。国連の人口予測より早く、人口減が起こる可能性もある。中国は長年「1人っ子政策」を続けてきたので、その結果として労働力人口(15~64歳)の増加率が、2015年を境に落ち込んでいく(中国社会科学院の予測)。つまり、2015年頃から人口オーナス期入りし、その後は一気に高齢化社会が進んでいく。ただ、それでも全体人口は増え続けていき、2030年にピークを迎えるということだ。 現在の出生率は1.56。一方、アメリカは2.08である。
■「中国が世界一の経済大国に」としたOECDレポート
ところが、こうした見方とまったく違う未来予測をしているのが、昨年11月9日、経済協力開発機構(OECD)が公表した「2060年の世界経済に関する超長期予測レポート」だ。それによると、2060年の世界では、日本経済が世界経済に占める割合は2011年の6.7%から3.2%に低下、日本は「経済小国」に転落する。 その一方で、中国はアメリカをもしのぎ、世界一の経済大国としての地位を固めている。なお、インドもアメリカをしのぎ、50年後の世界は、中国、インドが世界を支配しているというのだ。ちなみに、このときの中国の世界のCDPに占めるシェアは27.8%。なんと日本の9倍だ。この未来予測は、2005年の購買力平価をベースに世界のGDPに占める割合を試算。2060年までの日本経済の平均成長率を1.3%、米国が2.1%、中国が4.0%、世界の平均成長率を2.9%などと仮定し算出している。
■人口増とイノベーションが経済を成長させる
このOECDレポートでは、アメリカは、早くて2016年(たった3年後)にも 中国に追い超され、いずれはインドにも追い越されることになっている。さらに中国とインドを合わせれば、まもなくG7全体の経済力をも追い超し、2060年には OECD加盟国全体を追い越すという。 なんという脳天気な未来予測だろうか? 前記したように、この予測は経済の平均成長率を仮定するところから始まっている。つまり、仮定を間違えれば、誤差は大きくなる。しかも、どの国も景気後退はあっても、基調としては成長していくしていると仮定している。 経済成長の要因はいくつかある。なかでも人口とイノベーションは2大要因である。人口が増え、社会を変えるようなイノベーションを起こして、初めて経済成長が可能になる。残念ながら、いまの日本はこの2つの要因を欠いている。 |
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