15/07/23●日本経済新聞がなんと英『ファイナンシャルタイムズ』を買収。高値掴みか? |
Pearson(ピアソン)が、傘下の経済紙『Financial Times 』(FT)を8億4400万ポンド(約1600億円)で、日本の日経カンパニーに売却すると発表し、同時に日経もピアソンと買収に合意したことを発表した。ちょっと、驚きである。なぜなら、FTはデジタル化に最も成功した既存メディアだからだ。 Pearson CEOの John Fallon(ジョン・ファーロン)は、"The Board and I are confident that the FT will continue to flourish under Nikkei’s ownership.”(ボードも私もFTが日経の下で繁栄を続けていくと確信している)と言っているが、本音かどうかわからない。報道によると、今回の買収には、The Economist Groupの50%は含まれていない。ピアソン側のアドバイザーは、エバーコア、ゴールドマンサックス、JPモルガン・カザノブという。 FTは2002年からオンライン課金モデルを始めており、現在、サブスクライバー数は72万人(紙+オンライン)で、このうちデジタル・サブスクライバーは50万人に達している。これだけ見ると、日経は「いい買い物」をしたように見えるが、英国メディアだけにハンドリングは超難しいだろう。 (追記) その後の報道を見ると、この買い物は、日経が調整後営業利益の35倍、実質価値のおよそ3倍の金額を支払うことになるので「高い買い物」のようだ。日本のメディア、ネット民は日経のバクチを賞賛しているが、だいたいの場合、こういう声はあてにならない。しかも、日経は買収額をキャッシュで払うというので、持っている資産のほぼすべてをつぎ込むことになる。 ピアソンのプレスリリースによると、FTの昨年度の営業利益は2400万ポンド(約46億円)だから、1600億円を回収するにには30年以上かかることになる。結局、ピアソンは電子版が成功しているとはいえ、これ以上FTを持っていたとしても未来はないと、高値でつかんでくれところに売ったのだろう。これで、日本のメディアが世界に羽ばたけるなどと言っている向きがあるが、希望的観測だと思う。欧米の優秀なジャーナリストが親会社が日本の会社になった企業にいつまでもいるかどうかもわからない。もう少し、冷静にモノを見たい。 |