[101]のだめ首相の「どじょう政治」で日本の衰退は必須。なぜ、間違った方向にばかり進んでいくのだろうか? |
2011年 9月 05日(月曜日) 10:31 |
「のだめ・どじょう首相」が誕生して3日たった。野田佳彦・新首相の精一杯の自己アピール発言「どじょうのように泥臭く」にも驚いたが、その後の組閣で「適材適所」など嘘っぱちの超軽量・派閥均衡の「めだかの学校」内閣ができたのには、もっと驚いた。 さらに、こうした経緯を大メディアが手のひらを返して持ち上げ、ご祝儀報道に終始したのには、もっと驚いた。そんなバカな。ついこの前までの菅・居直り内閣のときは、日本は歴史上かってない国難に直面していたのではないか? それが、「金魚の真似をしないどじょう」の登場で、国難が一気に解決しそうな報道をするのは、どうかしている。 実際、この1週間で、日本はなにも変わっていないし、野田新首相は将来の日本に関して、ほぼなにも打ち出していない。
「どじょう」は永田町と霞ヶ関の互助会システムにとってもっとも都合がいい男
大メディアのご祝儀報道がよほど効いたのだろうか、共同通信が2、3日両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、野田内閣支持率は、まさかの62.8%。また、政党支持率も民主党が27.2.%で、自民党の23.6%を上回り、「挙党一致を掲げた野田政権への国民の期待が表れた」と分析する有様だ。 この調査結果が本当に日本の世論を代表しているなら、日本人はどうしてこんなに楽観的、かつ単純なのだろうと思うしかない。本当に、そう思っているのだろうか? そんなバカなことはないと、私は思う。 この先、野田新政権は、「金魚になれないどじょう」が泥臭く、周りの意見を汲んで政権を運用していく。本人がそう言っているのだから、そうなるに決まっている。そうなると、この状況をいちばん歓迎するのは、官僚と既存政治家たちだ。官僚はいちばん怖い「政治主導による改革」(首切りと給料カット)がなくなり、既存政治家は選挙がないのだから、しばらくはのんびりやれる。つまり、「どじょう」は永田町と霞ヶ関の互助会システムにとってもっとも都合がいい男である。
財務官僚たちは「どじょう」を小馬鹿にし、腹のなかで 笑っている
今回の野田政権誕生で、日本の政治は、以前の自民党と霞ヶ関が結びついた「官僚・政治家談合」政治より、よりいっそう悪くなるだろう。財務省によるコントロールが強まり、そうした官僚による日本貧困化政策(=省益だけは確保)に政治家が乗っかるだけの、ポリシーもビジョンもない政治が続くことになる。 財務省は、表向き「財政再建」「増税」などと言っているが、自分たちの生活さえ守れればそれでいい。いずれ日本が財政破綻するのはわかっている。しかし、そのときにはいまのトップは現場にはいないのだから、このままの状況が続くだけだ。真剣に日本の将来を憂いて日本のために仕事をしたい、そういう人間もいるが、いまのシステムではそんな志は無惨にも打ち砕かれる。 実際、東大出の秀才である財務官僚たちは、「どじょう」「泥臭く」「庶民派」などという男は小馬鹿にする。腹のなかでは笑っている。頭がいい人間にとって、「ノーサイド」「力を合わせて」などという台詞を吐く人間は、簡単に操れるので、まともに話など聞こうともしないだろう。 『週刊ポスト』の記事、「使い勝手よし彦くん」はまさにそのとおりだ。
今の日本に必要なのは「どじょう」より「金魚」のほうだ
だいたい、こんなときに庶民宰相など必要ない。散髪を1000円ですませる首相など、いまのこの国には不要だ。ついこの前までメディアはリーダーシップを問題にしていた。それなのに、リーダーシップのひとかけらもない、庶民受けするだけの地味な人間をなぜ持ち上げるのだろうか? じつは、いまの日本に必要なのは「金魚」のほうで、「どじょう」ではない。官僚も、自分たち以上のエリートなら、敵愾心は持つが、恭順する姿勢は見せる。 このように今回の野田政権は国民にとって最悪の政権だ。しかし、メディアはそれを伝えない。メディアにとっても、今回のなんの代わり映えもしない旧態依然たる政権のほうが、都合がいいからだろう。あれほど菅政権を批判してきたというのに、菅政権を支えた政治家が内閣に名前を連ねることすら批判しない。また、論功行賞も露骨で、メッセージが1ミリもないというのに、「期待したい」と書く。読売新聞の社説は、冒頭から「民主党政権で初めて地に足のついた政策と手法を語ることができるリーダーの登場である」となっている。
被災地の 復興も原発の見直しもいますぐすべきことなのだろうか?
野田政権が掲げる政策のうち、たったひとつだけ、「財政健全化」はどうしてもやらなければならない政策だ。これと経済成長を同時に進められるかどうかで、今後の日本の将来は決まる。東日本大震災の復興、原発廃止、あるいは見直しなど、じつはいますぐやる必要はない。 日本のGDPの5%に満たない地域の復興を急ぐ、あるいは元通りにする復興策は、じつはもっとも愚かな選択だ。なぜ、三陸地域の壊滅した街を元通りにすべきなのか? むしろ、ゴーストタウンにしてしまったほうがいい。産業も雇用も成り立たないのに、そこに税金をつぎ込むのはおかしい。もちろん、困っている人は助けなければならない。しかし、いまのようなモノの復興を優先するのはおかしい。被災者を助けるなら、ほかの方法(移住政策など)を模索すべきだろう。 原発にしても、現段階では安全対策を強化して、使えるものは使うのが当然だ。そうでなければ、出費がかさんで日本はますます貧しくなる。今回の震災による原発被害は人類史上初めての貴重な体験だから、そこから学んだことを、人類共通の財産にすべきだ。そのためには、より万全な原子力のコントロール方法を確立すべきであり、それが今後の日本の価値を高める。単に恐くなって「廃止する」では、技術大国・日本の価値はない。
財政健全化をめぐる変節を見ると、なんの定見も持っていないのでは?
話を戻して、財政健全化は民主党の野党時代からの持論である。野田首相本人も、これまでそれを強く訴えてきた。しかも、その実効策は、財務省の念願の増税ではなく、無駄の排除に力点があった。野田首相は民主党「次の内閣」財務相だった2005年に、当時31あった特別会計のうち24を廃止する「野田プラン」をまとめている。その一方で、消費増税については、2009年に出版した著書『民主の敵』で「安易に認めてしまうとそこで思考停止 し、(税金が無駄に使われる)からくりの解明はストップしてしまう」と指摘している。 ところが、民主党が与党になった鳩山政権で、副大臣として当時の藤井裕久財務相を補佐し、菅政権で財務相に昇格すると、2010年代半ばまでに消費税を10%に引き上げるとした「社会保障と税の一体改革」の取りまとめを主導し、大きく変節してしまった。これは、財政再建を目指すという方向は同じだが、そのやり方が180度違う。 つまり、一見すると、彼は国家財政問題に関してエキスパートのように見えるが、じつはなんの定見も持っていないということになる。彼は、そのときどきのポジションで、所属する組織に有利なことを言っているにすぎない。
民主主義も資本主義も英語できているのに、英語人材ゼロ
したがって、今後も、財務省の勝栄二郎・次官と財務省のマペットになるのは間違いないだろう。前述したように、財務省にとってこれほどやり易い首相はいない。財務省は、官僚の特性として、日本の景気を回復させる、経済を活性化して国民生活を向上させる、などということに真剣ではない。また、この役所は、グローバル経済に徹底的に弱い。局長、審議官クラスに英語をきちんと話せる人材がいない。グローバル資本主義は英語でできているのだから、これは致命的なことだ。 民主主義、資本主義は、そのシステムすべてが英語でできている。だから、英語で考え、英語で議論し、それを実行する。現在のグロ―バルビジネスも英語でできている。また、インターネットもITも英語で動いている。なのに、野田内閣は、首相をはじめまたしても英語を話せる閣僚がいない。つまり、英語と言う標準語で動く世界についていけない。日本の「失われた20年」は、標準語を話せない、理解できないことが大きな原因だった。
日本が致命的なのは、債務の上限とう財政規律がないこと
現在、世界は「二番底」に向かうのではないかという、大きな岐路に立っている。アメリカもEU各国も「借金との戦い」を続けている。しかし、日本だけは財政赤字の削減策に真剣ではない。しかも、日本は欧米のように借金の歯止め(上限)を決めていない。曲がりなりもアメリカにはそれがあり、先日の政府と議会が大モメになったのも、上限と削減をめぐってだった。 EUの場合、加盟国には「財政赤字はGDPの3%以内に抑える」という規律が設けられている。しかし、各国ともこれを守らなかったので危機に陥った。ドイツ一国でEUは支えられない。だから、守らない国はEUから退場させるしかないが、それができない状況になっている。 しかし、日本にはアメリカやEUのような財政規律さえなく、国家会計は一般会計とは別の特別会計まである。これでは、数年後の破綻は目に見えている。
消費税30%でも財政破綻は回避できないならば、破綻したほうがまだいい
GDPの2倍という政府債務を持つ先進国は、世界に存在しない。約1000兆円の借金は、金利1%としても年間10兆円の支払いが必要になる。それなのに、日本の税収は約40兆円。国家の一般会計予算の半分にも満たない。こんな国家が破綻しないはずがないし、これを増税で回避できるわけがない。消費税30%でも財政破綻は回避できない。ならば、破綻してインフレと通貨暴落を起こしたほうがまだいいと、考える人々がいる。 それでも、財政破綻を回避し、日本を再生させる道はある。いま財務省と野田政権がやろうとしていることをすべて止めてしまうことだ。政府が国民を助け面倒を見るなどという政策はすべて捨て、国民自身に勝手にやらせる。そういう努力を私たち自身がするという機運にしなければ、財政破綻は回避できないし、なにより日本経済は復活しない。税金を使った復興、経済刺激策はすべて無意味だ。農業保護も中小企業支援策も即刻止めるべきだろう。
いまや産業として成り立たない農業、中小企業に税金を投入するは無駄
TPPに入るか入らないかで農業問題が足かせになっているが、現状の日本の農業を守っても意味がない。これほど生産性が低いうえに、農業従事者の平均年齢が60歳、しかも兼業農家がほとんどいう産業は、いくら補助金を出しても続かない。つまり、現在のままなら日本の農業はいらないのだ。 この農業問題と中小企業問題はじつはリンクしている。というのは、地方の兼業農家の場合、たいてい一家の主は地方の中小企業に勤めに出て、家計収入を補てんしている。ところが、現在、地方の中小企業は、大企業が続々と国外に出ていくために危機に瀕している。そこで、政府はこうした中小企業を特例措置で生き長らせている。しかし、この円高でさらに空洞化は進み、いくら援助金を出しても、仕事はどんどん減るだけだ。 つまり、農業と中小企業を守れば守るほど、日本は衰退し、税金の無駄遣いは際限がなくなる。
新しい競争力のある産業を創出し、雇用を増やすために産業構造を転換
日本がいますべきことは、思い切った産業構造の転換しかない。新しい競争力のある産業を創出し、雇用を増やすことだ。すでに持たなくなった農業や大企業の下請け的な中小企業はどんどん潰し、次世代の成長産業に吸収してもらう。そのためには、「ものづくり」「技術」など、いまの日本の最後の砦となっている価値感すら捨てるべきだ。こうした産業の行き着く先は、価格競争で、この分野では日本は中国などの新興国にすでに大敗している。これを続けていけば、あるのはサドンデスだけだろう。 日本は思い切った税制改革をして、税制をフラット化する。そうして補助金、ばらまきを一切止め、次世代をつくる産業のイノベーションに賭ける。アメリカがかつて金融、サービス産業、ITにシフトしたように、日本もこの道を行くしかない。補助や援助、ばらまきなどいくらしても、国民自身は立ち上がらない。 日本人自身は豊かな潜在能力を持っているのだから、必ず、新しいことに挑戦し、自ら立ち上がるはずだ。いまのような規制だらけで、嘘っぱちの「国民生活を守る」などという政治をやっているようでは、日本の衰退は加速するだけだろう。 増税して財政赤字を少しでも減らす、被災地を一刻も早く復興させる、そんなあまりにも消極的な政策を、いまなぜ議論する必要があるのだろうか?
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