2020年12月2日●新刊『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)発売 |
私の新著『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書、980円)が、12月4日に発売されます。前著『コロナショック』に続く第2弾で、コロナ禍によって今後、世界と日本がどうなっていくのかを展望しています。 それは、日本に関して言えば「絶望未来」です。いまの日本は衰退を続けるだけで、明るい材料がなにもありません。そこに襲ってきたのが「コロナ禍」ですから、日本の衰退は加速します。
いつも思うのは、いったい日本はどれほど敗戦を重ねればいいのだろうか?ということです。 半導体敗戦」「家電敗戦」「液晶敗戦」「パソコン敗戦」「デジタル敗戦」「スマホ敗戦」など、挙げていけばきりがありません。今回の「コロナ敗戦」から、はたして立ち上がることができるのか? そのためになにができるのか?それをいま真剣に考えなければなりません。
Amazon『コロナ敗戦後の世界』 (MdN新書)
以下が、本書の「はじめに」と「目次」です。
はじめに 中国発の新型コロナウイルスの感染症が世界に拡散を始めたとき、アメリカ大統領はドナルド・トランプ、日本の首相は安倍晋三だった。それがいま、2人とも政治の表舞台から去り、世界情勢は大きく変わろうとしている。 もっとも、2020年、世界を変えたのは各国のリーダーたちではなく、新型コロナウイルスという思いもよらぬ“見えない侵入者”だった。この侵入者と人類の戦いは、この先、当分続く。この戦いいかんでは、これまで人類が築き上げてきた社会と経済が大きなダメージを受ける。私たちの暮らし方も変わってしまう。すでに、大不況は始まっており、出口はまったく見えない。 はたして、この先、世界と日本はどうなっていくのか?この一点に絞って、本書を書き進んだ。
2020年4月8日午前0時、新型コロナウイルスの発生地、湖北省・武漢市のロックダウン(都市封鎖)が解除された。それまで市内に監禁状態だった市民は外出が可能になり、都市全体がいっせいにライトアップされた。街中に歓喜の声が湧き上がった。 その光景を、テレビの画面を通して、私たち日本人は、呆然と眺めるほかなかった。なぜなら、たった1時間前に、日本では初の緊急事態宣言が発効していたからだ。 いまさら振り返っても仕方ないが、新型コロナウイルスのパンデミックは、中国など数カ国を例外として世界中で拡大し続けた。その後、2020年の夏に小康状態をえたが、それもいっときだけ。北半球が秋から冬に向かうと第二波が起こって拡大は続いた。 このダメージは、計り知れないほど大きい。1929年の世界大恐慌の比ではないという見方もある。
しかし、なぜか日本では深刻に受け止められてこなかった。当初、大騒ぎしたものの、感染者数、死者数がコロナ禍に見舞われた多くの国に比べて少なかったせいだからだろうか。2020年秋になると、政府は感染防止対策より経済対策に注力するようになった。 安倍晋三・長期政権から、菅義偉・継承政権へと政権は代わったが、対コロナ政策は変わらなかった。菅首相には日本を復興させるという決意もビジョンもなく、ただ、目の前にある政策課題をこなしていくだけだった。これでは、コロナ禍で露呈した日本の後進性、ガラパゴス化、そして 経済衰退はより深刻になるだけだ。この国の最大の問題、世界最速で進む超・高齢社会、少子化による人口減、赤字財政、そして経済の低迷が解消される兆しはいっさいない。
いまのままで行けば、日本は先進国から確実に転落するだろう。そして、現在の無制限の金融緩和による「財政ファイナンス」の限界がくるだろう。これまで、歴代政権は、常に問題を先送りしてきた。そうして、借金をするだけして、なんとか“見せかけの成長”を続けてきた。しかし、もうそれは続かない。 円も株も暴落して、経済は崩壊状態になり、国民は資産を失い、一気に貧しくなる。そんな“絶望未来”が、コロナ禍により目前に迫るようになってきた。 ところが、このことをはっきりと指摘するメディアも、政治家や識者も、ほとんどいない。むしろ、次のような見方が大勢を占めている。
日本のGDPは、まだアメリカ、中国に次いで世界第3位である。コロナ禍に見舞われたとはいえ、株式市場は好調だし、円相場も安定していて、安全資産とされている。コロナ禍の前まで、アベノミクスのおかげで経済は悪くなかったし、雇用も安定していた。治安状態もいいし、食糧事情も悪くない。実際、どこに行ってもモノは足りている。 政府の借金が多いのは確かだが、それはほぼ国内で賄っているので問題とは言えない。そして、なによりもこの国には四季があり、豊かな自然がある。私たちは、そうした「美しい国」で暮らしている。心配することなどないではないか。 とすれば、ここでどうしても聞きたいことがある。それなのになぜ、私たちはあまり幸せを感じられないのか? なぜ、若者たちは日本の未来に悲観的なのか?
毎年3月20日は、国連が定めた「国際幸福デー」( The International Day of Happiness)である。そんな日があることさえ知らない人が多いと思うが、毎年この日に国連は、「世界幸福調査」(World Happiness Report)というレポートで、世界の国々の「幸福度ランキング」を発表している。 その2020年度版によると、日本は62位(世界156カ国中)である。日本は前年の58位より4つ順位を下げた。ここ数年の日本の順位の推移を見てみると、5年間で46位から58位へ、そして2020年は62位まで順位を下げた。 ちなみに、幸福度ランキング上位は、1位フィンランド、2位デンマーク、3位スイス、4位アイスランド、5位ノルウェーと北欧諸国が並んでいる。G7諸国では、カナダ11位、イギリス13位、ドイツ17位、アメリカ18位、フランス24位、イタリア30位と、みな日本より上位にランクされている。
では、アジア諸国はどうだろうか? 台湾25位、シンガポール31位、フィリピン52位、タイ54位、韓国61位、香港78位、中国94位である。香港や中国の順位が低いのは、政治体制の問題で、国民の自由度がないからである。それに比べ、日本は民主制で自由が十分にあるのに、なぜ、こうも順位が低いのだろうか? その答は、ずばり書いてしまうと、前記した「美しい国」は、経済と社会の面では、フィクション、ファンタジーだからだ。それは、あなたの頭のなかにだけある日本であり、実際の日本ではない。ところが、政府もメディアも、専門家までも、このフィクション、ファンタジーのなかで生き続けようとしている。
本書で私は、ポストコロナの世界を見据えて、そのなかで日本がどのように衰退し、奈落の底まで落ちいくかを述べる。悲観論だが、そのように見ていかないと、打開策は論じられない。 ここで、間違ってはいけないのは、コロナ禍がなくても、いまの状況では、日本の未来はそうならざるをえないということだ。新型コロナウイルスのパンデミックのせいで、日本経済は衰退し、国民生活が貧しくなっていくのではない。コロナ禍がなくとも、日本の衰退は必然なのである。
1990年のバブル崩壊以来、日本は「失われた30年」を続けてきた。いまも続けている。政府は経済政策を間違え続け、いまもまた間違えようとしている。それでも、日本はまだ持ちこたえているので、その意味ではすごい国である。私たちは「失われた30年」の間、懸命に働き、この国を支えてきた。しかし、その努力は、このままでは報われない。 いくら国民が頑張っても、国家の舵取りをする指導層が間違い続けるのだから、国は否応なしに衰退していく。 このままでは、「失われた30年」が「失われた40年」になるのは確実だ。いや、失われすぎて、40年にはならないかもしれない。
目次 第1章 いつまで続く「コロナ大不況」
経済予測では見通せなくなった未来 増加し続ける失業者数と倒産件数 政府の援助が切れれば倒産、失業者が激増 ディズニーランドの苦境と大リストラ 「行動様式」の変化が追い打ちをかける 決断と損切りができない経営者と政府 “底辺ジャパン”が限りなく拡大している 「世界大恐慌」は人々の暮らしを破壊した 政府が介入すればするほど不況は長引く
第2章 「ポストコロナ」時代、失われる仕事
「DX」に取り残されてしまった日本 増収増益のIT産業と減収減益の従来産業 「リテール・アポカリプス」(小売崩壊)が進む AIと共存するなかで進む“AIリストラ” どんな職業がAIに奪われてしまうのか? AIベンチャーが既存の企業を淘汰する 私たちは「ポスト・ヒューマン」になる? 第3章 米中「二股政策」で日本自滅か? 日の丸半導体「キオクシア」の上場中止 半導体ファウンドリーのSMICも潰す 中国の半導体は世界から1周以上遅れている 「戦狼外交」で正面から戦い続ける習近平 事実上の対中「宣戦布告」ポンペオ演説 「過去の同じ過ちを繰り返さない」と強調 中国をここまで増長させたのはアメリカ 同盟国なのに日本を徹底して叩いた アメリカは3度も日本を潰している 天安門事件後に日本も中国を増長させた 日米安保は適用されるが「日本領」ではない アメリカで公表された尖閣戦争シナリオ どうなるバイデン&ハリスの対中、対日政策 中国から撤退しても日本に戻っても地獄
第4章 グリーン・ニューディールの罠
「テル、テル」と言われたとご満悦の菅首相 柄にもなく「SDGs」を使ってみせたが---- 小泉進次郎・環境相「セクシー」発言の背景 レジ袋の有料化はまったくの見当違い 新型コロナの感染拡大で再び無料化 バイデン支持を訴えた“環境少女”グレタさん 世界一の二酸化炭素排出国は中国 温暖化の根拠ホッケースティックに証拠なし ドイツ中心でグリーン・ニューディールに邁進 窮地に追い込まれた日本の環境政策
第5章 日本が韓国より貧しくなる日
日本に比べて迅速、的確だったコロナ対策 「認知的不協和」に陥ってしまった日本人 1人あたりのGDP ではすでに日本に並ぶ 世界第2位から約30年で第26位に転落 ドラマ『愛の不時着』の記録的大ヒット 韓国ドラマの大ブレークの本当の理由とは? ネットフリックスが韓国ドラマに投資 ソフトパワーで圧倒的に日本を上回る 歴史的には日本が常に朝鮮より上だった
第6章 止まらない世界ランキング下落
給与でOECD諸国の平均以下に転落 年々低下する世界競争力ランキング 世界から周回遅れのデジタルエコノミー 日本の大問題は「労働生産性の低さ」 外国人ビジネスマンは日本に住みたくない 日本の教育は国際性において大きく劣る 最高学府の「東京大学」は世界36位 世界一なのは政府債務残高の対GDP比 世界有数の女性差別と報道の自由度
第7章 「コロナバブル」は必ず崩壊する
ニューヨークも東京もピーク時まで戻す 日経平均は4分の1になってもおかしくない 2023年末まで「適温相場」は続くのか? 社会に出回るおカネの量で株価は決まる 給付金で株を買う「ロビンフッド」現象 日本でも起こっていた「コロナバブル」 バブル崩壊後にまたバブルの繰り返し バブルをつくり出しているのは中央銀行 「金本位制」から「貨幣(ドル)本位制」へ バブルに出口なし、もっとも危ないのが日銀
第8章 日本は財政破綻してしまうのか?
2020年、約160兆円に膨らんだ政府支出 「プライマリーバランス」の達成は不可能 なぜ日銀は国債を際限なく買い続けるのか? 政府は過去の国民の貯蓄で生き続けている 対外資産を取り崩さざるをえない日が来る 残るのは日銀による国債の直接引き受け 信じてはいけない「MMT」(現代貨幣論) 危機が来たら政府は“泥棒”に変わる
第9章 「デジタル通貨」がもたらす絶望未来
始まった「デジタル人民元」の実証実験 そもそも「デジタル通貨」とはなにか? CBDC導入をめぐる世界各国の動き 周回遅れの日本はなにをやっているのか? 中国が進める「デジタル人民元」の狙い 資本移動の制限がある限り国際化は無理 ないとは言えない「デジタル円」の悪夢
第10章 未来なき老害政治と女性差別
なぜ日本は「希望をなき国」なのだろうか? リーダーは若くなければ改革は進まない 閣僚の平均年齢は60.38歳、女性は2人だけ 書き込みに溢れる男性たちの自己正当化 いくら働いても男性より低い給与所得 蔡英文総統とメルケル首相の才女ぶり うらやましい若き女性リーダーがいる国々 菅政権では女性の地位は改善されない |