[080]アップルの勝手! 電子書籍の単体アプリを突如排除で、コンテンツ提供業者も出版界も大混乱! |
2011年 2月 28日(月曜日) 04:29 |
「iPad」「iPhone」などで電子書籍販売する場合、これまでは二通りの方法があった。一つは、App Store内に「独自ストア」を開きそこで販売する。もう一つは、書籍を単体のアプリとして販売するというもの。このうち、後者の単体アプリをアップルは、排除してく方向に舵を切ったからだ。 すでに「書籍の単体アプリ申請の差し止めと数量自粛」の要請が、日本の出版社やコンテンツ提供事業者に来ている。さらに、アップルはコンテンツの決済方法を自社の決済に一本化する方針を発表している。これは電子書籍に関しては、最終的にiBook Store以外の販売は認めないということだ。 そんななか、アップルは2月14日、App Storeにおける雑誌、新聞、ビデオ、音楽、その他のコンテンツ講読モデルを正式に発表した。その詳細をここに記しても仕方ないので、電子雑誌、電子書籍に関する要点のみ書くと、 ・シリーズコンテンツ(コミック、雑誌等)の単体アプリは認めない・無料コンテンツ+本課金の単体アプリも認めない(無料版を出して有料版につなげる戦略はダメ)・単に読むだけの書籍ではないリッチコンテンツなら引き続き単体アプリでも認める(要するに、絵が動いたりするようなePubで表現できないコンテンツは以外はePubにしてiBooks Storeで販売すること)・App Storeでアプリを売るなら外部に誘導するリンクは禁止する。 というようなことになる。
App Store内に独自ストアを開設では、売上は激減
じつは、こうしたアップルの動きは、はじめから予想できたことだ。しかし、これまでは単体アプリでの販売ができたので、出版社もコンテンツ提供業者もともかく早く電子書籍市場に参戦したいと、それを推し進めてきた。しかし、今後はこの手は通用しないということである。 となると、いままでどおり電子書籍を販売したいなら、選択はApp Store内に独自ストアを開設してそこで売るしかない。しかし、ストアにアクセスするユーザーは激減するはずで、事実上、電子書籍は売上を落とすことになる。 ならば、アップルが言う通りiBooks Storeでの販売となるが、iBooks Storeはまだ日本ではオープンしていない。さらに、日本語のePub対応は遅れていて、縦組みにきっちり対応するのは、この5月ごろになるという。
グーグルもAndroid Marketでコンテンツ規制強化の噂
こうしたアップルの動きと時を同じくして、グーグルはデジタル・コンテンツの販売サービス「One Pass」の詳細を発表した。それによると、コンテンツ提供者がグーグルに支払う手数料は10%で、アップルの手数料30%の3分の1だという。グーグルのエリック・シュミットCEOは、この手数料は運営コストをまかなうためのものであって、「基本的にこのサービスからの儲けは考えていない」「もっとも大切なことは、高品質のコンテンツを生み出している人たちにお金を渡せるようにすることだ」と語っている。 しかし、グーグルにしても、Android Marketでは、特定アプリを排除する方向にあるとされている。Androidは価格も安く、ティーン向けのエロコンテンツが氾濫する傾向にあり、コンテンツ(アプリ)そのものに対する制約が強化されるともっぱらの噂だ。 いずれにせよ、電子書籍に関しては、アップルの「iBook Store」、グーグルの「Google ebook Store」、アマゾンの「Kindle Store」のサービスはまだ日本では始まっていない。ただ、始まれば、この3つのプラットフォームが日本市場でも主流になるのは確実と思われる。
結局、日本独自の電子書籍市場は成立しない?
となると、プラットフォーム側はいつでも勝手にルールを変えられるので、プレーヤー(出版社などのコンテンツ提供者)はそのルールに適応しないと生き残れなくなってしまう。これは出版社ばかりか、著作者、ひいては読者にも大きく影響する電子書籍革命の核心部分だ。それなのに、日本の出版業界では、昨年「電子書籍元年」とあれだけ言われたにもかかわらず、いまだに混乱が続いている。新時代に対応する著作権の整備、日本独自のメガプラットフォームの構築など、問題は山積したままだ。 年々歳々、出版不況は深刻化し、出版社は赤字経営に陥り、書店数も減っている。新聞も毎年100万部単位で部数を落としている。これはプリントメディアにかぎらず、テレビなどの電波メディアも同じ状況にある。 それに代わって、ツイッターやフェイスブックなどのネットのソーシャルメディアがどんどん台頭してきている。このまま、既存メディアが従来の方法を守りながら、新しいネットメディアとして生まれ変われるとも思えない。まして、電子書籍市場では、日本のメーカーもコンテンツ提供をするプリントメディア側も主導権が握れないまま終わってしまう可能性が強い。
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