[399]安倍元総理暗殺後、参院選で与党圧勝。このまま日本の衰退は続いていくのか? |
2022年 7月 11日(月曜日) 14:21 |
先週、金曜日、7月8日に起こった安倍晋三元総理(67)の暗殺事件は、いまだに現実感がない。何度、映像を見ても白日夢としか思えない。 こんなことが日本で起こったことに、日本中がショックを受けているが、そろそろ冷静にこの問題を考えなければならない。 いまだに、メディアは「警備体制」「個人的な犯行」「銃の手作り」「宗教団体(統一協会:世界平和統一家庭連合)」などに注目していて、この事件を招いた背景に焦点を当てていない。それは、日本社会がこの「失われた30年」で、いちじるしく劣化し、底辺の人々から希望を奪ってしまったことだ。
犯人・山上徹也容疑者(41)に関しては、海上自衛隊の任期制自衛官を務めていたことばかりが注目されるが、彼は、現在無職で、数カ月前、派遣で行っていた工場を辞めている。1Kのアパートに1人暮らしで、コツコツと銃を手作りしていた。 彼の境遇は、これまでの報道を見ると、本当に不遇である。父親が急死した後、母親が統一教会に走り、1999年には祖父の家を売り払い、2002年には自己破産している。兄妹3人で育ったが、食べるものにも困った貧困生活の繰り返し。そんななかで、自衛隊に入り、派遣社員などをして食いつないできたわけだが、将来に対してなんの希望も持てない暮らしだったのは間違いないだろう。 こうした、日本社会の底辺で暮らす単身労働者は、現在、どれほどいるだろうか? この「失われた30年」で、その数は増え続け、労働環境、生活環境も劣化する一方だ。 それでも、アメリカに「アメリカン・ドリーム」があるように、日本にも「ジャパニーズ・・ドリーム」があれば救われるが、いまの日本にはそれがない。いまや、ベトナムから来た技能実習生(事実上の労働移民)も逃げ出す国になってしまった。
今日になってもまだ、メディアは「動機解明が待たれる」と言っているが、動機は供述にあるように、すでに明らかだ。 「もともと、家を破産に追い込んだ宗教団体(統一教会)のトップを殺そうと思っていた」 「安倍元総理がその宗教団体(統一教会)とつながっているので殺そうとした」 これ以上、明白な動機があるだろうか? つまり、山上徹也容疑者は、日本社会の底辺で暮らしながら、自分をこんな境遇にした宗教団体と日本社会に恨みを抱いていたのだ。
このような点を思うと、私は今回の事件は、2019年、36人が犠牲になった「京都アニメーション事件」、2021年、26人が犠牲になった「心療内科放火殺人事件」と同質ではないかと思う。 さらに遡れば、2008年、7人が死亡10人が重軽傷を負った「秋葉原通り魔事件」がある。この事件の犯人は、明らかに社会に恨みを抱き、それを晴らすために犯行に及んだ。
今回(7月10日投票)の参議院選挙は、安倍元首相の死を受けて、ある意味で「弔い合戦」になった。態度を決めかねていた地方の浮動票は、自民党に流れたという。 その結果、自民党は選挙区選、比例選とも議席を伸ばし、単独で改選定数124の過半数である63を確保した。また、全国32の「1人区」(改選定数1)で28勝4敗と圧勝した。単独で改選過半数を獲得したのは2013年の参院選以来のことだ。 この流れのなかで、もっとも党勢を失ったのは立憲民主党である。共産党との共闘を拒んだうえ、バラマキにすぎない政策しか打ち出せないのだから、安倍元首相暗殺がなくとも、こうなるのは必然だった。
参院選の結果、今後は「黄金の3年」になると、メディアは伝えている。いったい誰が、こんなバカな言葉を考えたのだろうか。 直近の衆院選は昨秋だったから、岸田文雄首相が解散しなければ2025年秋までない。次期参院選も2025年夏である。つまり、まるまる3年は、自民党、岸田政権の天下となる。しかし、これは自民党の「黄金の3年間」であって、日本にとっての黄金の3年間ではない。 与党圧勝は、政治に緊張感がなくなり、政策はおざなりになるからだ。しかし、そういう道を私たち日本国民は選択したのだから、それでいいのだろう。
投票率は約52%と前回より3ポイント上がったという、それでも、半数の国民が選挙に行っていない。それにしても行かなかった半数の国民は、日本がどうなろうと知ったことではないのだろう。 「民主主義に対する重大な挑戦」などという、安倍事件についてのコメントが充満しているが、半数の国民は、民主主義だろうと共産主義だろうと、独裁、専制だろうと、どうでもいいのだろう。
いまの日本に問題は山積している。 当面の新型コロナウイルス対策や物価高対策はもちろんのこと、この先の経済・金融政策や財政再建はどうするのか? ウクライナ危機は? エネルギー危機は? 食料安全保障は? 中国・北朝鮮の脅威のなかでの国防強化は? そしてなによりも、少子高齢化による人口減、地方の崩壊、広がる格差をどうするのか? こうした問題を、自民党だけで一つ一つ解決していかねばならない。そんなことができるのか。 このあと岸田政権は、目玉政策である「新しい資本主義」を踏まえた10兆円超の追加経済対策を取りまとめるという。 いまさらなにも期待していないが、思うのは、どうか、余計なことだけはしないでほしいということだけ、日本人は、もっと追い込まれなければ、動かない。改革などせず、昨日と同じ明日を暮らそうとしている。つまり、昨日と同じ明日が来ないとわかったときにしか、この国は変わらない。
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