[282]北がICBM発射実験に成功。憲法改正では日本は独立も安全も確保できない。北はもちろん、中国、ロシアとの間に「MAD」を! |
2017年 7月 05日(水曜日) 17:35 |
7月4日、北朝鮮は新型の弾道ミサイルを発射し、日本海の日本のEEZ(排他的経済水域)に落下させた。当初の報道によると、飛距離は930キロほど。中距離ミサイルではないかということだったが、北朝鮮は「ICBMの実験に成功した」と発表した。そして、今日、ティラーソン国務長官は、なんとICBMと認めたのである。 米メディアの報道によると、北のICBM「金星14号」の射程は5600キロほどあり、アラスカまで届くという。 こうした報道を受けて、今日の『昼オビ』などのワイドショーでは「なぜこのタイミングでICBMの発射実験を行なったのでしょうか?」ということで、識者たちが各種見解を述べていた。ただ見ていて、ここまできてもまだ他人事、危機感が足りないような気がした。というか、日本はなにもできないのだから、見ているより仕方がないというムードだ。
朝鮮中央通信 が公開したICBM「金星14号」の写真
はっきり書けば、ここまでは、トランプの惨敗である。「あらゆる選択肢」などと言って「脅し」をかけたにもかかわらず、金正恩はやりたい放題やってきた。「この男は他にやることはないのか」(North Korea has just launched another missile. Does this guy have anything better to do with his life?)と言っても、もう手遅れだ。金正恩のほうは、このミサイルを「独立記念日(July 4th)の贈り物とし、「今後も大小の贈り物をしばしば送ってやろう」と言っているのだから、これは余裕だ。 この若き独裁者は、アメリカは絶対攻撃できないと確信して、このゲームをやっているのだろう。
それにしても、朝鮮半島海域にいるはずだった2つのCSG(空母カール・ビンソンと空母ロナルド・レーガン)はどこに行ってしまったのだろうか? 「SOUTH FRONT」の最新の「US Carrier Strike Groups Locations Map – June 16, 2017」によると、カール・ビンソン(CVN70)は単に「U.S. 7th Fleet Area of Operations」となっているだけ、ロナルド・レーガン(CVN76)は「South China Sea」となっているだけだ。 https://southfront.org/us-carrier-strike-groups-locations-map-june-16-2017/
北朝鮮がアメリカ本土まで届くICBMを本当に開発・保有すれば、これまで日本の平和と安全を守ってきたアメリカ「核の傘」(nuclear umbrella)は消滅する。すでに、ロシアと中国の間には「相互確証破壊」(Mutual Assured Destruction, MAD)が成立しているが、これが北朝鮮との間にも成立すると、アメリカは本当に北朝鮮を攻撃できなくなる。 したがって、軍事オプションを取るなら、もう本当に時間がない。事態を放置すれば放置するほど悪化し、後戻りできなくなる。
そうなると日本は、北からの「脅し」(threat)に対抗する手段がなくなる。北朝鮮が日本を攻撃しても、アメリカは北朝鮮を攻撃できなくなるからだ。これは、日本にとって最悪のことで、彼らになにを要求されても従うしかなくなる。アメリカにいくらその気があろうと、また日米同盟があろうと、日本を守ってはくれない。 これは、中国との間に「日中尖閣戦争」が起こったとき、アメリカが参戦しないのと同じ理屈だ。アメリカは口では「日本を守る」(尖閣の場合は「安保の適用範囲」)と言っても、それを実行するわけがない。歴史を見れば、これは明らかだ。自国の安全保障を犠牲にして同盟国を助けるような愚かな国は存在しない。 それでは日米安保違反ではないかという声がある。しかし、その根拠となる安保第5条は、「日本への攻撃はアメリカへの攻撃」と解釈できるものの、「自国の憲法上の規定及び手続に従って」とある以上、アメリカが自動参戦してくるなどということはありえない。なにより議会が大反対する。つまり、万が一、北朝鮮に攻撃されたら、日本は見捨てられる。
こうした状況が目前だと言うのに、安倍首相は憲法改正にこだわって、2020年の東京五輪開催の年を新憲法の施行の年とし、それに向かって進んでいる。 5月に発表されたビデオメッセージでは、9条の1、2項(「戦争放棄」と「戦力の不保持」)はそのまま残して、3項を加え、そこに自衛隊の合憲化を明記するというという案を提示した。本当に、姑息で、その場しのぎとしか言いようがない。なにより、憲法を改正して軍を正当化すれば、それで日本が「独立国家」(independent state)となり、安全と平和が確保できると考えている点が、認識違いもはなはだしい。なぜなら、憲法は国内法であるから、国際法によって日本の「主権」(sovereignty)が認められない限り意味がないからだ。いまの日本は不完全主権しか持っていない「半独立国家」である。しかも、アメリカに安全保障を丸投げするしかない「従属国」(tributary state)である。
憲法改正と言うと、多くのメディアや識者がいつも決まって言うことがある。「十分な議論を尽くすべきです」である。しかし、「どんなことでも話し合えば解決できる」というのは一種の“宗教”で、話し合えば話し合うほど本筋から遠ざかる。とくに、憲法に関しては、改憲派と護憲派の溝が深まるだけだ。 それに、改憲が本当に必要だったら、もうとっくにできていたはずだ。なぜできなかったか? それは、日本人に現在のような危機感がなかったからだ。 さらに、日本人特有の“ずる賢さ”があったからだと、私は思う。意識していようといまいと、外から見ると日本人はずる賢く見える。とくにアメリカから見るとそうだ。 なぜ、かつてのエネミーで、現在はのうのうと暮らしている人間たちを、自分たちの血を流して守ってやらなければならないのかと、思うわけだ。
戦後70年以上、あまりに長くアメリカによる庇護が続き、それによって平和と安全が保たれてきた。その結果、私たちはこの状態を「自然環境」だと思い込み、平和と安全は自分たちの力でつくり出すとものだということを忘れてしまった。そのせいで、いくら憲法改正などと言われても、「知らぬ存ぜぬ」で通してきたのだ。 しかし、もう「知らぬ存ぜぬ」ではすまない。憲法もそうだが、いずれ、自分たちで自分たちを守る、そのための「抑止力」(nuclear deterrent)を持たねばならないということになる。つまり、敵の核に対抗するための核を持つということだ。そうして、北朝鮮、中国、ロシアとの間に「MAD」を成立させない限り、日本の独立も安全もない。これは、要するに「核武装論」だ。それに比べると、憲法改正などじつに小さな問題ではないだろうか? |
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