[389]北京五輪の疑惑判定も、ウクライナ危機も、ただ黙って見ているだけの日本 |
2022年 2月 17日(木曜日) 02:36 |
北京五輪が始まってあっという間に2週間、もう今週末には閉幕する。オミクロン株の感染拡大でほとんど毎日、家に閉じこもりだったため、テレビで五輪中継ばかり見てきた。それにしても、こんなトラブル続きの五輪は過去になかったのではないだろうか?
スキージャンプ混合団体では、高梨沙羅、アルトハウスら4カ国5人の女子選手が、スーツの規定違反で相次いで失格。スノボ男子ハーフパイプでは、平野歩夢が誰もやったことがないトリプルコーク1440を決めたのに2位の評価点。もし、最後に大逆転で金メダルを取らなかったら大問題になっていたはずだ。 スピードスケート・ショートトラック男子1000メートル準決勝では、1着になった韓国選手がわけのわからない失格。決勝でもハンガリー選手が失格し、結局、中国選手がワンツーした。 高梨沙羅©️共同 そして、極め付けは、フィギュアスケート女子カミラ・ワリエワのドーピング発覚。あまりの衝撃的な出来事に、ロシアのアンチドーピング機関(RUSDA)も世界アンチドーピング機構(WADA)もIOCも判定せず、スポーツ仲裁裁判所に丸投げ。結局、個人種目への出場は認められることになった。はたして、最後のフリーで、ワリエワはどんな演技をするのだろうか?
こうしたトラブル続きのなかで、つくづく思ったのは、日本人のバカがつくおとなしさだ。「波風立てずになにごとも穏便に」という生き方を、本当に腹立たしく思った。とくに、デイリースポーツの記事『高梨沙羅がW杯出場意思 原田総監督「元気になった」 失格問題は選手団として抗議せず』を読んだ後は、情けなくて仕方なかった。以下、記事を引用する。
《伊東秀仁団長は「抗議するかどうかということについては、現時点では選手、スタッフのケアを最優先し、今大会に注力することが重要という認識で、スキー連盟とも一致している。スキー連盟関係者とも十分に協議を行いながら、選手スタッフに必要な支援があれば検討したいが、今すぐこのルールに対して我々が抗議することはない。スキー連盟を通して、色々話し合いながら、国際連盟に抗議することはないが改善を求めていく可能性はある」と、日本選手団としては抗議しない意向を示した。 自身もジャンプ選手だった原田雅彦総監督は「高梨選手は責任感が強い選手。彼女の気持ちを考えると、私も言葉がない。彼女の置かれている状況を考えるとスキー連盟と連係しながら、心のケアに全力でサポートしたい」と、メンタルケアを最優先に行っていく方針を示した。》
「失格問題は選手団として抗議せず」「改善を求めたりする可能性はある」=「私どもはなにもしません」=「規定違反をしたことを認めます」と言っているに等しい。 それならば、なぜ、規定違反をした高梨選手の心のケアをしなければならないのか? 論理的には、日本としても彼女を処分しなければならないはずだ。この矛盾に、この人たちは気付かず、こうすることが社会的に正しいことで、高梨選手にも十分配慮していると考えているようなのだから、開いた口がふさがらない。 ほかの3カ国はこんな対応はしない。監督はみな激怒して、抗議している。抗議すること、ルールがおかしい、判定が間違っていると言うことこそ、選手のためにも、競技のためにもなる。
さて、トラブル続出はともかくとして、北京の鳥の巣(Bird's Nest)、延慶スキーリゾートの各施設、張家口のジャンプ施設やスノボパークなど、どの施設も本当に素晴らしい。 一部に、中国だからとバカにする見方があるが、競技以外の北京を見れば、中国のほうが日本よりはるかに進んでいることを認めざるをえない。 札幌は予算もないのに五輪を本気で招致しようとしているが、施設をどうしようというのだろうか? 大倉山シャンツェ、月寒体育館、真駒内競技場などの既存施設を使えば、みすぼらしい日本が世界に知れ渡る。本当に、札幌五輪だけはやめてほしい。 ビッグエア©️gettyimages さて、五輪期間中にも、ウクライナ情勢は緊迫を続けた。アメリカは、明日にもロシア軍がウクライナに侵攻すると言い続けた。ロシアが10万人規模の軍を、昨年暮れから東部国境に張り付かせたので、これに対抗するため、ポーランドなどに軍を派遣した。 そして、バイデン大統領は、「2月16日ロシア軍侵攻説」を訴え、キエフから大使館を撤退させてしまった。日本も、アメリカにならって邦人に退避勧告を出し、大使館員を引き上げさせた。
しかし、これらの一連のクライシスは、一種の演出、茶番劇だ。ロシアは、忠実にゲーム理論通りのことをやっているにすぎない。プーチンは初めから世界を敵に回してまで、ウクライナの東部2州を併合する気はなかったと思う。そういう姿勢を見せて、アメリカの出方を見たのだ。 むしろ、戦乱を起こしたかったのは、アメリカのほうだったように見える。 それがわかったので、昨日、プーチンは軍の一部を引き上げると表明した。
プーチンとしては、原油価格が95ドルまで高騰したので、それでもういいとしたのではないか。大使館が退去するということは、戦時下なら「敗戦」「撤退」である。ロシアの勝ちだ。 ロシアはいまや資源大国である。ロシアの天然ガスがなければ欧州はやっていけない。ロシアの鉱物資源がなければ、脱炭素社会はつくれない。それを見せつけ、資源を高く買わせれば、血を流して領土を拡大するより、よほどロシアの国益(プーチンの利益)になる。 ©️gettyimages いずれにしても、もういい加減にしてくれないだろうか。こんなゲームを続けられては、ますますエネルギー価格は上がり、インフレが進む。日本のスタグフレーションは深刻化する。結局、日本がもっとも貧乏くじを引いてしまう。 北京五輪の疑惑判定も、ウクライナ危機も、日本はなにもせず、ただ受け入れている。世界でなにがあっても、日本は黙って眺めているだけだ。これでは、衰退していくのは当たり前だ。 |
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