2020年6月5日●新刊『コロナショック』(MdN新書)発売 |
私の新著『コロナショック 経済か、命か ―確実に訪れる大恐慌と日本の没落』(MdN新書、980円)が、6月8日に発売されます。 本書は、これまでメルマガで書いてきたコロナ関係の記事に加筆・修正し、さらに数多くの新データを加えて書きあげました。4月11日に退院後、ほぼ1カ月間、私はこの仕事に没頭しました。 ただ、毎日のように事態が進展し、新しい研究データが発表され、各国の政策が動くので、まとめるのに、本当に苦労しました。ともかく、コロナショックの全体像を俯瞰し、ポストコロナ後の世界がどうなるのかを展望しました。そうして、この数カ月で起こった前代未聞の出来事を、あとからキチンと振り返られるように記録していきました。
コロナショック (MdN新書) https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295200077?pf_rd_r
以下が、本書の「はじめに」と「目次」です。
はじめに
中国で、湖北省武漢市が「完全封鎖」されたのは、2020年1月23日のことだった。それ以前、1月16日に、日本でも初の感染者(中国人観光客)が確認された。1月末から、日本ではマスクが品切れで買えなくなり、2月になると横浜港にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が入港して、連日、「新型コロナウイルス 」(COVID-19:コビットナインティーン)について報道されるようになった。 1月最終週の週末、ニューヨークのダウ平均株価(NY株価)は約600ドル下げた。いま思えば、これが、世界をどん底に突き落とす「コロナショック」の始まりだった。
その後、中国ばかりか、イタリア、イラン、スペイン、アメリカと感染拡大が続き、死亡者も日ごとに増加した。 NY株価は2月24日に1000ドルを超える大幅下落を記録したが、その後も下落は止まらなかった。株価の急落を抑えるための「緊急売買停止措置」(circuit breaker:サーキットブレーカー)が4度も発動された。日経平均(日本株)も、NY株価と連動して下げ続けた。 そうして3月16日、NY株価はついに下落幅2997ドル10セントという過去最大を記録し、まさに「大恐慌」と呼ぶほかない状況に陥った。このNY株価の大暴落で、コロナショックは確定した。しかし、このショックは、過去のどんなショックとも違うものだった。
健康を人間の「基本的人権」(fundamental human rights)の一つとして、全人類の健康の達成を目標として設立された国際連合の機関に「WHO」(World Health Organization:世界保健機関)がある。このWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス(55)というエチオピア人の無能な事務局長が、新型コロナウイルスの蔓延を「パンデミック」(pandemic:世界的な大流行)と定義付けしたのは、なんと3月11日になってからだった。
日本で、政府が「新型コロナウイルス感染症対策本部」を発足させたのは1月30日。初動としては、わりと早かったと言える。 しかし、2月中に10回以上行われた会議は、全閣僚出席の下に本部長の安倍晋三首相(65)が冒頭に挨拶すると、すぐにお開きになった。毎回、10分程度で終わり、終わるとすぐに首相は関係者との打ち合わせを兼ねたグルメ会食に向かった。 日本ではなぜか検査数が抑えられ、その結果、感染者数統計も抑えられ続けたので、危機感はゼロ等しかった。
新型コロナウイルスとの戦いは、よく戦争にたとえられる。フランスのエマニュエル・マクロン大統領(42)は、感染拡大が進むと、「われわれは戦争状態にある」と述べ、国民に行動変容を求めた。 アメリカのドナルド・トランプ大統領(74)は、当初、「ただの悪い風邪だ」「いずれ消えてなくなるだろう」などとうそぶいていたが、事態の急変に追い詰められ、3月13日に「国家非常事態宣言」(state of emergency)を発出すると、一転して「自分は戦時の大統領だ。この戦争に打ち勝たなければならない」と言う始末だった。 安倍首相も、4月になって、ジャーナリストの田原総一朗氏(86)との会談の席で、「第3次世界大戦はおそらく核戦争になると考えていたが、コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と述べたというが、これは、世界各国のリーダーの認識を慌てて追随してみただけだろう。
いずれにせよ、コロナショックは、世界の国々に戦争と同じようような状況をもたらした。戦時に発令される「戒厳令」(Martial law)に準ずる緊急事態宣言が発令され、人々の行動は規制され、多くの自由が失われた。
しかし、新型コロナウイルスのような感染症との戦いは、戦争とは言い難い。そのような考えは、誤った対応につながる。ウイルスとの戦いには、戦争のような政治的かつ暴力的な勝利はない。敵を追い詰め、敵の経済を破壊し、敵の兵士の命を奪うというような戦いは、ウイルスとの戦いにおいてはありえない。 ウイルスとの戦いに勝利する方法は、たった一つしかない。戦いで失われる命を少しでも少なくし、ウイルスを撲滅するか、あるいはうまく共存していけるようにするかだけである。ただし、その間、私たちはこれまで築いてきた社会と経済をなんとか持たせ続けなければならない。
対ウイルス戦争に打ち勝つ手段として、私たちがいま手にしているのは、「検査」「隔離」「封鎖」だが、それらは確実な武器ではない。ウイルスに打ち勝つための確実な武器と言えるのは「治療薬」や「ワクチン」であり、これらはまだできていない。 つまり、いまは武器なしで戦っている状況で、武器ができるまでは、ひたすら耐えるほかに道がない。
日本で、世界とは異質の“規制が緩い”緊急事態宣言が発出されたのは、4月7日だった。以来、「命か経済か」という論争が続き、政府は、経済を優先し、国民生活(つまり命)への配慮が足りないと批判されてきた。 しかし、これは二者択一の問題ではない。生きることと経済活動をすることは、まったく同じことだからだ。人間、生きていなければ、経済も成立しない。 コロナ禍に関して経済の話をすると、命よりおカネが大事なのかと非難される。しかし、おカネがなければ命は救えない。食べるのにも、医療にもおカネがかかる。
当たり前だが、これまで人類は、経済の繁栄によって、飢餓、貧困、病気を克服してきた。その経済が崩壊してしまえば、コロナ禍の犠牲者を大きく上回る数の人々が命を落としてしまうだろう。 はたして、私たちは「命と経済」の両方を救うことができるのか? なによりもコロナ禍はいつどのように収束に向かうのか? そして、ポストコロナの世界はどうなるのか? これまでの情報を整理して、ここに、コロナショック以後の世界をできる限り展望してみたい。
コロナショック目次 第1章 対コロナ戦争、戦いは短期か長期か? ゴールドマンサックスの顧客向けレポート 国民がどんどん死んでいくのに耐えられない 感染拡大を収束させるための二つの方法 集団免疫による収束は本当に可能なのか? 投資家が望むのは「早期収束と第2波なし」 あと3年続くのか?「スペイン風邪」の教訓 ペストの蔓延で人類は人口の多くを失ってきた 20世紀以降はインフルエンザが猛威を振るった ペストの蔓延がルネサンスを用意した ポストコロナはいままでと違う世界になる
第2章 未来を救うワクチン、クスリ、検査キット
コロナウイルスはありふれたウイルス インフルエンザワクチンはほぼ効果なし 治療効果は期待薄だが重症化を防ぐ効果はある 実用化までにどれくらいかかるのか? 米中で熾烈を極めるワクチン開発競争 先を急ぐ英オックスフォード大学チーム 効果が期待できるとされる3つの既存薬 新薬、ワクチンへの繋ぎとしての既存薬 簡易検査キットが社会と経済を救う PCR検査も進化し唾液で簡易検査が可能に
第3章 ウイルスは人工的につくられたのか?
トランプ「チャイナウイルス」発言の真意 海鮮市場のコウモリからヒトに感染した なぜ中国は、武漢を全面封鎖したのか? ウイルスめぐる北京とワシントンの非難合戦 「ワシントン・ポスト」紙が口火を切った 動物由来か?人工か?どちらにも確証がない なんとノーベル賞学者「人工説」を唱えた モンタニエ博士はいわく付きの人物だった 「人口説」「生物兵器説」が立ち消えた理由 武漢で開催された「世界軍人オリンピック」 アメリカ人の3割が「人工説」を信じている
第4章 ウイルスは世界政府樹立への布石
ウイルス は「NWO」によってバラ撒かれた 陰謀論の首謀者は大富豪のビル・ゲイツ氏 ビル・ゲイツ氏「ありがとう」動画が大炎上 トランプ支持の極右が陰謀論をつくった ポストコロナ世界は「新しい中世」になる 「新しい中世」は「グローバル階級社会」 陰謀論は一般庶民の傷ついた心を癒す
第5章 コロナ制圧に「失敗した国」「成功した国」
イタリアの初動は意外にも早かった 段階的なロックダウンが感染拡大を招いた 医療崩壊で「命の選択」を迫られた現場 高齢化と家族同居で家庭内感染が進んだ トランプの無知と認識の甘さが招いた悲劇 なぜニューヨークは「感染爆発」したのか? 圧倒的に初動が早く的確だった台湾 優秀な人材のおかげで感染拡大は防げた 検査とトリアージの徹底で成功した韓国 世界一の検査数アイスランドの徹底ぶり 緊急事態宣言が遅れたフィンランド 子供たちに直接語りかけた女性閣僚たち 「集団免疫」目指すスウェーデンのギャンブル 東アジア、とくに日本はなぜ致死率が低いのか? ウイルスは変異し中国型と欧米型に別れた 第6章 なぜ日本は封じ込めに失敗したのか? 国内感染者が出ているのに中国人ウエルカム 対策本部を設置しても会議はたった10分 「ダイヤモンドプリンス」号の検疫で大失態 アメリカも英国も日本を批判する立場にない 寄港前夜にダンスパーティが行われていた 本当は封じ込めに成功していたという調査結果 海外渡航の禁止を打ち出せなかった政府 突然の学校休校と具体策なき首相会見 東京オリンピック開催をめぐるドタバタ 遅すぎた緊急事態宣言と空っぽの経済対策 医療の基本は「早期発見、早期治療」 感染データ独占のために検査数を絞ったのか? “省益”を優先して自分たちの検査にこだわる なぜ無能官僚が国を仕切るようになったのか? 政治家の劣化を招いた小選挙区制 まったく無意味な感染者数の比較報道 政権批判を忘れ事実を報道しないメディア メディアで信頼できる人間は誰か?
第7章 日本を「焼け野原」にした戦犯たち
一家に2枚の「アベノマスク」で信頼失墜 「動画コラボ」で“自宅くつろぎ”を見せ大炎上 自粛要請中に仰天の花見会、団体旅行 「アベノマスク」「コラボ動画」の発案者 安倍首相を裏で操るという“影の総理” 「世帯30万円」が「一律10万円」なったわけ 危機管理能力、見識を問われた厚労省トップ 危機感ゼロだった厚労省のトンデモ官僚たち 「クラスター」などの専門用語で煙に巻く PCR検査に関しての苦し紛れの言い訳 もっと合理的な21世紀型の対策がある 昭和の懐メロみたいな昔風の対策に固執
第8章 日本を後進国にした虚飾のアベノミクス
「オンライン授業」「テレワーク」ができない 給付金、休業補償が遅すぎるのはなぜか? 女性リーダーがコロナ封じ込めに成功した 世界でもダントツの「女性差別」国家 一生懸命働いているのに給料が上がらない 安倍政権の7年間をざっと振り返る 「3本の矢」とはなんだったのか? 「1億総活躍社会」で死ぬまで働くことに 世界でも類を見ない低成長を更新し続けた 「地球儀俯瞰外交」で世界中にバラマキ 就任前の押しかけ訪問パフォーマンス トランプのATMになってしまった日本
第9章 ポストコロナで日本は国家破産
経済成長率マイナス20〜30%もありえる コロナ収束後に日本は「焼け野原」になる 国債の無制限購入という「コロナ緩和」 株式市場は5頭のクジラによる「官制市場」 日本はより強固な「社会主義国家」になる GPIFが年金積立金運用で過去最大の損出 この非常時に「75歳年金法案」が国会審議 やがて「円」が暴落するときがやってくる 円安に賭けたウォーレン・バフェット氏 国民から取るだけ取って借金を返す 財産税で貧富の差を問わず資産を没収 本当のポストコロナは国家破産後に訪れる
第10章 金融バブルの崩壊と第二次大恐慌
英国の有名な童話『3匹のくま』の教訓 なぜ、「適温相場」は崩れるとされたのか? 「ミンスキー・モーメント」(バブル崩壊)の到来 経済予測はことごとく外れるだろう アメリカ経済は今後どこまで落ちるのか? 社会を底辺から支えるギグエコノミーの崩壊 株価再暴落と金融崩壊で「第二次大恐慌」に
第11章 できるのか「グッバイ・チャイナ!」
反グローバル化で国境は閉じられる グローバル化を止めれば経済成長も止まる 先に経済再開した中国がアメリカを逆転する? 医療分野で中国に依存してきたアメリカ 中国に「コロナ蔓延」の責任を取らせる 「中国寄り」のWTOを拠出金の停止で脅す トランプ政権の危険な「国際機関」離脱戦略 超党派で議会をあげて中国に対抗する アメリカばかりか欧州諸国も中国に反発 「脱中国」「中国封じ込め」が進んでいく 集団免疫ができるまで経済は回復しない
おわりに
|