[298]あまりに“哀しき”官僚人生。なぜ、モラルや倫理を捨ててまで、おバカな政治家、権力に従うのか? |
2018年 3月 15日(木曜日) 21:57 |
「森友文書改ざん」騒動が続いている。今回の発端は3月2日の朝日新聞報道。以来、時間があればテレビのワイドショー報道を見続けてきたが、もっともポイントを押さえていたのは「ひるおび」ではないかと思う。 ほかの番組は、全体像がつかめていず、司会者の技量不足、コメンテーターの偏りなどにより、要点を得ていない。その結果、この事件のストーリーが見えてこないからだ。
いま、表に出ている官邸作成のストーリーと、本当のストーリーは全然違う。しかも、このストーリーの根底には、日本の組織が持つ致命的な欠陥、“ガラパゴスシステム”とも言うべき「終身雇用・年功序列」がある。そして、その前提の上にできた「内閣人事局」制度が、すべての元凶である。 だからこのシステムを変えない限り問題は解決せず、ここで佐川・前国税庁長官、麻生財務大臣、安倍首相、そして安倍明恵夫人ことアッキーを“血祭り”にあげても問題は解決しない。 なんで、国民の財産である国有地を、「右翼ビジネスは儲かりまっせー」と考えた“エセ教育者”籠池泰典氏にタダ同然で与えなければならなかったのか? 近畿財務局の人間も、財務省の人間も、いま本当に自分を恥じ、“哀しい”思いでいっぱいだろう。「忖度」などと言っているが、そんなことはありえない。あったというなら、それは「忖度したのではなく」、無理やり「忖度させられた」と言うべきだ。
『NYタイムズ』紙ほか欧米メディアが“極右”(ultra-right)と呼ぶ「日本会議」には、本物の愛国者、保守人間もいるが、籠池氏のような“エセ保守”もいることを、首相もアッキーも知っていなかったのか? すべての発端は、2014年4月25日に、アッキーが森友学園を訪問し、園児たちのロボット化された“愛国挨拶”にナイーブに感涙してしまったことにある。このときの写真を見せびらかせ、権力との仲の良さをちらつかせ、籠池氏はまんまと払い下げ交渉に成功してしまったからだ。 ここから、「却下するはずの案件」は「政治案件」になってしまった。さらに、同年の5月30日には、内閣人事局が設置され、官僚幹部の人事は官邸が握ることになった。
要するに、もう1年以上も続いてきた「森友騒動」は“アッキード事件”であり、政官の一種の“組織病”なのである。首相夫人アッキーが登場したことで、首相の取り巻き、その下の官僚組織は、真実よりも「つじつま合わせ」「言い繕い」が最優先になってしまった。上には逆らわない。たとえ、筋が通らなくとも、法に触れようと、上の言うことに従う。 これは、日本の組織特有の“風土病”と言い替えてもいい。本来なら、嘘をつくことは重大な犯罪、モラル、倫理に反するのに、これができてしまうのは、上が下の生殺与奪権を握っているからである。逆らったら、それで人生が終わりになってしまうシステムだからだ。 それが、「終身雇用・年功序列」システムであり、民間ではもう成立しなくなってきたこのシステムは、官僚組織ではいまも強固に生き残り、その実権を官邸が握ったことで、本当におかしくなってしまった。
「終身雇用・年功序列」システムは、「嘘をつく」「人を欺く」=「偽装」の“源泉”である。これは、これまでこの国で起こった偽装事件を振り返ればわかる。 つい先日も、神戸製鋼所のデータ改ざんが発覚したと思ったら、三菱マテリアルにも同様な問題が発覚、さらに日立製作所は国土交通省の認定に適合していないエレベーターを1万台超も設置していたことを発表した。 さらに遡ると、日産自動車と三菱自動車による燃費不正事件や、自動車部品メーカーのタカタの欠陥エアバッグ事件がある。また、東芝の粉飾決算事件も、データを偽造して株主と投資家、世間を欺く行為だった。 これらの偽装は、ほぼどれも組織ぐるみであり、上からの圧力がなかったら起こっていなかった。 偽装事件はまだまだ、山とある。2001年に発覚した牛肉偽装事件に端を発する一連の「食品偽装事件」もデータの偽造だった。雪印の牛肉、ミートホープ、赤福餅、白い恋人、船場吉兆など、みな虚偽記載を行なっていた。 さらに、2005年に発覚した「耐震構造計算書偽造事件」も同じだ。この事件は、裁判で A建築士の個人犯罪とされたが、そうではあるまい。しかも、それから10年たった後、今度は、旭化成建材のデータ改ざんが発覚した。 偽装と言えば、あの「STAP細胞論文」もそうだ。しかも、STAP細胞事件では、本当に痛ましい自殺者まで出ている。
いま、メディアと野党は、政府と財務省を追及することにやっきになっているが、このような日本の「風土病」をどうやってなくすかを、真剣に考えるべきだろう。なにしろ、この国では、食材、食品、鋼材、建築材、家、クルマ、企業決算書、研究論文など、ありとあらゆるものが偽装されているのだ。 いったい誰が、上からの圧力がなければ、そんな馬鹿げたことをするだろうか?(自己利益のためにする例もあるが、それはわずかな例しかない) 「終身雇用・年功序列」システムの中で生きなければならない官僚の人生は、本当に“哀れ”だ。このシステムは、年齢による差別を前提としているので、能力・実績はまったく評価されない。役所では、入省年次が絶対で、その序列は終身続く。評価されるのは、「よく動く」「よく言うことをきく」「よく気がきく」だけだから、いくらプロの仕事をしようと、国民のために尽くそうと、給料は上がらず、昇進もできない。 しかも、官僚の給料は、働き盛りの30代、40代のときに、民間の優良成長企業に比べたらはるかに安い。
要するに、官僚というのは、なにがあってもじっと我慢する職業なのである。したがって、給料は「我慢料」であり、「滅私奉公料」であり、今回のケースでは「嘘つき料」だ。ただし、我慢をし続けると、雇用は終身保障され、人生の最終段階では大きな見返りがある。だから、みな我慢するようになっている。 たとえば、佐川氏の場合、局長になったので給料は年間2200万円ほどになり、“上がり双六”としての国税庁長官をやれば退職金は約7000万円になる。そしてその後は、独法や息のかかった民間金融機関などに「天下り」し、さらに「わたり」を繰り返せば、数億円を稼げるようになっている。 しかし、そのためには、人間性を殺し、モラル、倫理観を捨て、文書改ざんをやったうえ、嘘までつかなければならない。 佐川氏に限らず、官僚、とくに財務省官僚はみなこの国のトップエリートであり、東大を出た優秀な人々だ。しかも、志(こころざし)を持って官僚になっている。それが、なぜ人生の後半になって、自分と同世代の“おバカ政治家”にこき使われ、さらに“おバカ野党”に人格攻撃までされなければならないのだろうか?
佐川氏が故郷いわき市から東京に出て、東大入学を目指して必死に受験勉強していた1970年代の後半、安倍首相は、成蹊大学を卒業すると南カルフォルニア大学に“遊学”し、その後、1979年に神戸製鋼所に”コネ入社“している。そして、1982年に、当時外務大臣だった父・晋太郎の下で秘書官になった。同じ年、佐川氏は公務員試験を突破して、念願の大蔵省(当時)に入省している。 それから、35年後、なぜ彼は、国会で虚偽答弁をし、公文書改ざんをしなければならなかったのか? いったい、誰のためにしたのか? 佐川氏の上司、麻生太郎財務相は、佐川氏より一世代以上年上である。しかし、この「浪花節だよ人生は」及び「財閥御曹司」大臣は、1960年代に学習院大学を卒業すると、スタンフォード大学大学院、ロンドン大学政治経済学院に留学したことになっている。しかし、2007年以降の公式HPでは、海外留学歴は削除されている。留学ならぬ“遊学”時代は、日本から送られてくる漫画を楽しみにしていたという有名な話がある。 この人物と首相に佐川氏は、国税庁長官就任にあたり「適材適所」と言われたのである。
人間が能力で評価されず、「御奉公」で評価される「終身雇用・年功序列」システムは、一刻も早く改正されなければならない。そうしなければ、官僚はいつまでたっても国民のために働かず、“哀しき”下僕人生を続けるだろう。 そして、日本の国力は、限りなく落ちていくだけだろう。国と国民のためを考えて行動している人々が、これほどまでに少なくなって、本当にこの国は大丈夫なのだろうか? |
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