G1予想[293]第40回 ジャパンカップ(2020年11月29日) |
2020年 11月 23日(月曜日) 17:07 |
デアリングタクトが勝つ!もはや国際競走とは呼べなくなったJC。去年、初めて外国馬が来なかったが、今年はコロナ禍が影響して、2年連続、出走馬ナシになるだろうと思っていた。 ところが、どうだ。なんと、欧州のコロナ禍を逃れるように、フランスから今年のG1サンクルー大賞を勝ったウェイトゥパリスがやってきた。先日の凱旋門賞は9着。 東京の高速馬場では用なしと思えるが、わざわざ来たからには、激走もあるかもしれない。
さて、そんなことより、今年のジャパンCは、この先、ほぼ永遠にありえない「世紀の対決」が最大の注目だ。 なんと、実現しないだろうと思えた牡牝の無敗の3冠馬が、ここで初顔合わせすることになった。しかも、それに加えて、最強牝馬“女王”アーモンドアイも出走することになった。もういまから、目眩がする。
これでは、とてもではないが、いつもと同じ気持ち、同じやり方では馬券は買えない。競馬の基本は、どの馬が勝つかを考えて、その勝ち馬を前提に予想を組み立て、馬券を買うこと。しかし、そんなものはベッティングプレーではないと気がつき、今日まで常識を超えた馬券を買ってきた。とくに勝ちそうな馬はほとんど蹴り、来そうもない馬から積極的に馬券を買った。 しかし、今回だけは、それをしたくない。素直に、本当に素直に、常識的な予想をして、それで馬券を買ってみたい。 で、結論は、デアリングタクトだ。なぜ、そうなるかは、なによりも、この馬がいちばん早く、ジャパンCの出走を表明したうえに、最強牝馬だと思うからである。おそらく、アーモンドアイ、グランアレグリアより上だろう。オークスでの末脚は、アーモンドアイを超えていた。
コントレイルは3冠達成後、なかなか出走を表明しなかった。菊花賞後、10月末から大山ヒルズへ短期放牧に出された。その様子を見て、判断すると報道された。 そうして、11月6日、やっと出走が決まった。疲労はない。調子はいい。それに、東京コースは得意である。出るべきだと、判断したわけだ。
アーモンドアイも出走表明が遅れた。すでに、来年3月での現役引退が決まっているので、選択肢は、ジャパンC、香港国際、有馬記念しかない。このなかでジャパンCと香港国際はバッティングする。さあ、どちらだとなって、最終的に、11月12日に参戦が決まった。 そして、「ジャパンCで引退する」発表された。
「先行者利益」という考え方がある。新たな市場にいち早く参入したり、新製品をいち早く導入したりすることにより得られるメリット(利得)をこう言う。ライバルが少ない市場で、ビジネスを有利に進められることが、先行者利益を生み出すとされる。 これに対して、「後発者利益」というものもある。次のような場合は、後発者利益が期待できるとされる。
(1)先行者がリスクをかけた開発コストの低減。
「先行者利益」か「後発者利益」か? これを競馬に当てはめることはできないが、今回のジャパンCに関しては、心情的には「先行者利益」である。デアリングタクトにはなんの迷いもない。3冠達成後はジャパンCと決めていた。 このプロセスを考えれば、今年は牝馬の年でもあるから、迷うことなくデアリングタクトだ。コントレイルもアーモンドアイも差し切って、先頭でフィニッシュ。そうして、無敗の6連勝で4冠達成。こんな美しい結末はないだろう。
結論:デアリングタクトの単。デアリングタクト→アーモンドアイの馬単。デアリングタクト→アーモンドアイ→コントレイルの3連単。
ところで、先週のマイルCSでふれた、1989年のジャパンCに関して、思い出をもう少し書いておきたい。この年のジャパンCは、ジャパンCの歴史のなかで、おそらくもっとも盛り上がったと思われる。なにしろ、出走メンバーが本当に豪華だった。 日本勢は、オグリキャップ、スーパークリーク、イナリワンが中心。オグリはオールカマー1着→毎日王冠1着→天皇賞・秋2着→マイルチャンピオンシップ1着で来ていた。これに対し、スーパークリークは天皇賞・秋でオグリを破っていた。また、イナリワンは春の天皇賞、宝塚記念の連勝馬だった。
外国勢は、まずはホークスター。なんといっても2400mの世界レコードホルダーとして、レース前の評判は抜群。さらに、アメリカからは前年のジャパンCの覇者ペイザバトラーも来ていた。欧州勢は、凱旋門賞馬のキャロウハウス、オイロパ賞の勝ち馬のイブンベイ、イタリアのG1ジョッキークラブ大賞の勝ち馬アサティスなど、考えられる一流メンバーがそろっていた。
当時、私は女性週刊誌の編集者。競馬は仕事と直接は関係なかったが、マスコミにいるので、多くの関係者とつながりを持っていた。そのため、当日は取材がてら観戦に行こうと思っていたが、都合がつかなくなった。 そのため、レース前日、渋谷東急1Fの喫茶店で、懇意の記者と待ち合わせ、馬券をたくした。当時、本当に競馬に夢中で、G1となれば、一般サラリーマンの分を超えた額をつぎ込んでいた。
私は、オグリキャップを信じていた。それで、オグリが入った2枠からホークスターの5枠、キャロウハウスの6枠、アサティス、ペイザバトラーの8枠の3点にしぼり、それぞれ5万円ずつ投じた。スーパークリークは武豊騎乗で1番人気になったので、来ないと確信して蹴った。 ちなみに、人気は、オグリが2番人気、ホークスターが3番人気、アサティスが5番人気、ペイザバトラーが6番人気だった。
イブンベイが飛び出して逃げた。テレビ観戦だったが、固唾を飲んで見守った。ペースは速い。イブンベイにホークスターが競りかけたので、さらに速くなった。イブンベイの600mの通過タイムは35.6。なんとマイル戦のようなタイムだ。 各馬はばらけた。イブンベイの4馬身後ろに、ホークスター、その後ろにホーリックスという隊形になった。さらに、その7、8馬身後ろにオグリとスーパークリークが付けていた。 1000m通過は、破格の58.5。1600m通過が1分34.2、1800m通過は当時の日本レコードの1分45.8、2000m通過は1分58.0で、当時の東京競馬場のレコードを超えていた。
直線に入って、ゴール前400m地点で、ホーリックスが先頭に立った。仕掛けが早すぎる。このペースでは持たないだろうと思ったが、なんと後続を引き離す。後続のなかから伸びてきたのはオグリキャップ。南井が必死に追った。 しかし、ホーリックスの脚色は衰えない。オグリがアタマ差迫ったところがゴールだった。 走破タイムは、なんと2分22秒2。掲示板を見たとき、私はあっと声を上げた。まさか、そんなバカな。
オグリから流したというのに、ホーリックスは抜けである。同じ2枠だったからだ。枠連2-2は6760円もつけた。当時は、馬連などない。枠連がもっともポピュラーな買い方だったが、ゾロ目は死角だ。しかも、ホーリックスは9番人気、まったくノーマークだった。 1番人気スーパークリークは、後ろから来たペイザバトラーに交わされ4着。 レース後は、しばらく沈黙が続いた。私は気落ちして、完全に言葉を失った。
もうあのような時代に戻ることはできないが、本当に素晴らしい時代だった。バブルのピークで、日本中が好景気にわいていた。おカネなど、いくらでも稼げる。そんな雰囲気だったから、競馬の痛手からもすぐに立ち直れた。 はたして、今年のジャパンCはどうなるのか? 日本はいま、「失われた30年」をへて、コロナ禍の最中にある。いったい、いつコロナ禍は収束するのか?まったくわからない。 ただ、わかるのは、ポストコロナはまったく違う時代になるだろうということだ。 |